第14話 Kumao Says (クマさんの言うことにゃ)
文字数 1,565文字
「さて、と」
クマオはサオリの膝の上に移動した。いよいよ三者面談の始まりだ。最初に口を開いたのはアイゼンだった。
「私は、三人が襲ってきた理由にはクマオも関係していると思うんだけど」
クマオは驚いた顔をして自分を指差した。
「ワイ? ワイが沙織の不利になるようなこと、するはずないやないか」
「それならなんで、クマオはこんなに良いタイミングで沙織を助けに来られたの?」
「そりゃ…、ワイが沙織の親友だからやないか?」
「誤魔化さないで。なぜ沙織がピンチになったことを知ったのかって聞いてんの。クマオ。本当はわかってるんでしょ?」
アイゼンの真剣な顔に、クマオもくまった顔になった。隠していることがあるのは丸わかりだ。
「えっと、そら……。なぁ」
饒舌なクマオがしどろもどろになる。
「なんでそうやって言わないの?」
「いや……」
クマオは黙る。アイゼンはクマオに目で威圧した。
沈黙。
クマオはこの沈黙に耐えられなかった。震えながら口を開いた。
「あ、あんな…、ルールがあってやな…」
クマオのようやく言ったという震えた声に対して一切の容赦なく、アイゼンの尋問は止まらない。間髪入れずに質問を続ける。
「何のルール? どこのルール? 何をしちゃいけないっていうルール?」
それは言えへんねん、という顔でクマオは目を伏せる。アイゼンはさらに続けた。
「言えないの? どんなルールか知らないけど、そのルールのせいで真実を言わない。おかげで今、沙織はこんな目にあってる」
クマオは黙っている。
「私だったら、沙織がピンチならルールも法律も破ってただ沙織のことを守るのに。だって沙織を助けるためにやってきたんじゃないの?」
クマオはうなだれている。クマオのピンクの顔色をうかがった後、アイゼンは一つため息をつき、残念そうに話した。
「私、人生で初めてライバルに出会えたと思ったんだけど。でも、どうやら気のせいだったみたいね」
沈黙が続く。
アイゼンはクマオから視線を外し、立ち上がってサオリに手を伸ばした。
「いいや、沙織。私が全てを解決する。もうクマオなんてどうだっていい。可愛いからちょっと気になったけど、つまらないものに時間をかけるなんて私たちの人生には勿体ない」
クマオは慌てて両腕をジタバタと振った。
「わ、わかった。話す。話すわ。ワイの命の危険なんて考えたんがアホやった。そんなやつはホンマに沙織の親友を名乗る資格なんて無いわ。わーった。ぜーんぶ話すわ」
アイゼンはまだ表情を崩さず、彫刻のように冷たい顔でクマオのことを上から睨んでいる。
沈黙。
が、一気に表情を崩し、手を差し出した
「かろうじて私のライバルになる資格があるようね」
クマオはホッとした顔で、アイゼンと堅い握手をかわした。
「クマオ、言うと命の危機になるの?」
サオリはクマオの一言が気になった。クマオはぬいぐるみとは思えないほどさっぱり達観した顔をしている。
「ま、ええんや。ワイ、これからずっと、また沙織と蜂蜜色の日々を送りたい思て、何か他にええ方法ないんか考えとったんやけど。親友に隠し事してピンチにするんはやっぱ間違っとる」
「待って」
サオリは両手でクマオを持ち上げ、まつ毛だらけの黒目を見つめた。
「アタピも。アタピもクマオと蜂蜜色の日々。送りたい」
ぬいぐるみだからなのだろうか。クマオに対してはアイゼンと違って嫉妬などの複雑な感情はない。素直に本心が出た。
「せやけど…」
クマオの眉上のタオル地が八の字になる。
「折衷案として、喋れるギリギリのところまで話すっていうのはできないの?」
「…なるほど」
アイゼンの言葉にクマオが腕を組む。
「せやな。ほな……。やってみるわ」
クマオはサオリの手から降り、机の上にあぐらをかいて、先ほどまでの軽快な口調とは打って変わって考え考え話をし始めた。
