第17話 Peaches are in a pinch (ピンチなピーチ)
文字数 1,500文字
「やっぱ無理か。うーん。少し情報をまとめよう」
アイゼンは少し考えた後、すぐに顔を上げた。表情は明るい。全く困っている様子はない。
「それじゃ、今考えることを順番に言ってくね。一つ。なぜ他の人ではなく、沙織の友達がクルリンを奪おうとしているのか。二つ。なぜクルリンが欲しいのか。三つ。どうしたらクルリンを制御できるのか。どう? なにか意見はある?」
ーー三つともわかんない…。
サオリは論理的に素早く答えて頭の良さを見せたいと思ったが、何も答えられるモノがなかった。逆にクマオはすらすらと話し出す。
「せやなー。親友がクルリン奪ういうんはおかしな話やで。そもそもただの女子高生が欲しいもんちゃうからなー。クルリンの価値を知っとるリアリストは少ない。けど価値を知っとんなら欲しがるもんは多いやろなー。ちゅーことは、カメ達がその価値を知ってしまったのかもしれん。止める方法は沙織が頑張って止めるか、止められる奴を呼ぶことや。けどワイはその方法を知らんので教えられん。教えてくれる知り合いもおらへん…」
「リアリストって現実主義者のことじゃないの?」
クマオはしまったという顔をして慌てて否定した。
「あ、えっと…、人間いうことや」
「てことはクリーチャーとリアリストがいるってこと?」
クマオは喋らずに困りきった顔を返した。
「ごめんね」
アイゼンは謝った後でまた尋ねた。
「でも知ってるリアリストが少ないというのに、どうしてただの女子高生に過ぎないカメたちが狙っているの? クマオちゃんは見当つかない?」
「うーん。ワイ、この世界に来たのはついさっきやさかい。カメたちのことは何も知らんのや」
「なるほど…」
ーーこの世界? てことはクマオは違う世界から来たの?
サオリは聞いてみたかったが、言いづらそうにされることが目に見えているので止めた。アイゼンは少し上を向いて時間をとり、再度口を開いた。
「まとめると、今の時点ではクルリンは制御できないし、沙織の友達が奪おうとする理由もわからないてわけね」
今までずっと考えていたサオリは、ここまでアイゼンの話を聞いてようやく口を開いた。
「アタピ、奪おうとしている相手は桃じゃないと思う」
「なんでそう思うの?」
「だって、今の桃は桃じゃないんだもん」
サオリの言葉は抽象的だったが、アイゼンが理解するには十分だった。
ーー沙織の友達を信じるとこ。そういうところが私も好き。
アイゼンはサオリの顔を見て笑い、その余韻でクマオに顔を近づけた。
「ねー、クマオちゃん。クルリンって世界を具現化するって効果があるんでしょ? で、この世に一つだけではなく希少価値が高いてことは、他にもそういう腕輪があるってこと? クマオちゃんの持ってる幻脳Wikiみたいに、例えば変装できるとか、人を操れるなんて効果の腕輪とか」
「……あるな。おそらくやけど」
「じゃあもし人を操れる腕輪が存在すると仮定して、もし誰かが沙織の友達を操っているのだとしたら、クマオにはその腕輪の位置はわかるの?」
「わからんわからん。逆にこうしてわかる状態になっている方が異常なんや」
「なるほど」
アイゼンは、ロダンの考える人の像と同じ腕の組み方をして目を閉じた。サオリは腕輪を触ってみた。
ーーどうやって止められんだろ。なんでこんなんなったんだろ?
サオリは力んだり集中したりしてみたが特に何も変わらない。ただマサヒロが力んで赤い顔になったサオリを指差して笑い転げているように感じた。考えを巡らせていたアイゼンはようやく目を開けた。
「よし。策は整った」
アイゼンはサオリとクマオの頭を引き寄せ、ピーチーズに聞かれないように小声で話をした。
アイゼンは少し考えた後、すぐに顔を上げた。表情は明るい。全く困っている様子はない。
「それじゃ、今考えることを順番に言ってくね。一つ。なぜ他の人ではなく、沙織の友達がクルリンを奪おうとしているのか。二つ。なぜクルリンが欲しいのか。三つ。どうしたらクルリンを制御できるのか。どう? なにか意見はある?」
ーー三つともわかんない…。
サオリは論理的に素早く答えて頭の良さを見せたいと思ったが、何も答えられるモノがなかった。逆にクマオはすらすらと話し出す。
「せやなー。親友がクルリン奪ういうんはおかしな話やで。そもそもただの女子高生が欲しいもんちゃうからなー。クルリンの価値を知っとるリアリストは少ない。けど価値を知っとんなら欲しがるもんは多いやろなー。ちゅーことは、カメ達がその価値を知ってしまったのかもしれん。止める方法は沙織が頑張って止めるか、止められる奴を呼ぶことや。けどワイはその方法を知らんので教えられん。教えてくれる知り合いもおらへん…」
「リアリストって現実主義者のことじゃないの?」
クマオはしまったという顔をして慌てて否定した。
「あ、えっと…、人間いうことや」
「てことはクリーチャーとリアリストがいるってこと?」
クマオは喋らずに困りきった顔を返した。
「ごめんね」
アイゼンは謝った後でまた尋ねた。
「でも知ってるリアリストが少ないというのに、どうしてただの女子高生に過ぎないカメたちが狙っているの? クマオちゃんは見当つかない?」
「うーん。ワイ、この世界に来たのはついさっきやさかい。カメたちのことは何も知らんのや」
「なるほど…」
ーーこの世界? てことはクマオは違う世界から来たの?
サオリは聞いてみたかったが、言いづらそうにされることが目に見えているので止めた。アイゼンは少し上を向いて時間をとり、再度口を開いた。
「まとめると、今の時点ではクルリンは制御できないし、沙織の友達が奪おうとする理由もわからないてわけね」
今までずっと考えていたサオリは、ここまでアイゼンの話を聞いてようやく口を開いた。
「アタピ、奪おうとしている相手は桃じゃないと思う」
「なんでそう思うの?」
「だって、今の桃は桃じゃないんだもん」
サオリの言葉は抽象的だったが、アイゼンが理解するには十分だった。
ーー沙織の友達を信じるとこ。そういうところが私も好き。
アイゼンはサオリの顔を見て笑い、その余韻でクマオに顔を近づけた。
「ねー、クマオちゃん。クルリンって世界を具現化するって効果があるんでしょ? で、この世に一つだけではなく希少価値が高いてことは、他にもそういう腕輪があるってこと? クマオちゃんの持ってる幻脳Wikiみたいに、例えば変装できるとか、人を操れるなんて効果の腕輪とか」
「……あるな。おそらくやけど」
「じゃあもし人を操れる腕輪が存在すると仮定して、もし誰かが沙織の友達を操っているのだとしたら、クマオにはその腕輪の位置はわかるの?」
「わからんわからん。逆にこうしてわかる状態になっている方が異常なんや」
「なるほど」
アイゼンは、ロダンの考える人の像と同じ腕の組み方をして目を閉じた。サオリは腕輪を触ってみた。
ーーどうやって止められんだろ。なんでこんなんなったんだろ?
サオリは力んだり集中したりしてみたが特に何も変わらない。ただマサヒロが力んで赤い顔になったサオリを指差して笑い転げているように感じた。考えを巡らせていたアイゼンはようやく目を開けた。
「よし。策は整った」
アイゼンはサオリとクマオの頭を引き寄せ、ピーチーズに聞かれないように小声で話をした。