第63話 放火犯
文字数 1,339文字
『なんやお前ら』
咲薇の手紙を受け神奈川を目指すことを決めた椿原萼と誘木浬はある人物の所を訪ねていた。
それは大阪喧嘩會の二代目、藺檻槐 の所だった。
『アホが揃って何の用や』
大阪、京都、兵庫と同盟を結ぶとなった時、槐だけは最後まで自分たち大阪喧嘩會は他に屈しないと言い張っていたのだが、チーム初代の天王道眩が一つ返事をしてしまったことに加えある理由で従わざるをえなくなってしまった。
『誰がアホや。アホは浬だけじゃ』
『コラァ!萼えぇ加減にせぇよ!』
『うるっさいねん!お前らのおもんない漫才なんて聞きたないねん。他行ってやれや』
『誰が美人芸人や』
『誰も言うてへんわ!』
2人は槐に一緒に神奈川に来てくれるよう協力を求めたが槐の返事は早かった。
『…断る』
『はぁ?』
『嫌な奴やなぁ~』
当然のように槐は首を縦には振らなかった。
『神奈川を潰しに行く言うんならまだ分かるけどな、なんで助けに行かなあかんねん。お前ら頭おかしんちゃうか?何が悲しくてついこないだケンカした奴らに手ぇ貸さなあかんねん。アホや、あたしはお断りや』
『どうしてもか?』
『あぁ』
萼は念を押したが槐は断固拒否だ。萼と浬は顔を見合わせて意味深な溜め息をついた。
『仕方ないな浬さん』
『そやな萼ちゃん』
萼は携帯を取り出すとダイヤルを押し始めた。
『槐。あんたがそうやって言うことは分かってたわ』
『それやったら最初から来るなて』
槐はとてもめんどくさそうに言った。
『せやからあたしらも不本意やけど2択に絞らせてもらうわ』
『2択?』
萼は携帯の画面を見せると急に勝ち誇ったような見透かしたような顔で笑った。
画面には110の番号が見えている。
『知っとるか?放火てなかなか罪が重いねんで。お前が火ぃつけたあの工場、丸焼けの全焼やったな。幸い廃工場やったけど持ち主もおんねん。何千万という賠償金払わされるやろな。それに中に人がおるの分かってて火ぃつけとんのやから最悪放火殺人未遂や。ある弁護士の先生いわく7~8年の実刑というんは間違いないらしい』
槐は急に小さくなってしまった。
『さて、そこでや。あたしが今から警察に電話して、あの火事の真相を話したらお前は全国指名手配や。一応時効もあって15年逃げきれば成立やけど、どうする?リアル人生逃亡ゲームしてみるか?』
槐はさすがに青くなり固まっていた。
あの時は頭に血が昇り衝動的に火をつけガソリンを撒いて回ったが、あれだけの大火災になってしまいさすがに噂がたっていた。
その後警察も火事のことで動きだし、さすがにまずいことを察し、もし捕まったらどうなるということも自分で調べた結果「少年院で1年」だけではそうそう済まないらしいことを知った。
実際に火をつけた現場を見ていた般若娘のメンバーには強く口止めをしたがさすがに誰が見ても犯人は一目瞭然で、槐はあれ以来それまでのような傲慢な振る舞いを控え、どこかでつまらない恨みを買ってチクられたりしないようおとなしく過ごしていた。
内心では毎日、明日の朝警察が逮捕状を持ってやってきたらどうしようとビクビクしながら生きているのだ。
槐はさっきよりも更にめんどくさそうな顔をして大きく溜め息をついた。
『…あたしは行くだけや。なんもせぇへんからな…』
咲薇の手紙を受け神奈川を目指すことを決めた椿原萼と誘木浬はある人物の所を訪ねていた。
それは大阪喧嘩會の二代目、
『アホが揃って何の用や』
大阪、京都、兵庫と同盟を結ぶとなった時、槐だけは最後まで自分たち大阪喧嘩會は他に屈しないと言い張っていたのだが、チーム初代の天王道眩が一つ返事をしてしまったことに加えある理由で従わざるをえなくなってしまった。
『誰がアホや。アホは浬だけじゃ』
『コラァ!萼えぇ加減にせぇよ!』
『うるっさいねん!お前らのおもんない漫才なんて聞きたないねん。他行ってやれや』
『誰が美人芸人や』
『誰も言うてへんわ!』
2人は槐に一緒に神奈川に来てくれるよう協力を求めたが槐の返事は早かった。
『…断る』
『はぁ?』
『嫌な奴やなぁ~』
当然のように槐は首を縦には振らなかった。
『神奈川を潰しに行く言うんならまだ分かるけどな、なんで助けに行かなあかんねん。お前ら頭おかしんちゃうか?何が悲しくてついこないだケンカした奴らに手ぇ貸さなあかんねん。アホや、あたしはお断りや』
『どうしてもか?』
『あぁ』
萼は念を押したが槐は断固拒否だ。萼と浬は顔を見合わせて意味深な溜め息をついた。
『仕方ないな浬さん』
『そやな萼ちゃん』
萼は携帯を取り出すとダイヤルを押し始めた。
『槐。あんたがそうやって言うことは分かってたわ』
『それやったら最初から来るなて』
槐はとてもめんどくさそうに言った。
『せやからあたしらも不本意やけど2択に絞らせてもらうわ』
『2択?』
萼は携帯の画面を見せると急に勝ち誇ったような見透かしたような顔で笑った。
画面には110の番号が見えている。
『知っとるか?放火てなかなか罪が重いねんで。お前が火ぃつけたあの工場、丸焼けの全焼やったな。幸い廃工場やったけど持ち主もおんねん。何千万という賠償金払わされるやろな。それに中に人がおるの分かってて火ぃつけとんのやから最悪放火殺人未遂や。ある弁護士の先生いわく7~8年の実刑というんは間違いないらしい』
槐は急に小さくなってしまった。
『さて、そこでや。あたしが今から警察に電話して、あの火事の真相を話したらお前は全国指名手配や。一応時効もあって15年逃げきれば成立やけど、どうする?リアル人生逃亡ゲームしてみるか?』
槐はさすがに青くなり固まっていた。
あの時は頭に血が昇り衝動的に火をつけガソリンを撒いて回ったが、あれだけの大火災になってしまいさすがに噂がたっていた。
その後警察も火事のことで動きだし、さすがにまずいことを察し、もし捕まったらどうなるということも自分で調べた結果「少年院で1年」だけではそうそう済まないらしいことを知った。
実際に火をつけた現場を見ていた般若娘のメンバーには強く口止めをしたがさすがに誰が見ても犯人は一目瞭然で、槐はあれ以来それまでのような傲慢な振る舞いを控え、どこかでつまらない恨みを買ってチクられたりしないようおとなしく過ごしていた。
内心では毎日、明日の朝警察が逮捕状を持ってやってきたらどうしようとビクビクしながら生きているのだ。
槐はさっきよりも更にめんどくさそうな顔をして大きく溜め息をついた。
『…あたしは行くだけや。なんもせぇへんからな…』