第109話 Biscuit Choco in za Pocket 

文字数 818文字

ーーやっぱり……、本当に終わったんだ……。

 愛染やミハエルから気を送られ、しばらくして我にかえった沙織は、ワールドゲートのあった場所を見た。すでに閉じられていて何もない。激戦を物語る焦げ跡や足跡が無数に残っているだけだ。

ーーパパに挨拶もしないうちに、また会えなくなっちゃった。

 落ち着いてみると、沙織は寂しさがこみ上げてきた。

「沙織、大丈夫?」

「よくやったな」

 愛染とミハエルが声をかけ、代わる代わるに沙織を撫でたり抱きしめたりする。全員、体が血と泥と汗でベトベトだ。人間と鉄分の臭いがする。

ーー愛ちゃん。ミハエル。

 沙織は、二人のことが大好きなのだなと、改めて、本当に改めて思った。

「まったく。大した奴だぜ」

 ジョットも遅れてやってきて、沙織の頭に手を置いた。
 遠くで山中やリルキドが微笑ましそうにその様子を見ている。
 未だ意識の戻らないネーフェと銀次郎。
 たくさんのアボリジナルたち。
 アーサー隊長やジョージADD。
 調査隊の人たち。
 オーストラリア軍の人たち。
 マルタ騎士団の人たち。
 沙織は、みんなのことを考えながら、星が溢れまくっている夜空を見上げた。

ーーきっとピーチーズも、今頃アタピのことを考えているような気がする。パパはもういない。けどパパがいなくても、アタピはこれだけの人に愛されてるよ。きっとこれからも、まだまだいっぱい好きな人ができると思う。アタピ、いつかまたパパに会えるその時に、「自信を持って生きてきた」とたくさん話できるように、アタピはアタピプライドを握りしめて生きてこうと思うよ。

 沙織はなんだか心地よい気分になり、チロルチョコを一粒食べたいと思った。

ーービスケットのがいいな。

 クマオポケットに入っているのでクマオを探す。クマオは地面に転がって砂をかぶっていたが、長いまつ毛を伸ばしながら、目を閉じて幸せそうな顔をしていた。
 それら全ての光景を遠くから眺めながら、チャタローは満足そうに二度うなづいた。 
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登場人物紹介

サオリ・カトウ

夢見がちな錬金術師。16歳。AFF。使用ファンタジーはクルクルクラウン。

使用武器はレストーズ。

パパの面影を探しているうちに世界の運命を左右する出来事に巻き込まれていく。

カメ

「笑いの会」会長。YouTuber。韓流好き。

ニヒルなセンスで敵を斬る。ピーチーズのリーダー的存在。

映像の編集能力に長けている。

クマダクマオ

アルカディアから来たクマのぬいぐるみ。女王陛下の犬。

サオリのお友達。関西弁をしゃべる。

チャタロー

カトゥーのパートナーだった初代から数えて三代目。

『猫魂』というファンタジーを使って転生することができる。

体は1歳、中身は15歳。

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