クマオはサオリの膝の上に移動した。いよいよ三者面談の始まりだ。最初に口を開いたのはアイゼンだった。
「私は、三人が襲ってきた理由にはクマオも関係していると思うんだけど」
クマオは驚いた顔をして自分を指差した。
「ワイ? ワイが沙織の不利になるようなこと、するはずないやないか」
「それならなんで、クマオはこんなに良いタイミングで沙織を助けに来られたの?」
「そりゃ…、ワイが沙織の親友だからやないか?」
「誤魔化さないで。なぜ沙織がピンチになったことを知ったのかって聞いてんの。クマオ。本当はわかってるんでしょ?」
アイゼンの真剣な顔に、クマオもくまった顔になった。隠していることがあるのは丸わかりだ。
「えっと、そら……。なぁ」
饒舌なクマオがしどろもどろになる。
「なんでそうやって言わないの?」
「いや……」
クマオは黙る。アイゼンはクマオに目で威圧した。
沈黙。
クマオはこの沈黙に耐えられなかった。震えながら口を開いた。
「あ、あんな…、ルールがあってやな…」
クマオのようやく言ったという震えた声に対して一切の容赦なく、アイゼンの尋問は止まらない。間髪入れずに質問を続ける。
「何のルール? どこのルール? 何をしちゃいけないっていうルール?」
それは言えへんねん、という顔でクマオは目を伏せる。アイゼンはさらに続けた。
「言えないの? どんなルールか知らないけど、そのルールのせいで真実を言わない。おかげで今、沙織はこんな目にあってる」
クマオは黙っている。
「私だったら、沙織がピンチならルールも法律も破ってただ沙織のことを守るのに。だって沙織を助けるためにやってきたんじゃないの?」
クマオはうなだれている。クマオのピンクの顔色をうかがった後、アイゼンは一つため息をつき、残念そうに話した。
「私、人生で初めてライバルに出会えたと思ったんだけど。でも、どうやら気のせいだったみたいね」
沈黙が続く。
アイゼンはクマオから視線を外し、立ち上がってサオリに手を伸ばした。
「いいや、沙織。私が全てを解決する。もうクマオなんてどうだっていい。可愛いからちょっと気になったけど、つまらないものに時間をかけるなんて私たちの人生には勿体ない」
クマオは慌てて両腕をジタバタと振った。
「わ、わかった。話す。話すわ。ワイの命の危険なんて考えたんがアホやった。そんなやつはホンマに沙織の親友を名乗る資格なんて無いわ。わーった。ぜーんぶ話すわ」
アイゼンはまだ表情を崩さず、彫刻のように冷たい顔でクマオのことを上から睨んでいる。
沈黙。
が、一気に表情を崩し、手を差し出した
「かろうじて私のライバルになる資格があるようね」
クマオはホッとした顔で、アイゼンと堅い握手をかわした。
「クマオ、言うと命の危機になるの?」
サオリはクマオの一言が気になった。クマオはぬいぐるみとは思えないほどさっぱり達観した顔をしている。
「ま、ええんや。ワイ、これからずっと、また沙織と蜂蜜色の日々を送りたい思て、何か他にええ方法ないんか考えとったんやけど。親友に隠し事してピンチにするんはやっぱ間違っとる」
「待って」
サオリは両手でクマオを持ち上げ、まつ毛だらけの黒目を見つめた。
「アタピも。アタピもクマオと蜂蜜色の日々。送りたい」
ぬいぐるみだからなのだろうか。クマオに対してはアイゼンと違って嫉妬などの複雑な感情はない。素直に本心が出た。
「せやけど…」
クマオの眉上のタオル地が八の字になる。
「折衷案として、喋れるギリギリのところまで話すっていうのはできないの?」
「…なるほど」
アイゼンの言葉にクマオが腕を組む。
「せやな。ほな……。やってみるわ」
クマオはサオリの手から降り、机の上にあぐらをかいて、先ほどまでの軽快な口調とは打って変わって考え考え話をし始めた。