第55話 Same ol’ Same ol’ (日常)
文字数 1,285文字
急速に成功するためには一つのことだけを集中してやる以外に道はない。
これまでのサオリの生活は、朝五時に起きてミハエルと仙術修行。学校に行き、放課後にはピーチーズと遊び、帰ってまた仙術修行。夜は自由時間で勉強や読書などをして、寝る前に瞑想。週末はミハエルと外出して、クライミングやパルクールやサバイバルゲーム。他に色々な道場や講座や美術館に行って、知らないことや興味のあることを学んだり、自然に触れ合ったりする。そんな日々だった。
ただ、これは目標がまだ見つかっていない時の過ごし方だ。目標が決まった今は違う。学校と眠る以外の時間を全て錬金術の修行に使い、週末もリアルカディアに入り浸っている。サオリは、「アルケミーのステータスに全振りって、RPGみたい」と思った。そう思うことで、より自分がアルキメストになるのだという実感が湧いた。
ピーチーズは相変わらず、新大久保で韓国料理を食べたり、原宿に行って可愛い写真をSNSにあげていた。サオリも行きたかったし、ピーチューブを見てくれている人も、「なんでいなくなっちゃったの?」とコメントをくれていた。だが、心を動かされると修行に支障をきたす。
ネーフェは何の罪にも問われなかったようで、何もなかったのではないかと錯覚するくらい、あいかわらず先生として変わりなく授業をしている。だが、唇の端がうっすらと青くなっているので、あの日の出来事が現実であることは確かだ。
サオリは、ピーチーズやネーフェともっと接したい、という気持ちはあるのだが、とにかく不器用で一つのことしかできない。となると、もうアルケミーの修行以外に選択肢がなかった。
毎日ワンワン工房へ通い、ミドリに教えられて修行をし、終わると家に帰って泥のように眠る。アイゼンとも一切会っていない。サオリとアイゼンは親友だが、馴れ合う仲ではないので特に違和感を感じることはない。ただ、アイゼンも今この時、同じように錬金術の修行をしているに違いない、という確信はあった。
ーー早くアルキメストになるんだ。一ヶ月以内に賢者の石を白くしてみせる。
サオリは時間が空けば、一人黙々とワンワン工房へ通った。
教えてもらうとはいっても、集中した修行をするには一人でおこなわなければならない。
他人、いや、他クリーチャーがいてありがたいと思うところは、自分が間違えた修行をしている時に訂正してくれたり、次に行くべき道を示してくれたり、今どのくらいまで修行ができているのかを教えてくれたり、励ましたりしてくれるところだけだ。
結局、何かを修めるためには、自分一人で地道に努力しながら、さらに良い方法を探し続ける。終わりはないし、それしかない。
余談だが、サオリとアイゼンが毎日東京メソニックセンターに通っていたために、「女人禁制の倶楽部に何処からともなく女子校生が現れ、何処へともなく消える」、「それはモデルのような美女だ」、「いや、アイドルのような可愛い子だ」と、フリーメイソン内ではちょっとした都市伝説として囁かれるようになっていた。モーゼはその噂をただ笑って、否定も肯定もしなかった。
これまでのサオリの生活は、朝五時に起きてミハエルと仙術修行。学校に行き、放課後にはピーチーズと遊び、帰ってまた仙術修行。夜は自由時間で勉強や読書などをして、寝る前に瞑想。週末はミハエルと外出して、クライミングやパルクールやサバイバルゲーム。他に色々な道場や講座や美術館に行って、知らないことや興味のあることを学んだり、自然に触れ合ったりする。そんな日々だった。
ただ、これは目標がまだ見つかっていない時の過ごし方だ。目標が決まった今は違う。学校と眠る以外の時間を全て錬金術の修行に使い、週末もリアルカディアに入り浸っている。サオリは、「アルケミーのステータスに全振りって、RPGみたい」と思った。そう思うことで、より自分がアルキメストになるのだという実感が湧いた。
ピーチーズは相変わらず、新大久保で韓国料理を食べたり、原宿に行って可愛い写真をSNSにあげていた。サオリも行きたかったし、ピーチューブを見てくれている人も、「なんでいなくなっちゃったの?」とコメントをくれていた。だが、心を動かされると修行に支障をきたす。
ネーフェは何の罪にも問われなかったようで、何もなかったのではないかと錯覚するくらい、あいかわらず先生として変わりなく授業をしている。だが、唇の端がうっすらと青くなっているので、あの日の出来事が現実であることは確かだ。
サオリは、ピーチーズやネーフェともっと接したい、という気持ちはあるのだが、とにかく不器用で一つのことしかできない。となると、もうアルケミーの修行以外に選択肢がなかった。
毎日ワンワン工房へ通い、ミドリに教えられて修行をし、終わると家に帰って泥のように眠る。アイゼンとも一切会っていない。サオリとアイゼンは親友だが、馴れ合う仲ではないので特に違和感を感じることはない。ただ、アイゼンも今この時、同じように錬金術の修行をしているに違いない、という確信はあった。
ーー早くアルキメストになるんだ。一ヶ月以内に賢者の石を白くしてみせる。
サオリは時間が空けば、一人黙々とワンワン工房へ通った。
教えてもらうとはいっても、集中した修行をするには一人でおこなわなければならない。
他人、いや、他クリーチャーがいてありがたいと思うところは、自分が間違えた修行をしている時に訂正してくれたり、次に行くべき道を示してくれたり、今どのくらいまで修行ができているのかを教えてくれたり、励ましたりしてくれるところだけだ。
結局、何かを修めるためには、自分一人で地道に努力しながら、さらに良い方法を探し続ける。終わりはないし、それしかない。
余談だが、サオリとアイゼンが毎日東京メソニックセンターに通っていたために、「女人禁制の倶楽部に何処からともなく女子校生が現れ、何処へともなく消える」、「それはモデルのような美女だ」、「いや、アイドルのような可愛い子だ」と、フリーメイソン内ではちょっとした都市伝説として囁かれるようになっていた。モーゼはその噂をただ笑って、否定も肯定もしなかった。