第63話 Lectures on Quest by Ranze 

文字数 1,225文字

 普通の人は良い話を聞いても、結局やらないか、行動に出るまで時間がかかる。だが、サオリは違った。「どうせやる行動はすぐにやれ」という仙術の教えの大事さを知っている。迷うことなく、ハツメたちと別れたその足でクエスト屋に向かった。時間をかけても今すぐに行く価値があると思ったからだ。
「ランゼさーん」
 ランゼは奥の部屋からいそいそと、慌ててエプロンを腰に巻きつけながら出てきた。
「あらー。沙織ちゃん! どしたーの?」
 元気に勢いよく来たサオリに、ランゼは驚いた様子だ。
「ランゼさん。聞きたいことがあるの」
 ランゼの答えを待たずにサオリは続けた。
「アタピ、この前、ハトの羽千枚持ってきてって依頼を受けたんだけど、あれって何に使うのかって教えてくれませんか?」
「おーおー。それは企業秘密だから聞いーてないーし、私にはわかりかねーるけどーね、予測でいーいかい?」
 サオリは食いぎみに素早くうなづいた。
「材料屋かーらの依頼ってこーとは、おそーらくFの製作材料ってこーとだね」
「ハトの羽でFって作れるんですか?」
「Fーは、気持ちのこもったもーのをー形にしーたもーのだかーらねー」
「それってアタピでも作れるものですか?」
「さおーりは今、フィロソフィアでーしょ。使うことはできてーも、つくーることはでーきないーよ。ドリームメーカーなーらー作れるーよ」
ーードリームメーカー。確かモフモフさんがドリームメーカーだと言っていた気がする。よし。せっかくリアルカディアに来たし、この後モフモフさんにも聞いてみるか。
 この話はここでおしまいにして、サオリはもう一つの疑問についてもたずねた。
「じゃあ、このハトの羽を持ってくる依頼って、今後もあって、しかも何度も定期的に請け負うことってできるものなんですか? それともこの前みたいに毎回巻物さんが出てきて、内容わからないけど選択するて方法で依頼を受けるんですか?」
「いやいーや。この前みたいなスクロールスクランブルは、クエストを受けるアルキメストが、まだ何を出来るかわからない時におこなう行進だーよー。わかるようになったら選択することもできーる。一度信用されーれば、また依頼をーもーらえるんだ。ほらー、自分のステータスをひーらいてみーてー」
 昨日できるようになったウィッシュ、悪魔の右目。サオリは親指を人差し指と中指の間に挟んで、「アタピ」とプットーに頼んだ。空中に自分のステータス画面があらわれる。
「クエストの部分を見てごーらん」
「クエスト」
 唱えるとサオリのステータスは高速スクロールされ、『クエスト』と書かれたウインドウが浮かびあがる。
「今、なんて書いてあーるー」
「Gランク。平和のハトの羽。未達成」
「それが達成されていくと、そこーにクエスト増えーていーくよ。それらに依頼ランプがついたら、私に会いにくーるといいよー。契約かわそう」
「かわうそ」
 クマオの言葉は流された。
「わかった!」
 サオリは何事もなかったのようにうなづいた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

サオリ・カトウ

夢見がちな錬金術師。16歳。AFF。使用ファンタジーはクルクルクラウン。

使用武器はレストーズ。

パパの面影を探しているうちに世界の運命を左右する出来事に巻き込まれていく。

カメ

「笑いの会」会長。YouTuber。韓流好き。

ニヒルなセンスで敵を斬る。ピーチーズのリーダー的存在。

映像の編集能力に長けている。

クマダクマオ

アルカディアから来たクマのぬいぐるみ。女王陛下の犬。

サオリのお友達。関西弁をしゃべる。

チャタロー

カトゥーのパートナーだった初代から数えて三代目。

『猫魂』というファンタジーを使って転生することができる。

体は1歳、中身は15歳。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み