第59話 敵の計画

文字数 1,053文字

 その頃病院では雪絵が目を覚ましていた。

『話してちょうだい雪絵ちゃん。何があったのかを』

 伴と龍玖は雪絵から話を聞くことにした。

『お店の準備してたら急に押しかけてきて、男が2人に女が3人で見るからにヤバい感じの人だったから帰ってくれるように言ったんだけど、絆のこと呼べって言われて断ったらあたし囲まれちゃって…それであたしがやられてからちょっとして絆が来て、あたしその辺で気を失っちゃったから何が起きたかほとんど分からないんだけど、相手はヤクザだった』

 豹那の言っていた通り動いているのは暴走族だけではないようだ。

『うっすらとだけど、耳に入ってきたのはバックにつくとかつかないとかで、あといたのはヤクザだけじゃなくて1人学ランの女がいて』

『学ランの女…』

 そのワードはもう耳にたこができる程聞いた。伴の個人的なセンスで言えば考えられないファッションだ。
 イカれた集団だとしか思えなかった。

『でも待って。相手もたったの5人だったのよね?神楽なら1人で5人位訳ないと思うのだけど』

『それが…』

 雪絵はそこで困った顔をした。

『…何?雪絵ちゃん』

『…これは言おうか迷ってたんだけど…その中に雪ノ瀬瞬ちゃんがいたの』

『なんですって?』

『どーゆー訳か分からないんだけど、あたしとは目も合わせてくれなくて…今思えば、なんか事情があったのかもしれなくて』

 伴はすぐに瞬に電話をかけ始めた。しかしやはり電源が入っていないようだった。琉花も千歌もだ。
 あの瞬がこちら側をただ裏切ってCRSに加担しているとは思えない。
 何か事情がと聞いて思い当たることがあるとするなら何か弱みを握られてしまったと考えるのが妥当だ。

 まだ断定はできないが敵はすでに色々と動いていて、あちらの計画は進んでしまっていると考えておくのがよさそうだ。

 そしてその場合

『…敵はなかなか頭がキレるということね』

 自分の所にもその内何らかのアクションがあるだろうということを伴は肝に銘じた。




 あの日のことだ。

『…はい!clubKというお店です!至急お願いします!』

 瞬は携帯を取られていたので連絡手段はないし誰の番号も分からなかった。

 だからあの後すぐトイレに行くフリをして公衆電話で119番通報をしていた。

(ごめんなさい…どうか、無事でいて…)

 逃げることはできない。家にも帰らせてもらえない。自分が逃げれば3人がどうなるか分からない。
 とにかく3人の安否、居場所を一刻も早く知りたい瞬は鷹爪たちの言いなりになるしかなかった。

(暁さん…あたし、どうすれば…)
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