第38話 Motala Cohenburg (モーシャ・コーヘンバーグ)

文字数 1,195文字

「それでは、まずは沙織と愛染にオーラの使い方を教えなくてはならないな。モーシャ」
「はっ」
 呼ばれてダビデ王と近い年齢に見える男がやってきた。ターバンを巻いて、ヤマと同じような上着を羽織っている。緑のロングスカートを履いて、宝石がついた指輪をはめているが、女装趣味があるようには見えない。声に張りがある。耳が大きく、額の赤い聖痕と鋭い目が特徴的だ。手には二本の棒を持っている。
「KOKではオーラの師範をしている。6番隊隊長、モーシャ・コーヘンバーグだ」
 モーシャは、棒をサオリとアイゼンに放り投げた。吸い込まれるようにうまく二人の手元におさまる。
「それでは、今からどのくらいのオーラが出せるのか、その棒にオーラを込めてみたまえ」
 サオリはまじまじと棒を見た。黒い。軽い。長さは二十センチくらい。沙織の手にもなんとか収まる太さだ。
ーー麩菓子みたい。
 サオリは素直に自分の精神を集中させた。今日だけでも三回、しっかりとオーラを錬成している。毎日繰り返している修行ではあるが、やはり実践は違うのだろう。いつもよりかなり速く、多めにオーラを生成することができるようになった。全身に回ったオーラを棒に集中させる。
ーーどうだろう。これでいいかな?
 アイゼンを見ると、アイゼンの棒にもかなりのオーラが溜まっているようだ。うっすらとオーラが見える。他人の目からもオーラが見えるというのは達人レベルだ。
ーー凄い。
 しかし、サオリにも自信があった。
ーーどう?
 サオリはモーシャを見た。
「これで全力か?」
 驚かれると思ったのに、モーシャは逆に納得がいっていないようだ。
ーーでも、これで全力だもん。
 不承不承、サオリはうなづいた。
「なるほど。素質はあるが、まだ気とオーラの違いが理解できていないようだな」
「棒にオーラを注入すると、本当はどうなるんですか?」
 アイゼンの問いにモーシャは無言で手を出した。モーシャに棒を手渡す。
「Ω」
 モーシャは目をつぶり、一言なにかをつぶやいた。目を開ける。モーシャの額にある赤い聖痕が光る。棒は意志を持ったように動き出し、十メートル伸び、細くなり、色を変え、トゲトゲになり、また元の黒い棒に戻った。
「こうなるな」
 モーシャはアイゼンに棒を投げ返した。
「なるほどです」
 アイゼンは棒をまじまじと見ている。どうなるのかという結果がわかればそこへ向かえばいい。目的がわかっていれば進むだけだ。サオリは棒にオーラを通し、まずは伸びたり縮んだりするイメージを持った。が、できない。他のクリーチャーたちが呆れた顔をしていないので、こういうものなのかもしれない。サオリは一発でできる自信があったので悔しかった。唯一の慰めは、アイゼンもできていないことだった。
 何分かそうしていたが、今すぐは無理だとダビデ王は思ったようだ。玉座のように豪華な椅子で座って見ていたが、立ち上がって何かを言おうとした。
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登場人物紹介

サオリ・カトウ

夢見がちな錬金術師。16歳。AFF。使用ファンタジーはクルクルクラウン。

使用武器はレストーズ。

パパの面影を探しているうちに世界の運命を左右する出来事に巻き込まれていく。

カメ

「笑いの会」会長。YouTuber。韓流好き。

ニヒルなセンスで敵を斬る。ピーチーズのリーダー的存在。

映像の編集能力に長けている。

クマダクマオ

アルカディアから来たクマのぬいぐるみ。女王陛下の犬。

サオリのお友達。関西弁をしゃべる。

チャタロー

カトゥーのパートナーだった初代から数えて三代目。

『猫魂』というファンタジーを使って転生することができる。

体は1歳、中身は15歳。

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