第156話 樹の考え

文字数 901文字

 目を覚ますとDREAMのカウンターだった。座りながら寝てしまっていたらしく毛布がかけられている。
 あぁ、飲みすぎてまた遅くまでやってしまって静火か唯がかけてくれたのか。

 もう外は明るい。明るいというより真っ昼間だ。今何時だ?
 静火と唯が店の掃除をしている。ということは2時?3時か?

 樹がぼーっとしていると唯がやっと起きたらしいことに気付き近づいてきた。

『ちょっと樹ちゃん!』

 何やら怒っている。

『あんたしっかりしなね!毎日毎日朝まで飲み続けて昨日も客相手にケンカ始めてさぁ!気持ちは分かるけどね、いつまでもこんなじゃあんた人間ダメになるよ!分かってるの!?落ちる時は早いんだよ!?あっという間だよ!?』

 1個下の唯がここまで怒っている。無理もない。ここのとこ彼女の言う通り酒一直線だ。客とケンカしたこともすでに覚えていない。それももう初めてのことではない。とにかく樹は荒れていた。

『優子…』

 樹がボソッと言うと思わず唯が顔をはたいた。

『優子さんはもういないんだよ!あんたをかばって死んだんだろ!?』

 唯が樹に手をあげるのは初めてだ。

『何が神奈川一カッコいい女だ!あんたいつも言ってたじゃんさ!樹ちゃん、あんた鬼音姫の総長でしょ!?これ以上優子さんをガッカリさせんなよ…』

 唯が涙ぐむと見ていた静火が間に入って慰めた。

『樹。まだ整理できないのは分かってるから、ゆっくり考えてくれればいいと思ってるからね』

 静火は唯の頭を優しくなでながら言うが、でもどこか感情を抑えているのが樹には分かった。

『でもあたしたちはさ、優子の最後の言葉も聞いてあげれなかったんだよ。唯の気持ちもちょっとずつでいいから考えてあげてね』

 彼女も相当悔しい気持ちがあるはずなのに気を使ってそれを見せないようにしてくれた。
 いや、気を使わせてしまった。

『あぁ、くそ…マジでお前らの言う通りだな』

 樹はタバコに火をつけた。このままじゃ死んだ優子にまで心配されたままだ。

『静火、唯。ちょっと一緒に考えてくんねーか?』

『え?』

『何をさ』

『優子の、あいつの特攻服だよ』

 樹は今考えていることを2人に話した。

 3人はすぐに準備に取りかかった。
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