第72話 悪魔の粉と闇

文字数 2,317文字

 その女はある日あたしの前に現れた…


『お前が無敵の転校生か?』

 厚木に引っ越してめぐや珠凛とつるむようになってから5ヶ月が過ぎ、厚木南中ではあたしらにちょっかい出してくる奴もいなくなってきて、あと少しの中学校生活を平和に過ごせればと思っていた。

鷹爪肖(たかづめあやか)って言うんだ。お前、すごい強いんだって?』

 目つきや立ち振舞いがあたしの嫌いなタイプだった。ケンカをしようって言うんじゃなく口で丸めこもうとする、そういうのが得意な感じだった。

『親がヤクザやってんだよ。あたしもその内組に入る。お前、あたしの下につけよ』

 ジョーダンじゃない。組に入るからなんだってんだ。そんなんで上に立った気になられるのは御免だ。
 あたしはそう言って断った。

 こんな奴が頭にいるんじゃ厚木南の連中がくそな訳だ。もうすでにこんな学校に興味はなかったし、自分的には来なくたってよかった。

 だがめぐや珠凛のことが心配だった。

 自分は厚木南の誰にも負けやしないが2人はまだ1年だったし、自分が卒業するまでは側で守ってやりたいと思った。
 一緒にいたいと思っていた。

 それがなかったらこの1年は、中学卒業後に樹たちとCRSを結成してまた相模原に戻る為にひたすらジムに通ってとことん強くなるだけでよかった。

『そうか、断るか。それは残念だ』

 それを見越していたかのように男が4人あたしの周りを囲んでいた。

『あたしは強くて自分の下についてくれる女を探してるんだが彼らはそれを断るバカをいつも狙ってるんだ。紹介するよ。あたしの兄貴とその仲間たちだ。あたしの3つ上でねぇ、最近までCRSっつー暴走族やってた奴らだよ。悪そうな面してるだろ?』

 男たちはあたしが女だってことなんて全く気にもせずかかってきた。

 中3の女と二十歳の男の力の差は大きかった。

 しかもおそらく全くの素人でもないらしい。その上相手は4人いる。
 あたしも反撃はしたが力で押さえられてはどうにもならず、こてんぱんにされた後車でつれさられた。

 走る車の中、男たちに体を押さえつけられながら何かをされた。

 腕に針で刺されたような痛みを感じた後鷹爪が言った。

『これから天国に行けるぞ』

 その言葉の後から体がおかしくなった。ゾワゾワと毛が逆立ち体を何かすごい力が廻っていくのが分かった。

 その得体の知れない感覚が最初は怖かったけど、なんだかダルさが吹き飛ぶというか、つい今さっきまであんなにボコボコにやられていたのに体がシャキッとしてしまっていて

『何したの?あたしに何したの?』

 と気になって仕方なくなりずっと喋っていた。

 これは何かの薬かもしれない。

 自分は何かよくない物を注射されたのかもしれないと頭には浮かんだが、そんなに悪い物のようにも思えず、むしろいい物のような気にさえなっていた。

 やがてどこかの部屋に連れこまれベッドにあたしは押し倒された。
 あたしはここで何をするのかが分かった。

 男たちが次々にあたしの服を脱がせていった。抵抗しても押さえつけられて力が入らない。
 あたしは力一杯やめろと叫んだが、あっという間に丸裸にされてしまった。

 そうやって少しずつ体を触られいじられていくと言葉では言い表せない気持ちよさに襲われた。

 何をされている?触られ撫でられている?くすぐられている?

 口でされている?舌で舐めしゃぶりつかれている?

 どれもが初めてのことなのでよく分からなかったが、それでも本当に気持ちよすぎて、まるで新しい扉が開かれたような最高の快感がずっと続いた。

 誰1人として信用した訳でも好みのタイプでもないのに一生懸命キスをして口と手を使わされ脳と体は彼らを許し受け入れてしまっていた。

 快感が高まり始めるともう欲しくて欲しくてたまらなくなる。

 あたしは自分がこんなに情けない顔をしてこんなに恥ずかしい声を出せることを初めて知った。

 男たちは次々にあたしの中に入ってきた。その度に激しい快感に襲われ男たちは順番に代わる代わるあたしを汚した。
 だけど気持ちよすぎてあたしはされるがまま抱かれ快楽の中で踊り続けた。

 そんなことが何時間続いただろうか。そうやってあたしのファーストキスも初体験もめちゃくちゃにされ、男たちが回復しみなぎる度にそれは繰り返され飽きることもなくあたしの体は延々と弄ばれた。

 おかしなことに眠くもなく目をつぶっても寝れなくて、あたしが正気に戻れたのは2日後だった。

 気分はもちろん最悪で、まずとてつもない吐き気に襲われしばらくトイレから出られなかった。

 そしてその一部始終を鷹爪肖ずーっと見ていた。ご丁寧に動画におさめて。

『なかなかいい顔してたよ。どうだ?AVデビューしてみるか?』

 こいつをぶっ殺して地元を出よう。本気でそう思った。

 もうすでにCRSへの憧れなんてどこにもなかった。くその集まりにしか思えなかった。

『まだ気が変わらないのか?じゃあ仕方ないな。お前の可愛がってる後輩2人にも同じ目に合ってもらおうか』

 後輩2人?

 めぐと珠凛のことか?

 まだ中学生になったばかりの2人にこんな恐ろしいことを?

 なんて腐った奴だ。めぐと珠凛にはなんとしてでも転校させようとその時決めた。

『もしお前が逃げるなら相模原の親友って奴にもそうなってもらう』

 …なんだって?

『哉原樹。お前の携帯見てたらそんな奴がいたなぁ。親友なんだろ?』

 鷹爪は冷たい笑いを見せた。まさか樹のことまで知られてしまうなんて。

 ダメだ。樹にはそんなことさせない。あたしの命に代えても絶対やらせない。

 でも…

 でも樹には言えない…

 こんなことになってると知ったら、あいつは多分黙ってなんかいてくれない。

 絶対助けに来てしまう。
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