第161話 最終話
文字数 1,159文字
最終話
『いや~。話しすぎちまったな。今日は付き合ってくれてありがとな。今日の追悼はこれで終わりだ』
その場で解散となりそれぞれ単車に乗った者から引き上げていったが樹はまだそこから動かなかった。
まだ名残惜しい気持ちがやはりあるのだ。
誰よりも大切な親友が目の前で自分をかばって撃たれて死んだのだ。そんなすぐ立ち直れる訳はない。
静火と唯がそれを見て一緒に残った。3人はしばらく何も言わず、ただ海を眺めていた。
『ずっとそこにいるつもりかい?』
声がして3人が振り向くと豹那が1人立っていた。どうやら海を眺める3人をずっと後ろで見ていたらしい。
豹那はタバコに火をつけると歩いて向かってきた。そして樹の隣まで来るとドサッと腰を下ろした。
『ここにはさ、死んで灰になっちまったあたしのガキが砂と風になっているんだよ』
『…え?』
樹は思わず顔を見てしまった。そんな話は聞いたことがない。いや、それはそうかと思いながらも樹はリアクションに困ってしまった。静火も唯もだ。
『…まぁだからそういう訳でね、あんたの気持ちは分かるつもりだよ』
豹那はタバコをただ咥えたまま遠くの方を見つめている。
『あたしがそうなんだよ。忘れようとしても忘れられなくて、結局こんな目の前にマンション借りてまで戻って来ちまってさ。望まない死の、それを受け入れられないで生きることのその辛さって言ったらね、ひどいもんさ。未だに赤ん坊の夢にうなされる』
樹は話に聞くアイドルになるはずだったのにならなかった理由というのがそれであるらしいと理解した。
『だからさ、あんたにはね、あたしみたいになってほしくなかったんだ』
豹那はポケットから白い百合の花を2つ取り出した。花の根元で茎がカットされている。
『あたしは気が向いたら1人でここに花を持ってくるんだ。今度からお前の友達にも持ってくることにするよ。あのアホは面倒見てやるからガキのことよろしく頼むよってね。あんたのこと死んでも守ってくれるような奴だ。きっとガキの面倒位見てくれるんだろ?』
樹は目を涙でいっぱいにした。
『あぁ…優子なら…間違いねぇよ…』
きっと立派に育ててくれる。樹はそう確信するように声を絞り出した。
『さて、早速だ。どっかのバカに付き合ったせいで腹減っちまったよ。お前たちウチでご飯食べていきなよ。仕方ないからあたしがご馳走しよう』
あたしもだよ優子。あんたのこと、ずっとずっと大好きだよ。
どこにいてもずーっと一緒だよ。
優子は最後樹の腕の中で眠りについた。それは豹那が言うように望まない死だったかもしれない。
でもきっと、それが優子の1番望む死に方だったのだ。
樹の中ではツラい記憶として生き続けていくかもしれないが
優子の中では永遠に幸せな記憶として残るのだろう…残るのだろう…残るのだろう…
『いや~。話しすぎちまったな。今日は付き合ってくれてありがとな。今日の追悼はこれで終わりだ』
その場で解散となりそれぞれ単車に乗った者から引き上げていったが樹はまだそこから動かなかった。
まだ名残惜しい気持ちがやはりあるのだ。
誰よりも大切な親友が目の前で自分をかばって撃たれて死んだのだ。そんなすぐ立ち直れる訳はない。
静火と唯がそれを見て一緒に残った。3人はしばらく何も言わず、ただ海を眺めていた。
『ずっとそこにいるつもりかい?』
声がして3人が振り向くと豹那が1人立っていた。どうやら海を眺める3人をずっと後ろで見ていたらしい。
豹那はタバコに火をつけると歩いて向かってきた。そして樹の隣まで来るとドサッと腰を下ろした。
『ここにはさ、死んで灰になっちまったあたしのガキが砂と風になっているんだよ』
『…え?』
樹は思わず顔を見てしまった。そんな話は聞いたことがない。いや、それはそうかと思いながらも樹はリアクションに困ってしまった。静火も唯もだ。
『…まぁだからそういう訳でね、あんたの気持ちは分かるつもりだよ』
豹那はタバコをただ咥えたまま遠くの方を見つめている。
『あたしがそうなんだよ。忘れようとしても忘れられなくて、結局こんな目の前にマンション借りてまで戻って来ちまってさ。望まない死の、それを受け入れられないで生きることのその辛さって言ったらね、ひどいもんさ。未だに赤ん坊の夢にうなされる』
樹は話に聞くアイドルになるはずだったのにならなかった理由というのがそれであるらしいと理解した。
『だからさ、あんたにはね、あたしみたいになってほしくなかったんだ』
豹那はポケットから白い百合の花を2つ取り出した。花の根元で茎がカットされている。
『あたしは気が向いたら1人でここに花を持ってくるんだ。今度からお前の友達にも持ってくることにするよ。あのアホは面倒見てやるからガキのことよろしく頼むよってね。あんたのこと死んでも守ってくれるような奴だ。きっとガキの面倒位見てくれるんだろ?』
樹は目を涙でいっぱいにした。
『あぁ…優子なら…間違いねぇよ…』
きっと立派に育ててくれる。樹はそう確信するように声を絞り出した。
『さて、早速だ。どっかのバカに付き合ったせいで腹減っちまったよ。お前たちウチでご飯食べていきなよ。仕方ないからあたしがご馳走しよう』
あたしもだよ優子。あんたのこと、ずっとずっと大好きだよ。
どこにいてもずーっと一緒だよ。
優子は最後樹の腕の中で眠りについた。それは豹那が言うように望まない死だったかもしれない。
でもきっと、それが優子の1番望む死に方だったのだ。
樹の中ではツラい記憶として生き続けていくかもしれないが
優子の中では永遠に幸せな記憶として残るのだろう…残るのだろう…残るのだろう…