第103話 Hell’s Bells (悪魔退治)
文字数 1,398文字
先に魔人と闘っていた山中達也、井上銀次郎、リルキドベイベーの三人は、まるで熊に立ち向かう子猫のようだった。あまりにも小さい。ただし、三人とも素早い。
振り払われる魔人の手をかいくぐり、打撃を与えるリルキドベイベーAPB。
日本刀『兼常』にオーラを込めて立ち、魔人の攻撃を避けては撃つという単調な繰り返しにしか見えないが、その実、一撃に込められた力が半端ない威力を秘めている井上銀次郎APD。
そして、あちこちを一太刀ずつ斬りながら、魔神の硬さを試している山中達也APS。ほとんど斬れないが、それでも、思いきりウニを握りしめてしまう程度のダメージは与えている。
一方で魔人は、一撃でも食らえば即死してしまいそうな攻撃を次々に繰り出してくる。両手の爪で空気を引き裂き、吐かれる息は生暖かく残忍で、身体中に生えている鱗は逆立って近寄る者を寄せ付けない。
だが左足だけがゲートから出きれていないために、自由には動けない。空を飛ぶこともできないので、背中についた羽も役には立たず、頭に生えているたくさんのツノも、口に生えている鋭い牙も、今のところ何の効果もない。
「ギン! 初対面の相手がどんな武器を持っているのか調べるのは当然として、大きい敵と対峙した時に、まずどんなことを考えるんだっけ?」
「はい! 末端から徐々にダメージを与えていくということです!」
「よくわかってるじゃねーか」
「それと大きいが故に、必然的に多くなる死角から攻めるということも必要ですよね」
沙織との話が終わり、割り込んできた愛染が付け加える。
「カーッカッカッカッカ。俺の弟子たちは流石だな。一体どんな立派な師匠に教わったんだか」
苦笑する二人の弟子。
山中は魔神の腕をかいくぐり、死角である背中に回った。翼があるが、足がゲートから抜けきれていないので、ただ羽ばたくだけだ。暴風が巻き起こっているが、山中は動じずに空中を走る。
「こんな使えねーもんはいらねーだろ」
山中は魔人の背中を走りながら、力を込めて魔人の翼の付け根に狙いを定め、オーラソードを物理法則を無視する速度で素早く振った。山中の体は半径一メートルの巨大なオーラの塊と化す。その球体に触れたものは、霧のように細かく削られて消滅する。山中の秘剣技『殲滅玉』だ。
魔人のプテラノドンのような翼は、ズタズタに引き裂かれた。
魔人は怒り狂い、駄々っ子のように両手を振り回して暴れまくる。こういう時に攻め込むのは運の要素が絡むので危ない。四人は一旦離れて仕切り直した。
魔人は足が抜けないので、離れればそこまで恐れることはない。銀次郎は、飛び道具があるかどうかだけを注意しながら、先程から気になってた沙織の方を振り返った。
「おーう。ギン。沙織のことが気になんのか?」
「いや。別に……」
銀次郎の表情を見てとった山中が、イヤらしい顔をする。
「じゃあお前に命令だ。ギン。沙織を助けてやれ!」
「でも……」
銀次郎は、暴れる魔神を見上げる。
「大丈夫だ。見ろ、あいつを。今ダメージを与えた場所がもう回復し始めてやがる。これはじっくりと弱点を探さなきゃなんねー。長期決戦になる。ところが、だ。一対一の短期決戦に優れてるお前は、弱点を探すのには向かねー。これは単に戦略的な命令だ。親心込みの、な」
「は、はい!」
「しっかり守ってやるんだぞ」
「わかりました!」
銀次郎は、沙織のもとへと走っていった。
振り払われる魔人の手をかいくぐり、打撃を与えるリルキドベイベーAPB。
日本刀『兼常』にオーラを込めて立ち、魔人の攻撃を避けては撃つという単調な繰り返しにしか見えないが、その実、一撃に込められた力が半端ない威力を秘めている井上銀次郎APD。
そして、あちこちを一太刀ずつ斬りながら、魔神の硬さを試している山中達也APS。ほとんど斬れないが、それでも、思いきりウニを握りしめてしまう程度のダメージは与えている。
一方で魔人は、一撃でも食らえば即死してしまいそうな攻撃を次々に繰り出してくる。両手の爪で空気を引き裂き、吐かれる息は生暖かく残忍で、身体中に生えている鱗は逆立って近寄る者を寄せ付けない。
だが左足だけがゲートから出きれていないために、自由には動けない。空を飛ぶこともできないので、背中についた羽も役には立たず、頭に生えているたくさんのツノも、口に生えている鋭い牙も、今のところ何の効果もない。
「ギン! 初対面の相手がどんな武器を持っているのか調べるのは当然として、大きい敵と対峙した時に、まずどんなことを考えるんだっけ?」
「はい! 末端から徐々にダメージを与えていくということです!」
「よくわかってるじゃねーか」
「それと大きいが故に、必然的に多くなる死角から攻めるということも必要ですよね」
沙織との話が終わり、割り込んできた愛染が付け加える。
「カーッカッカッカッカ。俺の弟子たちは流石だな。一体どんな立派な師匠に教わったんだか」
苦笑する二人の弟子。
山中は魔神の腕をかいくぐり、死角である背中に回った。翼があるが、足がゲートから抜けきれていないので、ただ羽ばたくだけだ。暴風が巻き起こっているが、山中は動じずに空中を走る。
「こんな使えねーもんはいらねーだろ」
山中は魔人の背中を走りながら、力を込めて魔人の翼の付け根に狙いを定め、オーラソードを物理法則を無視する速度で素早く振った。山中の体は半径一メートルの巨大なオーラの塊と化す。その球体に触れたものは、霧のように細かく削られて消滅する。山中の秘剣技『殲滅玉』だ。
魔人のプテラノドンのような翼は、ズタズタに引き裂かれた。
魔人は怒り狂い、駄々っ子のように両手を振り回して暴れまくる。こういう時に攻め込むのは運の要素が絡むので危ない。四人は一旦離れて仕切り直した。
魔人は足が抜けないので、離れればそこまで恐れることはない。銀次郎は、飛び道具があるかどうかだけを注意しながら、先程から気になってた沙織の方を振り返った。
「おーう。ギン。沙織のことが気になんのか?」
「いや。別に……」
銀次郎の表情を見てとった山中が、イヤらしい顔をする。
「じゃあお前に命令だ。ギン。沙織を助けてやれ!」
「でも……」
銀次郎は、暴れる魔神を見上げる。
「大丈夫だ。見ろ、あいつを。今ダメージを与えた場所がもう回復し始めてやがる。これはじっくりと弱点を探さなきゃなんねー。長期決戦になる。ところが、だ。一対一の短期決戦に優れてるお前は、弱点を探すのには向かねー。これは単に戦略的な命令だ。親心込みの、な」
「は、はい!」
「しっかり守ってやるんだぞ」
「わかりました!」
銀次郎は、沙織のもとへと走っていった。