第30話

文字数 1,156文字

 戦士は大きく振りかぶって剣を振ってきた。そこ等のヤツと比べると、確かに早い。後ろへ下がりそれをかわす。しかし返しざまに来た突きはかわせず、聖剣で受け止める。


「1撃目がやけに浅いと思っていたが、初めから突きが目的だったな?」
「正解。どんどん行くぜ!」


 兵士の言っていた大胆で繊細とはこう言う事か。テレビで見ているだけでは、いまいち分かりにくかった。


「簡単に言えば、フェイントが上手いって所だな」


 続けて戦士が斬ってくる。上手く外側へ流して、相手の懐へ潜り……


 ギンッ!


 剣の柄で返しを行われて、ガードはするも後ろへずらされる。思いの外、反応も良いようだ。


「弾かれた時の対応もしかり練習して来ているな」
「そりゃあな。じゃないと上手いやつと渡り合えないからな」


 それが出来る時点で上手いのだが。


 じじいは距離を取り、ライトボールを撃つ。戦士はそれを剣で弾きながら向かってきた。早い突き。先読みでそれをギリギリでかわし、剣撃を放つ。


 ギィン!


 これはギリギリ戦士の鎧の端を掠めた。


「アンタの凄い所は、攻撃をギリギリでかわせる所だよな。あんだけ引き寄せられると完全にはかわせない」
「直撃しなかっただけでも大したモンだと思うぞ」
「そりゃどうも!」


 戦士は再び斬りつけてくる。体力は剣士と言うより戦士だな、名前通り。



 ギンッ!
 ギィンッ!


 魔法と剣撃を繰り返すじじいに、じわじわと追い詰められていく戦士。あまり魔法と剣を両立させる者と、戦った経験が薄いのだろう。少しやりにくそうにする。


「ま、まさかこんな高齢者に自力で追い詰められるとは」
「こんな大会に出てるんだ。普通のじじいじゃ無い事は分かってたろ」
「違いねえ。」



 ギィン!


 何度目かの打ち合いの末に、じじいのライト斬りを受けた戦士の剣が手から飛ばされる。


「勝負あったかな?」
「いや、まだ負けを認める訳にはいかねえ!」


 戦士は拳を固める。まだ諦めていないらしい。

 だが、じじいのライトボールをガードする度に後ろへ下がる。少しずつ身体をずらして似た様な攻防がつづいたが、じじいのライトボールがついにヒットする。後ろへ吹き飛んだ戦士。その横には先ほど飛ばした戦士の剣が落ちていた。



「なるほど。剣の近くへ行ける様に調節していたのか」
「へっ、その代償に結構なダメージを負っちまったけどな」
「やるじゃないか」


 再び剣を手にした戦士は、またじじいに斬り掛かる。…が、ダメージのせいか動きがちょっとだけ鈍っていた。先読みで攻撃をかわし、ライト斬りを発動。

 ギリギリでガードした戦士だったが、勢いに耐えられず吹き飛ぶ。折角取り戻した剣も、再び飛んで行った。



「今度こそ、どうかな?」
「へっ、流石にもう無理だな。もう動けねえや」


 戦士は大人しく降参した。



「決着です。決勝戦進出はレイス選手!」




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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