第90話 走り出す少女たち
文字数 1,551文字
今日は、確かもう土曜日。
電話が鳴っている。
多分掠だろう。燃と数はやられてしまったらしいから。
珠凛ならメッセージを送ってくるだろうし綺夜羅は当分入院だから、こんな時間にこんな長々とかけてくるのはどう考えても掠しかいない。
2人の病院にも行けてないし、ここ何日か学校も行ってないし連絡も返してないから、なんだかもうどうしたらいいのかも分からないし起き上がる気力もない。
このままずっとバックレてたい。
旋のことはみんなが気遣っていた。
しばらくそっとしておこうということになっていたからみんな無理に連絡したりしなかった。
だが燃と数がやられ綺夜羅が病院から消えてしまうと、掠から連絡がたて続けに来るようになっていた。
それでも旋は電話に出なかった。もちろん旋は綺夜羅が病院から脱走したことなど知らない。
この日は最近の中でも断トツで1番しつこかった。
だから旋も思わず携帯の画面に目を向けるとそれが何故なのか分かった。
掠じゃない。
『…え?』
電話をこれでもかという程鳴らしていたのは掠ではなく、綺夜羅だった。
『綺夜羅…』
旋は咄嗟に通話を押してしまった。
『…はい…』
『おー、やっと出たか引きこもり』
『…どうしたの?あんた平気なの?』
『どーだっていーんだよ、んなことは。いいか、めぐ。忙しいからよ、1回しか言わねぇからよく聞けよ』
『…なによ…』
『お前の先輩。あいつは嘘つきだ』
『…どーゆーこと?』
『あいつ言ってたろ?お前らにもう2度と目の前に現れるなとか、もう関係ねぇんだとか。あれ、全部本心じゃねぇらしいぞ。燃が数に言ってたらしい』
『燃が?…それ、本当なの?』
『バーカ。あたしは今そんなことに嘘なんてついてる暇なんてねーんだ。だからめぐ、お前がどうするかはお前が決めろ。あいつの本心を引きずり出せるのはオメーや珠凛や樹さんだけなんだからよ』
『え?…』
本当にそうなのだろうか。
旋にはそんな自信などなかった。
『じゃあ、そういうことだからよ。もう切んぞ』
『ねぇ!ちょっと待ってよ綺夜羅!あたしどうしたらいいの?そんなこと言われても、あたし自分に自信がないの。どうしたらいいか分かんないよ』
『…じゃあな』
綺夜羅はさっさと電話を切ってしまった。
『綺夜羅…』
旋はベッドに腰を下ろし溜め息をついてしまった。
燃が言っていたことなら、信じられる気はする。でも、自分の目で見た優子やその言葉がやっぱりまず頭に浮かんでしまう。
旋は机の上の写真立てに目をやった。
そこには小学5年生の旋と珠凛と、高校3年生になったばかりの姉の優子が3人で仲良く笑っていた。
『お姉ちゃん…あたし、どうしたらいい?教えてよ…』
その横にもう1つ写真立てが伏せてあったのを旋は立てて2つを並べた。
その中にいるのは中学1年生の旋と珠凛と中学3年の白桐優子だった。
『…あれ?』
遠くの方で音がする。
これは、自分たちならまず間違わない。綺夜羅のCBRだ。相当飛ばして走っているのが分かる。
『…え?』
いや、そうではない。そもそも彼女は病院で入院しているはずでもうすぐ寝る時間でなければおかしいのだ。
『綺夜羅…あんた、どうするつもりなの?』
答えは分かっている。
まず数と燃のカタキ討ちしかない。
みんなに止められるのが分かっているのでもちろん1人行動だろう。
顔の骨はまだ治りきってないはずだ。
『…なんで、あんたはそうやっていつも無茶苦茶なのかな?』
旋は笑いたいのか泣きたいのか、眉を八の字にして肩を落として、でも口元を緩める。
『でも、楽しい…いつもワクワクしてる。あんたもあたしにとって本当に大切な人』
行こう。今日も。
いつもみたいに。
だって早く行かないと、あの子が負けちゃうかもしれないから。
