第150話 やるしかない

文字数 1,050文字

 樹と愛羽は顔を見合せた。

『めぐちゃん、捕まっちゃった…それに…撃たれた…』

『優子…出ていくって…ダメだ…殺される』

 マズい。これは非常にマズい。優子が出ていったところで旋だって無事では済まないかもしれない。いや、口封じの為なら殺すはずだ。もうこうなっては今更警察を呼んでる暇もない。

 2人は窓まで走り鷹爪の居場所を確認した。

『あそこだ』

 2つの校舎を渡り廊下でつないだ漢字の工の字型のその中央。丁度渡り廊下の所に鷹爪と足を撃たれ這いつくばる旋がいる。

『愛羽。こうなったら出たとこ勝負だ。なんとかしなきゃ2人共殺されて終わりだ。あたしがダッシュであっち側の校舎まで行って下まで行く。そしたらあそこの建物の端まで行くから、お前はこのまま降りてその反対側の端にいてくれ。タイミングを見計らって一気に叩き潰す。合図が見える位置にいてくれ!』

『うん!分かった!』

 2人は急いで行動に移した。




 優子は外に出るとゆっくり鷹爪に近づいていった。

『来たぞ鷹爪』

『手間かけさせやがって』

 鷹爪は旋に銃を突きつけて盾にした。

『まずはブツだ。どこにやりやがった』

『…あたしはこの学校の美術室の、間違っても誰も触らない場所に隠したつもりだった。だがあんたから土曜日と言われ確認したら、もうその時にはなくなっていた』

『適当なこと言ってんじゃねーよ。もう売っちまったのか?誰に売った?』

『本当だ。あんたが仕組んだんじゃないとすれば、誰かが裏で手を引いたんだろうな』

『バカ言ってんじゃねぇよ、誰がそんな…』

 その時鷹爪はさっき美術室で見た手紙のことを思い出した。

『…そうか、あの先公だな?てめぇに手紙書き置きした。よし、明日にでも拉致ってぶっ殺してやる』

『…なんだと?』

 優子にとってそれは最悪な勘違いだった。

『まぁいい。お前には責任取って死んでもらう。じゃあな』

 鷹爪は優子に銃を向けた。

『やめてぇ!!』

 旋は泣き叫んだ。それを合図にして愛羽と樹の目が合った。

『こっちだ鷹爪ぇ~!!』

『逃げて2人共!!』

 2人は声を張り上げながら鷹爪めがけて突進していった。

『何!?』

 鷹爪は咄嗟に樹に向けて引き金を引いた。

 バァァンッ!バァァンッ!

 銃声が2発同時に響き渡ると弾は樹の特攻服を貫いたが僅かに体を外れていった。

 樹も愛羽も発砲の衝撃に思わず目をつぶってしまっていたが、目を開けると鷹爪が倒れていた。何がどうなったのか分からず愛羽も樹も旋も互いを確認すると優子が拳銃を持って立っていた。

 優子が隠し持っていた銃で鷹爪を撃ったのだ。
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