第73話<Same World> One Sun behind is dark

文字数 645文字

「どうだった?」
 通りに誰もいなくなったのを見計らったように、一人の男がクエスト屋ランゼライオンに入店した。屋根の上から覗いていた男だ。
「契約しただーよ」
「もうランゼの真似はいい」
 吐き捨てるように男は言う。ランゼは背筋を伸ばして立ち上がる。ドロドロの顔が端正な表情に変わり、ランゼだった男は薄い唇の端を持ち上げて答えた。
「うまくいきましたよ」
 流暢。高貴で正統なイギリス英語だ。
「銀次郎が一緒に行くようだな。だが、どうとでもなるだろう」
「ええ。実際この目で確かめましたが、私の敵ではないですね」
「あいつも我々の仲間に入れようと思ったが、どうもうまくいかん。昔は無機質なロボットだったのだが、最近は沙織の影響か、無駄な正義感がこびりついて剥がれない。カトゥーの時と同様、この機会に排除してしまっても差し支えなかろう」
「正義は我々にあるのに。それがわからないとは愚かな旧人類です」
「とりあえず策は成った。ここから撤退するぞ。全ての痕跡をなくしてこの地から離れよう」
「かしこまりましてございます」
 ランゼだったクリーチャーは、歩きながら完全な人間の姿に変わっていく。二人は裏口から自分の家のように出ていき、そして消えた。
 本物のランゼと巻物たちが目を覚ましたのは、それから二時間後だった。ランゼには時間の感覚がないので、自分にナニが起きたのかなどを考える習慣もない。
「新しいまーきもーのー。届いてーるだーよー」
 ランゼと巻物は意識が無かったことにも気づかず、そのままの調子で通常運転を再開した。
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登場人物紹介

サオリ・カトウ

夢見がちな錬金術師。16歳。AFF。使用ファンタジーはクルクルクラウン。

使用武器はレストーズ。

パパの面影を探しているうちに世界の運命を左右する出来事に巻き込まれていく。

カメ

「笑いの会」会長。YouTuber。韓流好き。

ニヒルなセンスで敵を斬る。ピーチーズのリーダー的存在。

映像の編集能力に長けている。

クマダクマオ

アルカディアから来たクマのぬいぐるみ。女王陛下の犬。

サオリのお友達。関西弁をしゃべる。

チャタロー

カトゥーのパートナーだった初代から数えて三代目。

『猫魂』というファンタジーを使って転生することができる。

体は1歳、中身は15歳。

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