第164話 想定外2

文字数 926文字

『めぐちゃん!めぐちゃん!』

 旋は体を揺さぶられながらゆっくり目を開くと見たようなポニーテールが見えた。
 旋はガバッと起きると愛羽の肩をつかんだ。

『愛羽!ねぇ!優子ちゃんは!?優子ちゃんはどこ!?』

 今にも泣き出しそうな旋の肩をつかみ返すと愛羽は少し声のトーンを落として旋を落ち着かせる。

『大丈夫。学校の中にいる。今からあたしたちであの人を助けるから、めぐちゃんも一緒に来てくれる?』

 旋は急いで首を縦に2回振った。

『聞いてめぐちゃん。今もうここにヤクザの人が来てて、その人も学校の中にいるの』

『そんな…じゃあ早くしなきゃ!優子ちゃんが!』

『しー。樹さんが今優子さんの所に行ってくれてるから、とりあえず大丈夫。いい?聞いてめぐちゃん。あたしたちは今から囮になって4階のあの部屋まで行く』

『行ってどうするの?』

『分からない。その間に優子さんを逃がすつもりなのかもしれないし、何か他に考えがあるのかもしれない。けど、とりあえずそうしなきゃ優子さんが撃たれちゃうってことなんだと思う』

『撃たれる?』

『うん。相手は銃を持ってるみたい。だからあたしたちも気をつけないと…』

『…させてたまるもんか』

 愛羽は旋が拳銃と聞いて恐れをなしてしまうことを懸念したのだが、どうやらそれはいらぬ心配だったようだ。

『行くよ、愛羽』

 旋の方が1歩先を進みながら2人も校舎に入っていく。




 その2人の様子を影から戦国原が見ていた。

 校門の前で麗桜が倒れている。これは想定内。

 ここに来る途中で珠凛が足を引きずっているのも見た。これも想定内。

 だが、今この校内で起きていることは全てが想定外だ。
 優子、樹、鷹爪に加え、たった今愛羽と旋が校舎に入っていった。
 もうすでに計画通りになどことが進んでいないのは明らかなどころか、頭の中のビジョンには依然として愛羽が撃たれる場面が浮かんだままだ。

 どうすればいい?なんとしても今日中に鷹爪を殺さなければならない。

 どうすれば変わる?考えはまとまらないが急がねばならない。

 戦国原は校門を1歩中に入った。

 するとそこで恐るべき光景がまた脳裏に浮かび上がってきた。

『まさか…』

 次に見たのは撃たれて血だらけになった自分の姿だったのだ。

『どうして…』
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