第104話 正義の色

文字数 1,280文字

 アジラナは検問を張るように厚央に続く交差点に陣取り、そこを何びとたりとも通さなかった。

 そこにまず1番に抜け出て飛ばして出てきた麗桜が到着した。

『コンナトコロニカスガナンノヨウダ?フッフッフ』

『優子さんはどうした』

『サァ、シラネェナァ。キョウハアッテネェシ、モウアウコトモネェカモシレネェナァ』

 そう言ってニヤニヤしながら麗桜を挑発する。

『くそ野郎…』

 麗桜は今すぐかかっていきたいのをこらえた。そんなことをしてる場合ではない。
 1人でこんな人数に加えてこのアジラナを相手にしてる時間などない。

 なんとか走って切り抜けられるか?

 いや無理だ。あまりにも相手の数が多すぎる。

 さっき玲璃から白桐優子は厚央だとメッセージが届いていたが、ここでSEXYMARIAが待ち構えているということはやはり間違いなさそうだ。
 とりあえずやり合って隙を見て走って切り抜けられるか?
 だがこの人数だ。そう簡単には行かせてくれないだろう。

 1人では…

 そう思った時、麗桜が来た反対側から1台の単車がやってきた。見たことのない特攻服を着ている。
 だから敵が来たのだとばかり思っていたが違う。

 まだできたばかりの真新しい特攻服には皺1つなく、その空のような青は心なしか輝いて見える。
 それは正しく彼女の正義の色だった。

 真っ青な特攻服に身を包んだ月下綺夜羅がSEXYMARIAの敵陣ど真ん中に1人で乗り込んできたのだ。

『綺夜羅…』

『よぉ麗桜』

 麗桜はその姿を見て驚いた。

『お前、それ…』

 綺夜羅の背中には自分と同じ暴走愛努流のチーム名が施されていたからだ。



 それは愛羽と綺夜羅と瞬に咲薇が夏に峠でレースをした日の話に遡る。
 愛羽は前日綺夜羅の家にタバコとプリンを届けに行った時に暴走愛努流に入らないかと誘っていた。
 しかし綺夜羅は掠たちが他者と上手くやれると思えず断ったのだ。

 しかしレース直前に綺夜羅はこんなことを愛羽に言っていた。

『おい愛羽。あたしに勝てたら考えてやってもいいぜ?昨日の話』

 綺夜羅はニヤリと笑って言った。もちろん負けるつもりなどなかったからだ。

 だがそれからどんな心変わりがあったのか、彼女は自分の意志で暴走愛努流の特攻服を作っていた。




『へへっ。そんなことより、こんなとこで何してんだ?』

『ここに用はねぇ。一刻も早くこの先に行かなきゃならねぇんだ』

 それを敵が阻んでいるらしいことがよく分かった。

『そうけ。ここに用がねぇならさっさと行っていいぜ。あたしの用は、ここにあるからよ』

 2人はアクセルを吹かすと一気に走り出し、CRSの人間が待ち構える厚央へ続く道の入り口に突っこんでいった。
 麗桜がそのまま走っていき綺夜羅は敵を突破した所で停まった。

『オイ!アノガキヲツカマエロ!』

 言われてSEXYMARIAの女たちが麗桜を追おうとすると綺夜羅が両手を広げそれを阻止した。

『いいかクソ共!あいつ追いたいならあたしを倒してからにしろ!分かったかこのちん毛パーマ野郎!』

 アジラナは言われると目を真っ赤にして怒りだした。

『イイダロウ。ソンナニシニタイナラソウシテヤルヨ』
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