第166話 蔑み

文字数 642文字

 愛羽が我に返ると戦国原が脇腹に血をにじませ膝を着いていた。

 どうやら戦国原が咄嗟に自分を突き飛ばしてくれ代わりに彼女が当たってしまったらしい。

『…メイちゃん…メイちゃん!!』

『戦国原てめぇ、どういうつもりだ』

(…どういうつもりだ、だって?)

 それを聞きたいのは戦国原自身だった。何故今自分が愛羽を助けてしまったのか、自分の体がやったことなのに理解ができなかった。

 そんなことより何より撃たれた場所が想像以上に痛くてそれどころではなかった。
 よくドラマや映画で、撃たれながらも目的を実行するかっこいい役があったりして、割と即死でないなら意外と人間いけるのかななんて思ってしまいがちだが、あんなのは全くの嘘っぱちだと思いながら自分の死を悟っていた。

『分かったぞ戦国原。てめぇもそのガキらも優子と1枚かんでやがるな?このあたしを裏切りやがったな?』

 あまりにも自分勝手な勘違いに呆れて溜め息をつきたかったが戦国原はその苦しそうな表情を変えることすらできない。

『あ?答えろ戦国原?あたしのブツどこにやりやがった。答えたら助けてやるぞ』

 鷹爪は3人とある程度距離をとるといつでも撃てるように銃口を3人に向け威嚇し、また戦国原に銃口を向け直した。

『え?どーなんだ戦国原、早く答えろよ。痛ぇんだろ?死にたくねぇだろ?』

 こっちを見て愉しそうに笑う鷹爪を見て、戦国原は力を振りしぼって蔑んだ目を向け笑い返した。

『…ふふ…バーカ』

『この野郎!死ねガキィ!』

 鷹爪は迷わず引き金を引いた。

 バァァン!!
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