第86話 恋心にも似た思い

文字数 1,170文字

『はーすちゃん』

 蓮華が外でタバコを吸っていると愛羽がひょっこりやってきた。

『あぁ…愛羽…ごめんね、空気悪くしちゃって。あたし、ちょっと口ばっか達者だよね…気を付けなきゃいけないとは思ってるんだけど…』

 愛羽は隣に座ると言った。

『なんで謝るの?蓮ちゃんは何も悪いことなんてしてないよ。謝るならあたしだよ。ごめんね…本当はあたしがもっとしっかりしなきゃいけないんだけど…あたし、なんて言えばいいか分かんなくて、なかなか言葉が出てこなくて。でも蓮ちゃんが全部言ってくれた。だから蓮ちゃんはすごいよ!』

『そう…なの?弱っちいくせにあたし思ったことすぐ口から出ちゃって、そういうとこ直さなきゃっていつも思ってるんだけど…』

『何言ってんの?あたしなんて思ったってなかなか口が動かなくてどうすればいいか悩んでるのに。思ったこと言えないより、ちゃんと思ったこと言える方がよっぽどいいよ。いいことだと思うよ?』

 そう言って愛羽はニコッと笑った。すると中から眩が出てきた。

『そうや、胸張っとったらえぇ。みんなえぇ刺激になったようやぞ』

 2人の目の前まで来るとタバコに火をつけた。

『煌に向かってあんな口利ける奴は大阪にはおれへん。ただの小娘の集まりやないっちゅー訳やな、暴走愛努流は』

 眩は死神というイメージからは程遠い優しい顔で愛羽と蓮華を見た。

『煌さん、瞬ちゃんのことやっぱり嫌いなんですか?』

 愛羽が聞くと眩は煙を吐き出し何故か困ったように笑う。

『すまんなぁ。あいつがあんななんはあたしがこんなだからや。悪く思わんといてくれ。』

『いえ、別に…』

『あいつな、その今人質取られてえぇようにされてるゆー女のこと褒めとったんや』

『褒めてた?』

『褒めてたっちゅーか…今、大阪歩いとっても、もうあたしらにケンカ売ってくれるような奴なんて正直おれへんねん。悲っしい話やろ?』

『え?…は、はぁ…』

『でもこの前の夏の時にな、姉さんおもろい奴見つけたゆーて久しぶりに骨のありそうな奴とケンカできたことに目ぇ輝かせとったんや。結局決着まではつけられへんかったけど、あの後もめっちゃおもろかったゆーてたわ。そんな風に自分が思えた相手が人質取られたからて、そんなんなってまうのが許せへんかったんやろな』

『あ、あぁ~…な、なるほど…』

 言いたいことは分かるような、でもやっぱりどこかおかしいような気がした。
 ということは、煌はいずれどちらにしろ瞬とまたやり合いたいなんて言い出すのか?
 と思うと仲間にしていいのかは少し疑問だ。

 だがさっき眩が言った通り、手を組むならもう決めなければならない。

『ま、可愛い妹やねん。あいつかてホンマは協力したいはずや。ほなよろしく頼むわ』

 そう言って笑った眩の顔が想像以上に可愛くて2人はうなずいてしまった。

 その後一同は豹那と合流することになった。
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