第44話

文字数 1,593文字

 大会当日。会場は沢山の人で賑わっていた。


「凄い人が集まってるな。流石全国大会だな」


 少し早めに来たつもりだったが、ロビーにはもうドーンとヘンリーがいた。もちろん他の参加者や観客も沢山いる。


「レイスさん、おはようございます。良く休めましたか?」
「おっ、レイスのじいさん。ちゃんと来たな」
「2人ともおはよう。今日からの大会、頑張るぜ」


 軽く挨拶をかわしながら受付へ向かう。


「おはようございます。参加される方……ですか?」


 始めて見る兵士だ。おそらく王国の兵士だろう。流石にこんなじじいが本当に参加者かどうか、怪しんでいるようだ。


「そうだ。宜しく頼む」
「えーっと……」


「その方は参加者で間違いありませんよ」
「あ、ドーンさん」
「先の地区本選で私はこのレイスさんに敗れました。疑いの無い実力を持っている参加者です」
「わ、分かりました」


 兵士は焦りながらじじいの方を向く。


「ではこちらにサインをお願いします」
「おっ、俺のファンになったのか?」
「いえいえ、参加申し込みの書類に……」
「やっぱ、そうだよな」


 ある意味、恒例行事。



「ははは、確かにパッと見はただのじいさんだもんな」
「うるさい」


 さっきのやり取りを見ていたヘンリーは笑い出した。


「もしドーンが居なかったとしても俺が説明してやってたさ」
「ヘンリーさんなら去年も来ていますし、説得力ありそうですもんね」




 今日からの全国大会。日程は3日間で行われる。

 参加者は30名。順番の1番と30番はシード選手。これは前回の全国大会の優勝者・準優勝者が出場の時に割り当てられる。欠場であればくじ引きだ。

 1日目は1回戦
 2日目は2回戦・3回戦
 3日目は準決勝・3位決定戦・決勝

 多くて1日2戦しか戦わないので、他の大会より身体的負担は少ない。その分実力で勝ち上がらないといけなくなっている。参加者は専用の部屋に入ったら、負けるか大会が終わるまで出られない。緊急時以外は外部との連絡も取れないのだ。



「それでは、順番を決めるくじ引きを行います。順番は申し込みの順番で行います」

「俺は前回の優勝者だからシードの1番で固定だ。さあ、くじ引きしてこい」
「おう。」


 じじいの番になり、くじ引きの箱に手を入れる。どうやら紙ではなく、玉のような物が入っている。


「どれどれ……27番か。つまり3回戦で前回の準優勝者と当たるかもしれないな」
「ルーキか。本人は勇者と言い張っているが、魔法も剣も使う魔法剣士タイプだな」
「え、勇者?」

「結構強いぜ。魔法は雷系を使う。んで、魔法を剣に乗せて撃つ魔法剣が強力だ」
「そ、そうか。しかし勇者などと」
「実際に勇者の血筋なのかどうかは分からいけどな」
「俺は認めん。ふざけた奴だな」
「?」


「レイスさん……ケーオが見当たりませんでした。不参加なのでしょうか?」
「そうなのか?でも参加人数は30人居たぞ」
「もしかして誰かに参加を委任して逃げたのでは」
「分からないな。どうだろう」


 不思議そうにしている皆の前に兵士がやって来た。


「それでは参加者の皆様は、先ほど引かれました玉を携帯して下さい。奥の方にある魔法陣に乗るとそれぞれ専用の部屋へテレポート出来ます」

「なに、この玉でテレポートできるのか。時代も変わったもんだな」
「10年以上昔からだぜ?ああ、じいさんだから仕方無いか」
「うるさい。」


「じゃあ行くわ。レイスのじいさんと当たるとしたら決勝か。まあ頑張ってくれ」
「決勝っていう最高の舞台でボコボコにしてやるよ」
「2人とも頑張って下さい。私は応援席に行きますね」



 じじいは魔法陣に乗った。テレポートでの移動は200年ぶりだ。こんな気軽にテレポート出来るようになっているなんて……魔法科学の進歩は本当に素晴らしい。


「何かを忘れているような気が……」



 魔法陣と玉が光り輝きじじいを包む。一際眩く光ったと思ったら、身体がフワッとし一瞬で景色が移り変わった。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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