第102話 一斉検挙

文字数 2,196文字

 レディは八代の隣まで行くと勢いよく横から蹴りをくらわせた。

『む!?』

 一撃、また一撃とそのスピードの中どんどん幅寄せし端へと追いこんでいく。伴の時と全く一緒だ。

 すると愛羽が更にその横からそれを阻止するべくレディの腕を引っ張った。
 レディはそれを払いのけると続いて愛羽に攻撃をしかける。
 国道246を時速100km近くで走る単車の上、ハンドルから手を放し身をのり出してパンチを打ってくる。
 愛羽はそれをくらうと単車ごと対抗車線にコースアウトした。

『愛羽!危ねぇ!』

 パァ~!!と対抗車がクラクションを鳴らし愛羽に突っこんでくる。
 体勢を立て直しギリギリの所でそれをかわすとレディは続けて愛羽に攻撃した。
 また愛羽は対抗車線に追いやられる。

『てめぇ~!』

 今度は玲璃が愛羽の反対側から金髪に攻撃をしかけた。
 それに合わせて愛羽も蹴りをしかけた。左右同時からの蹴り。さすがは幼なじみと言える見事なコンビネーションだったがレディはその攻撃を両腕で同時に軽々と受けると次の瞬間、片手をシートに着いて上体を支え足を開いて左右同時に蹴り返した。

(なっ!)(嘘っ!)

 そして追い討ちをかけるように愛羽をまた反対車線へ追い込んでいくと今度は前から大型のトレーラーが現れた。
 レディは構うことなく愛羽を突っ込ませるつもりだ。

『なっ!殺す気かコノヤロウ!愛羽!ブレーキしろぉ!』

 懸命に玲璃が叫ぶも攻撃を防ぎながら愛羽はそれさえもさせてもらえなかった。

 すると今度は愛羽の更に右、対抗車線からフルスピードで眩が前に出た。
 眩はそのまま真っ直ぐトレーラーに向かっていった。

『なっ!あっ危ねぇー!!』

 眩はよける気配など全く見せずに突っこんでいくとトレーラーは慌てて急ブレーキしハンドルをきった。
 それを見切って激突スレスレで眩もハンドルをきった。
 愛羽はなんとかそのおかげでブレーキが間に合い減速し間一髪後ろに1度下がった。
 見ていた玲璃がパニックのあまり心臓が飛び出そうだったが玲璃は一先ず胸を撫でおろした。

 眩はそしてレディに近づいていくと攻撃に出た。もちろんレディも応戦する。
 眩は前方に目もくれずおもいきりパンチを打っていく。

『こんならぁっ!!』

 レディはそれをかわし受け流すとカウンターの蹴りや拳を返した。
 しかし眩もそれを手足で受け止めた。

『こちとらこいつらを守るという約束があんねん!今急いどんのや!邪魔すんねやったらお前の相手はあたしがするで!』

『…』

 単車で走りながらその上で戦っているとは思えないような激しい戦いが続いた。
 周りの愛羽たちも近づくことができない。

 レディは突然交差点を曲がると眩もそれを追っていった。

『待たんかい!』

『あっ!眩さん!』

 愛羽が呼ぶのも聞かず、そのまま行ってしまった。
 目的地はまだまだ真っ直ぐだ。

『どうしよう…』

『あの姉ちゃん道分かんのかよ、ったく』

 愛羽たちが交差点でどうするか悩んでいると眩たちが曲がっていった逆の方から単車が走ってくるのが見えた。
 川崎に向かっていた掠たちだ。

『あれ?愛羽ー!』

 愛羽たちに気づくと掠たちはそこに停まった。しかし連れの3人の顔を見て愛羽も玲璃も構えた。

『掠ちゃん…その人たち、どうしたの?』

 対する槐も気にくわなそうな顔をした。

『ちっ、だから来とーなかったんや』

 愛羽と槐は大阪でやり合っている。そこの嫌な空気を察すると掠が割って入った。

『あ、あ、いいのいいの!訳あって、この人たち今は協力してくれてるからさ!ね、ねぇ、それより川崎で戦ってるって聞いたけど…』

『あぁ!それが実は…』

 愛羽たちは手短に今の状況を説明した。

『…え?それじゃ何?CRSの目的はそのヤクザに優子ちゃんを殺させることだって言うの?何よそれ。ひどい…ひどすぎるよ』

『人質取ってわざわざ川崎で戦ってたのが邪魔させない為だっていうのは分からなくないけど、今までの全部がこの為だっていうの?なんでこんなまわりくどいやり方…』

 旋は震えていた。絶望的な怒りを感じずにはいられず、それは珠凛も同じだった。

『いや、CRSはそもそも元からまとまったチームではない。他者多用の思想と利害が交ざらないまま形になったのがCRSの現状。そしてその1番上にいるのが鷹爪だ。あいつに恨みを持っていない奴などいないだろうが、優子はその犠牲にさせられようとしている。私の勘が正しければ優子と鷹爪は厚央で会うはずだ。急ごう』

『あんたの言葉を信用しろってのか?』

 玲璃は八代をまだ念のため警戒している。

『どっちにしても!こんなとこで話してる暇なんてない!早く行かなきゃ!』

 愛羽がそう言って各自が発進しようとした時だった。突然四方から複数台のパトカーが赤灯を回しサイレンを鳴らしながら走ってくるのが目に映った。
 そして前方の道がゲートを閉じるようにして壁のような物に封鎖されてしまった。

『えっ!何あれ!』

 愛羽たち1年生組は知らなかったが萼に浬、槐に八代はそれが何か分かった。

『あかん…族止めや』萼は目を点にした。

『あれはイジメやろ…』浬は額に手をやる。

『うわ~嘘やろ?』槐は非常にめんどくさそうな顔をしている。

『一斉検挙、だと?何故今日こんな所で…』

 八代はレディが急に道を曲がっていったことを思い出した。

(奴め…知っていたのか?それとも奴が警察を動かしたとでもいうのか?くそっ…)
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