第146話 助けなきゃ

文字数 659文字

『樹さん!樹さん!』

 愛羽の声で樹は目を覚ました。どうやら気を失っていたようだ。

『優子は!?』

 樹はガバッと起きた。

『分からない。でも、ヤクザの人が通って綺夜羅ちゃんが行けって言ってくれて、あたし走ってきて』

 すぐそこに車が停まっていたが誰も乗っていないようだ。

『麗桜ちゃんは門の所に倒れてたけど、他に誰も見当たらないから樹さんに電話したら音がして』

 その時だった。

 パァァンッ!!

 聞いたこともないような破裂音。続いて校舎の中から叫ぶ声がした。

『出てこい優子ぉ!!』

 2人は顔を見合わせた。相手は銃を持っている。

『ねぇ…今の音』

『あぁ、ヤベぇな』

 優子がまさか銃を持って対抗しているとは夢にも思わない2人は圧倒的優子の不利と死を思った。

『…助けなきゃ』

 樹はつくづくこのチビのポニーテールの少女に感心してしまった。逃げようとかどうしようではなく、銃声を間近で聞いて尚第一声が助けなきゃとは。しかも愛羽にとっては友達でも知り合いでもない他人だ。

 もう東京連合との戦いや大阪大戦争を一緒にくぐり抜けてきたが、愛羽が今ここにいてくれることがすごく心強かった。

『あぁ…助ける。愛羽、一緒に来てくれるか?』

『何言ってんの?早く行こ』

 愛羽はニコッと笑った。2人は校舎の中に入ると耳を澄ました。

『愛羽、ブーツだけ脱いどこう。足音をたどられるのが1番まずい』

 2人はブーツを脱ぐと足音を立てぬよう移動した。

(優子が出会う前にあたしらがそいつを叩いて無力化しちまうんだ)

(うん。まずは見つけなきゃだね)

 しかし物音は聞こえてこない。
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