第168話 終焉

文字数 570文字

『こっちだ鷹爪ぇ!!』

 樹は渡り廊下まで出てきて叫ぶと走って向かっていった。
 我慢の限界。愛羽たちを守るにはもう自分が出ていくしか方法はなかった。

 その声を聞いて優子が渡り廊下まで出てきた時には鷹爪が樹に銃を向けて狙いを定めていた。

『やめろ鷹爪ぇ!』

 だが次の瞬間には弾は発射された。

 バァァン!!

 左足の腿を撃たれ樹は鷹爪までたどり着くことなく崩れるように倒れていった。

『樹ぃ!!』

 鷹爪はそのまま優子に銃を向けた。

『てめぇ優子。なんでてめぇがチャカなんて持ってやがんだ。さっさとあたしのブツを返しやがれ!』

 すかさず優子も銃を向けたが鷹爪の引き金の方が圧倒的に早く引かれた。

 だが鷹爪の拳銃から弾はもう発射されなかった。

 カチッ。カチッ。あまりにも無力な音。弾が切れたのだ。鷹爪はみるみるうちに顔面蒼白になっていく。

『…どうした?鷹爪。撃たねーのか?じゃああたしが撃つぜ?』

『ま、待て優子!待ってくれ!』

 鷹爪は手を前に出して後ずさるが優子は構わず引き金を引いた。




 これで全て終わる。こいつを殺してやっとあたしはこの苦しみから解放される。

 優子は人1人の命を終わらせようというこの瞬間にフルマラソンでも走りきったかのような達成感のようなものを感じていた。

 バァァン!!


 だが次に目に映ったものがそんな優子の心を一瞬で絶望に突き落とした。
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