第53話

文字数 1,343文字

 降りかかる雷閃を先読みでギリギリかわす。ルーキのサンダーソードが地面に当たる。


「どうだ!?」


 一瞬の後、周囲の地面が光出す。


「貴方は攻撃をよくギリギリでかわしている。だからこそ、この攻撃をかわせない!」


 ドゴーーーン!


 辺り一帯が地面よりせり上がった魔力に包まれる。この技は振り下ろしの魔法剣と返しの、魔力による範囲攻撃がセットになった技だったのだ。魔力に耐えきれずじじいは後ろへ吹っ飛んだ。聖剣も飛ばされてしまう。


「………」


 一瞬、気を失ってしまったようだ。兵士がじじいの様子を覗きに来た所で意識を戻す。


「はっ! く…凄い技だった」
「え!? まだ立って来れるなんて……」


 じじいはゆっくりと立ち上がる。初弾はかわしたものの、返しは直撃してしまった。もう少し長く気を失っていたら、試合終了を宣告されていただろう。



「予想以上の攻撃だった。ダメかと思ったぜ」


 じじいは魔法を掛ける。


「ハイヒール」


 光に包まれHPが回復する。どうやら骨折などはしていない様だ。それだけでも運が良かった。もし不死で無かったら、もしかしたら死んでいた可能性もあっただろう。それくらいに素晴らしい技だった。


「驚いた。無事だった事もそうですし、回復魔法も使えるなんて」
「まあ、普通のじじいじゃ無いからな」



「行きますよ、剣を失った貴方に勝ち目はない!」


 ルーキは攻撃を仕掛けてくる。先読みでかわしながら、考える。


「どうやって剣を取るか?いつぞやの剣士の戦士戦法を取るか?それとも……」


 流石に素手では剣を受け止める事は出来ない。攻撃をかわしながら移動しているが、相手も上手く剣に行けない様に調整している。いきなり剣に向かって走るのも危険だろう。


「そろそろ諦めるのも1つの手ですよ?」
「忠告どうも」



 ルーキは剣に大きな魔力を込めた。あの技が来るのか。


「申し訳ありませんが、これで終わりにします。サンダーソード!」


 先の大技が来た。剣の位置を確認する。


「うおおおお!」


 ルーキのサンダーソードが降って来る直前。


「大技で来てくれてありがとうよ。レイ!」


 後ろへ大きく飛び退きながらレイを発動。


 ドドドドド!


 さっきまで居た場所に光の柱が降り注ぎ、砂煙が上がる。魔法がじじいに掠り、飛ぶのを加速させた。更にレイの落ちた場所に激しい音がする。サンダーソードを地面に当てた音だ。



 ドゴーーーン!


 追加の攻撃が発動した頃には、じじいはその範囲の外側に居た。




 視界が良くなる頃。じじいは相棒の聖剣を持ってルーキへ走り出していた。


「な、やばい!」


 ルーキは焦りながらも何とかガードしようとする。



「行くぞ! 奥義・光の一撃!」


 バキイィン!


 光り輝く聖剣が強く輝き、ガードしているルーキの剣を折る。そのままの勢いで、ルーキに炸裂する。


「うわああっ!」
「おまけだ、ライトボール!」

 ルーキに向かってライトボールを連発する。もうレイを出すMPが無かった。


 ドン!ドン!ドォン!


 連続でヒットし、ルーキは壁に激突した。




「はあ、はあ……」

 息はあるようだ。しかしもう動けないだろう。


「どうよ?」
「いや……流石ですね。これ以上は無理そうです」


 ルーキが負けを認める。


「それまで。レイス選手の勝利です」
「よしっ!」



 じじいは小さくガッツポーズした。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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