第10話 Tails of Hip (尻尾(ケツオ)っぽ)
文字数 883文字
「俺は行かねーぞ」
一人と一匹の勢いに水をかける声。茶色い子猫だ。
「俺ぁ頼まれたから来ただけだ。役目は終えた。外で散歩してくらー」
「チャタロー。外めっちゃ寒いで。一緒にくればええのに」
子猫のチャタローは振り向かず、立てた尻尾を二回振って調理室から出ていった。チャタローが出ていったことにたいしてクマオは特に気にしていない。
「それで? カメはどこにおるんや?」
「知らないの?」
「ワイが? カメを? ワイはカメの親友でもないし、爬虫類でもないで」
ーーおかしいな。桃が仕掛けてるんならクマオが桃の居場所を知ってるはずなんだけど…。あ! もしかしてこれ、ホントにテレビのモニタリング? そう考えないと納得できない。だってやけに大がかりだもん。実力と関係なくテレビに出たくなかったなー。ま、仕方ないか。ピーチューブの視聴者数も上がるだろし。
考え込んで黙っていると、クマオはサオリをいぶかしんで、テコテコ周りを歩きだした。
「ふーむ。親友の場所もわからんなんて。ワイのことも覚えとらんし。沙織。沙織はホンマに沙織なんか?」
「電話する」
自分が疑われるなんてたまったものではない。サオリはカメから順番に、ピーチーズの三人に電話をしてみた。だが、やはりかからない。
「かからへんのか?」
ーー悔しい。
「いこっ」
ここでこうしていても何の進展もない。ただクマオに疑われるだけだ。
ーーとりあえず教室に向かおう。
教室に行けば自分の誕生日会が準備されているし、いなくてもピーチーズ全員の荷物がある。待っていれば誰かしら戻ってくるだろう。早足で歩こうとするサオリにクマオが後ろから声をかける。
「おーい。ワイの足を見い。短いやろ? その速さだとついてかれへんねん」
ーーあ、そか。
サオリは立ち止まった。クマオも立ち止まる。
「行かないの?」
クマオは両手を伸ばした。
「連れてくの?」
「せや」
サオリは今日で十六歳。ぬいぐるみと手を繋ぐなんてどうにも恥ずかしい。結果、手を伸ばしてクマオの顔を鷲掴みした。
ーーやーわらけー。
「久しぶりの感触やな」
クマオは、潰れた顔を嬉しそうにほころばせた。
一人と一匹の勢いに水をかける声。茶色い子猫だ。
「俺ぁ頼まれたから来ただけだ。役目は終えた。外で散歩してくらー」
「チャタロー。外めっちゃ寒いで。一緒にくればええのに」
子猫のチャタローは振り向かず、立てた尻尾を二回振って調理室から出ていった。チャタローが出ていったことにたいしてクマオは特に気にしていない。
「それで? カメはどこにおるんや?」
「知らないの?」
「ワイが? カメを? ワイはカメの親友でもないし、爬虫類でもないで」
ーーおかしいな。桃が仕掛けてるんならクマオが桃の居場所を知ってるはずなんだけど…。あ! もしかしてこれ、ホントにテレビのモニタリング? そう考えないと納得できない。だってやけに大がかりだもん。実力と関係なくテレビに出たくなかったなー。ま、仕方ないか。ピーチューブの視聴者数も上がるだろし。
考え込んで黙っていると、クマオはサオリをいぶかしんで、テコテコ周りを歩きだした。
「ふーむ。親友の場所もわからんなんて。ワイのことも覚えとらんし。沙織。沙織はホンマに沙織なんか?」
「電話する」
自分が疑われるなんてたまったものではない。サオリはカメから順番に、ピーチーズの三人に電話をしてみた。だが、やはりかからない。
「かからへんのか?」
ーー悔しい。
「いこっ」
ここでこうしていても何の進展もない。ただクマオに疑われるだけだ。
ーーとりあえず教室に向かおう。
教室に行けば自分の誕生日会が準備されているし、いなくてもピーチーズ全員の荷物がある。待っていれば誰かしら戻ってくるだろう。早足で歩こうとするサオリにクマオが後ろから声をかける。
「おーい。ワイの足を見い。短いやろ? その速さだとついてかれへんねん」
ーーあ、そか。
サオリは立ち止まった。クマオも立ち止まる。
「行かないの?」
クマオは両手を伸ばした。
「連れてくの?」
「せや」
サオリは今日で十六歳。ぬいぐるみと手を繋ぐなんてどうにも恥ずかしい。結果、手を伸ばしてクマオの顔を鷲掴みした。
ーーやーわらけー。
「久しぶりの感触やな」
クマオは、潰れた顔を嬉しそうにほころばせた。