第17話

文字数 889文字

 予選大会から数日たった。

 最初の2日程、家でゆっくりして身体をやすませた。これからの修行地は船で一番近い大陸にある塔になる。毎日宿屋に泊まる程の余裕はないので、テントを買ってみた。食料などは港町で買えば良いし、服は……近くの川で洗濯するか。



「じゃーん、見ろニャン太。このテント、防水加工がバッチリだぞ。雨が降っても大丈夫だ」
「おお、なかなか大きそうなテントだな」
「家から毎日5時間も掛けて来るのも大変だからな。実際のゲームなら20秒で来れるのに」
「メタんじゃねえよ!」


 船に乗ってから気付く。向こうに着いてからテントも買えば良かった、と。


「荷物邪魔だな。重いし、俺じじいだし」
「実際に考えればそうだよな。道具も武器もいくつも持てるRPGはいったいどうなってやがんだ」
「今だっ! メタんじゃねえよ!」
「おい、それ俺の台詞だし」




~大地の塔~




「ここが塔か。なんか見た事あるような……って、塔なんてどれも似たようなもんか」
「いや、来た事あんじゃね?」
「マジで? 全然覚えてないわ」


 大したイベントは無かったんだろうか。


「じじいだからじゃね?」
「ボケてねえわ!」


 塔の近くにテントを張った。結構大きい。


「食べ物もランプも買ってきたし。今日からはキャンプ生活だな」
「これ位の距離なら、魔王の封印に違和感が起きてもすぐに戻れるし」
「だから今回は着いてきたのか?」
「まあ、そうだな。じじいがゴーレムにボコられても大変だし」
「俺は不死だから死なないけどな」
「より悲惨だろそれ」


 半永久的にゴーレムに殴られ続ける自分を想像した。


「うわ……確かに悲惨だわ」



 テントの中で厚めの寝袋に包まる。ニャン太は本人持ちの座布団で良いそうだ。


「これこれ、この座布団が一番落ち着くんだよ」
「サバイバルの無いキャンプ最高」


 それぞれが勝手な事を言いながら、眠りについた。



 翌朝、天気も良い。


「今日の帰りには町によってドラム缶でも買ってくるか。汗をかいて風呂に入れないのもキツい」
「俺は最悪、川でも良いけどな」
「猫と一緒にするなって」
「猫じゃねえって、精霊だぞ俺は」


 それぞれが勝手な事を言いながら、塔の扉を開いた。




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み