第73話<Same World> One Sun behind is dark
文字数 645文字
「どうだった?」
通りに誰もいなくなったのを見計らったように、一人の男がクエスト屋ランゼライオンに入店した。屋根の上から覗いていた男だ。
「契約しただーよ」
「もうランゼの真似はいい」
吐き捨てるように男は言う。ランゼは背筋を伸ばして立ち上がる。ドロドロの顔が端正な表情に変わり、ランゼだった男は薄い唇の端を持ち上げて答えた。
「うまくいきましたよ」
流暢。高貴で正統なイギリス英語だ。
「銀次郎が一緒に行くようだな。だが、どうとでもなるだろう」
「ええ。実際この目で確かめましたが、私の敵ではないですね」
「あいつも我々の仲間に入れようと思ったが、どうもうまくいかん。昔は無機質なロボットだったのだが、最近は沙織の影響か、無駄な正義感がこびりついて剥がれない。カトゥーの時と同様、この機会に排除してしまっても差し支えなかろう」
「正義は我々にあるのに。それがわからないとは愚かな旧人類です」
「とりあえず策は成った。ここから撤退するぞ。全ての痕跡をなくしてこの地から離れよう」
「かしこまりましてございます」
ランゼだったクリーチャーは、歩きながら完全な人間の姿に変わっていく。二人は裏口から自分の家のように出ていき、そして消えた。
本物のランゼと巻物たちが目を覚ましたのは、それから二時間後だった。ランゼには時間の感覚がないので、自分にナニが起きたのかなどを考える習慣もない。
「新しいまーきもーのー。届いてーるだーよー」
ランゼと巻物は意識が無かったことにも気づかず、そのままの調子で通常運転を再開した。
通りに誰もいなくなったのを見計らったように、一人の男がクエスト屋ランゼライオンに入店した。屋根の上から覗いていた男だ。
「契約しただーよ」
「もうランゼの真似はいい」
吐き捨てるように男は言う。ランゼは背筋を伸ばして立ち上がる。ドロドロの顔が端正な表情に変わり、ランゼだった男は薄い唇の端を持ち上げて答えた。
「うまくいきましたよ」
流暢。高貴で正統なイギリス英語だ。
「銀次郎が一緒に行くようだな。だが、どうとでもなるだろう」
「ええ。実際この目で確かめましたが、私の敵ではないですね」
「あいつも我々の仲間に入れようと思ったが、どうもうまくいかん。昔は無機質なロボットだったのだが、最近は沙織の影響か、無駄な正義感がこびりついて剥がれない。カトゥーの時と同様、この機会に排除してしまっても差し支えなかろう」
「正義は我々にあるのに。それがわからないとは愚かな旧人類です」
「とりあえず策は成った。ここから撤退するぞ。全ての痕跡をなくしてこの地から離れよう」
「かしこまりましてございます」
ランゼだったクリーチャーは、歩きながら完全な人間の姿に変わっていく。二人は裏口から自分の家のように出ていき、そして消えた。
本物のランゼと巻物たちが目を覚ましたのは、それから二時間後だった。ランゼには時間の感覚がないので、自分にナニが起きたのかなどを考える習慣もない。
「新しいまーきもーのー。届いてーるだーよー」
ランゼと巻物は意識が無かったことにも気づかず、そのままの調子で通常運転を再開した。