旋は急いで掠に電話をかけた。
電話が鳴っている。
多分掠だろう。燃と数はやられてしまったらしいから。
珠凛ならメッセージを送ってくるだろうし綺夜羅は当分入院だから、こんな時間にこんな長々とかけてくるのはどう考えても掠しかいない。
2人の病院にも行けてないし、ここ何日か学校も行ってないし連絡も返してないから、なんだかもうどうしたらいいのかも分からないし起き上がる気力もない。
このままずっとバックレてたい。
旋のことはみんなが気遣っていた。
しばらくそっとしておこうということになっていたからみんな無理に連絡したりしなかった。
だが燃と数がやられ綺夜羅が病院から消えてしまうと、掠から連絡がたて続けに来るようになっていた。
それでも旋は電話に出なかった。もちろん旋は綺夜羅が病院から脱走したことなど知らない。
この日は最近の中でも断トツで1番しつこかった。
だから旋も思わず携帯の画面に目を向けるとそれが何故なのか分かった。
掠じゃない。
『…え?』
電話をこれでもかという程鳴らしていたのは掠ではなく、綺夜羅だった。
『綺夜羅…』
旋は咄嗟に通話を押してしまった。
『…はい…』
『おー、やっと出たか引きこもり』
『…どうしたの?あんた平気なの?』
『どーだっていーんだよ、んなことは。いいか、めぐ。忙しいからよ、1回しか言わねぇからよく聞けよ』
『…なによ…』
『お前の先輩。あいつは嘘つきだ』
『…どーゆーこと?』
『あいつ言ってたろ?お前らにもう2度と目の前に現れるなとか、もう関係ねぇんだとか。あれ、全部本心じゃねぇらしいぞ。燃が数に言ってたらしい』
『燃が?…それ、本当なの?』
『バーカ。あたしは今そんなことに嘘なんてついてる暇なんてねーんだ。だからめぐ、お前がどうするかはお前が決めろ。あいつの本心を引きずり出せるのはオメーや珠凛や樹さんだけなんだからよ』
『え?…』
本当にそうなのだろうか。
旋にはそんな自信などなかった。
『じゃあ、そういうことだからよ。もう切んぞ』
『ねぇ!ちょっと待ってよ綺夜羅!あたしどうしたらいいの?そんなこと言われても、あたし自分に自信がないの。どうしたらいいか分かんないよ』
『…じゃあな』
綺夜羅はさっさと電話を切ってしまった。
『綺夜羅…』
旋はベッドに腰を下ろし溜め息をついてしまった。
燃が言っていたことなら、信じられる気はする。でも、自分の目で見た優子やその言葉がやっぱりまず頭に浮かんでしまう。
旋は机の上の写真立てに目をやった。
そこには小学5年生の旋と珠凛と、高校3年生になったばかりの姉の優子が3人で仲良く笑っていた。
『お姉ちゃん…あたし、どうしたらいい?教えてよ…』
その横にもう1つ写真立てが伏せてあったのを旋は立てて2つを並べた。
その中にいるのは中学1年生の旋と珠凛と中学3年の白桐優子だった。
『…あれ?』
遠くの方で音がする。
これは、自分たちならまず間違わない。綺夜羅のCBRだ。相当飛ばして走っているのが分かる。
『…え?』
いや、そうではない。そもそも彼女は病院で入院しているはずでもうすぐ寝る時間でなければおかしいのだ。
『綺夜羅…あんた、どうするつもりなの?』
答えは分かっている。
まず数と燃のカタキ討ちしかない。
みんなに止められるのが分かっているのでもちろん1人行動だろう。
顔の骨はまだ治りきってないはずだ。
『…なんで、あんたはそうやっていつも無茶苦茶なのかな?』
旋は笑いたいのか泣きたいのか、眉を八の字にして肩を落として、でも口元を緩める。
『でも、楽しい…いつもワクワクしてる。あんたもあたしにとって本当に大切な人』
行こう。今日も。
いつもみたいに。
だって早く行かないと、あの子が負けちゃうかもしれないから。
旋は急いで掠に電話をかけた。