第12話

文字数 996文字

 控室へ戻って来て軽く息を吐く。


「ふう……」


 これで残る選手は、じじいを含め4名。今から準決勝が始まるのだ。

 この地区予選大会に優勝した選手のみが、地区大会の本選に進める。本選で優勝すると、全国大会という大会に進める。そこで優勝すると、世界大会に進める。そして世界大会に優勝すれば、この世界で一番強い人間として認められるのだ。

 今はまだ本当に最初の部分でしかない。



 少し昔を思い出す。



 200年ほど前にこの一連の大会に参加した事はあった。勇者となって光の精霊の加護を授かったすぐの事だ。

 今ほど参加者が多くなかったので、予選大会というものは無かった。地区大会→決定戦→世界大会だったのだ。

 あの頃は普通に強くて、更に光の加護まで授かったじじいは一切の負けを知らなかった。魔王討伐前のお遊び感覚で参加していた。他にも強い奴は居たし、仲間になりたいと言ってくる奴も居た。でも俺と戦って一合二合で負けるような奴と組んでも、メリットは感じなかった。

 結局、俺は1人で戦い続けていったのだった。



「戦いとは関係ない友達も、200年も経てば誰も居なくなるからなあ……」


 不死の身体はある種、孤独との戦いでもあったのだ。だから光の精霊はニャン太を遣わせたのだろうか?




「どうした、じいさん?」
「いや、ちょっと昔を思い出してな」


 準決勝の相手である、剣士のソーザンショが話しかけてきた。基本的にこのゲームの登場人物はひどい名前である。


「もうAブロックの戦いが始まってるぜ」
「そうだったな。Aブロックはどっちも魔法使いか」


 テレビ越しに魔法の応酬が見える。男の魔法使いは岩系の魔法使い、女の魔法使いは炎系の魔法使い。この世界の魔法には相性というものは存在しない。仮に水属性と火属性がぶつかり合っても、魔力の高い方が相手の魔法を消滅させる。魔力が拮抗していれば互いに消滅してしまう。

 唯一存在する相性は光属性が闇属性に強い、という物だけだ。



 どうやらこの2人の魔力は拮抗しているようだ。こうなったら隙を作り魔法をぶつけるか、MP切れを待つか。後者は、いわゆる泥仕合である。


「あっ」
「男の方がMPを切らせたぞ」


 炎の魔法で吹っ飛ばされる男。Aブロックの勝者は、女の炎の魔法使いの様だ。




「それではBブロックの準決勝を行います。ソーザンショ選手とレイス選手はこちらへ」


 お決まりの案内と共に二人は闘技場へと向かっていった。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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