第101話 レディ現る

文字数 1,829文字

『あぁ、いたいた。赤い髪のクソッタレ野郎。まずはお前からだ。決着つけてやる』

 八代は未だ姿を見せない優子とアジラナやSEXYMARIAのメンバーのことが気がかりだったが豹那に立ちはだかられては戦うしかなかった。

(くそっ、こんな時に)

 豹那は助走をつけて構わずパンチにいった。だが八代はその軌道を流し肘を豹那の顔面に叩きつけた。
 豹那は口が切れて血がにじんだがニヤッと笑うとその距離からまた大振りのパンチを打ち放った。
 八代は今度はかわせずガードしたがそのまま吹っ飛ばされた。

『そういえば、あんたがやってんのはムエタイかい?ややっこしい技術だけど、大した攻撃じゃないねぇ』

『はっ、相変わらず偉そうな女だ。そうだ、私はそもそもムエタイの者だ』

『そもそも?』

『今はある人間の元で合気道をベースとした新しい技術を学んでいる』

『へぇ、今も勉強中って訳か。なら1つ忠告しておくよ。あたしの相手はいつも決まってボブ・サップみてーな奴なんだ。お前のそのヘナチョコ攻撃じゃ当てることはできてもあたしを倒すことはできないよ』

『何?ふっ、勝負は最後までやってみなければ分からんぞ』

『ふふ…分かるさ』

 豹那と八代は激しい打ち合いを始めた。

 だがしばらくするとそこへ霞ヶ﨑燎が走ってやってきた。

『心愛さん!やっぱり心愛さんの言った通りです!ウチにだけ秘密で今日のことは仕組まれてました!優子さんはブツ盗まれて今日そのまま鷹爪と会うみたいです!』

『…なんだと?』

 豹那と戦い続ける八代の顔色が急に変わった。

『腐れ外道共がっ!』

 八代は豹那に向かって手のひらを向けた。

『嬢王!すまんが今日はこれで打ち止めだ!』

『なんだって?』

 八代はそのまま四阿の所まで歩いていった。

『どういうことだ四阿。何故ウチにだけ情報を隠していた。貴様返答次第ではタダじゃ済まさんぞ』

『…なんのことだか?』

 四阿は完全にとぼけた。明らかにおちょくったとぼけ方だった。

『貴様!』

 八代は四阿につかみかかったが四阿は続けて言った。

『くくく、今更お前がどう動いた所でどうにもならねぇよ。今から厚木に向かってみるか?いや、間に合わないね。そしてもう止めることなんてできない。今日優子は間違いなく鷹爪に弾かれて死ぬ。その鷹爪も優子を殺った所で無事じゃあ済まねぇだろうな。運が良きゃ鷹爪も消される。その為の今日なんだよ。優子は生け贄って訳だ。分かるか?もう全部手遅れなんだよ』

 八代は四阿をつかんでいた手を放し突き飛ばした。

『そんなことはさせん』

 八代は咄嗟に走り出すと自分の単車に乗り込みエンジンをかけた。

『あいつを行かすな!』

 四阿が怒鳴り声をあげるとCRAZYVENUSにREDQUEENの人間までもが八代につかみかかった。

『どけぇ!放せぇ!』

『はっはっは!REDQUEENももうテメーのチームじゃねぇんだよ!八代、てめぇと燎はここで仲良く破門だ』

 四阿がやれと声をあげると、八代につかみかかっていた人間を豹那が殴り飛ばした。

『嬢王…』

『お前は破門だってさ。部外者はさっさと消えな』

『すまん…恩にきる』

 八代はエンジンをかけると一気に走りだした。

『愛羽!玲璃!お前たちも行くんだよ!ここを片付けたらあたしもすぐに行く。このクソ共の思い通りにさせるな!』

 言われて愛羽と玲璃が単車に飛び乗った所に眩がどこからともなく単車で現れた。

『眩さん?あれ?その単車誰のだよ』

 眩が乗ってきたのはCB400フォア。ホンダの単車だ。

『向こうにあったからあちらさんのちゃうか?フォアなんてレアなもん乗っとる奴おんねんな。鍵付きっぱやったからかっぱらってきたんや。急ぐねやったら2ケツより単ケツやろ?』

 このお姉さん、何でもありかよ。と玲璃が小声でボソッと言うとまた別の1台の単車が3人の横を猛スピードで通り過ぎ前方に停まった。

 Z1000R。金髪にネックウォーマーで顔を隠しているが特攻服の背中にはCRSと大きくあり、その内のどことは書いておらず代わりに「翼亡き天使」と縦に刺繍されているのが遠目で分かる。

 彼女こそが今回の黒幕にしてCRSの裏の支配者、レディである。

『おい、愛羽。伴さん事故らせたのあいつだろ』

 玲璃の言葉に答える前に愛羽は急発進した。

 眩もそれに続く。

『あっ!おい!』

 玲璃も急いで単車を走らせる。

 八代を謎の金髪女が追い、その後ろを愛羽、眩、玲璃が追っていく。

 金髪の女はあっという間に八代の隣まで追いついていった。
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