第93話 適任の仕事

文字数 707文字

 豹那は今日も十分にケアが行き届いた銀髪の綺麗な髪を風に揺らし、トップモデルのように歩いていった。

『さて、愛羽。そもそもお前には適任の仕事があるのさ』

『へ?』

 愛羽はなんだか分からないといったとぼけた顔をした。

『あいつの相手さ』

 豹那があごで促した方を見ると1人の人物が目に入って愛羽はまばたきができなかった。

 そこには変わり果てた雪ノ瀬瞬がいた。

 東京連合のつなぎに身を包み、ただ立ち尽くしている。
 だがその目に輝きはなくボーッとしていて表情も死んだような顔をしている。

 覇女とCRAZYVENUSにREDQUEENの戦いには瞬も参加させられていた。

 しかもわざわざドーピングを使わされてだ。

 神楽のチームの人間と無理矢理戦わされて瞬は泣きながら覇女の人間をなぎ倒していた。

 雪絵からその連絡を受けていたから瞬がいるであろうことは予想していた。

『瞬ちゃん…』

『あのバカの目を開けてやれるのはお前しかいないだろ?』

『そんな!相手って、愛羽と瞬さんを戦わせようって言うの!?あたしは反対だよ!無理に決まってるでしょ』

 蓮華が横から抗議した。

『じゃあ他に誰がいるって言うんだい?蓮華、お前は下がってな。お前はお前のできることを探すんだ』

『そんな…』

 あの愛羽に友達と殴り合わせるなんて到底考えられない。

『痛いのはみんな一緒さ。殴られる方も殴る方もね。だけど守りたいなら、あたしたちは戦わなきゃならないんだよ』

 愛羽は瞬のことをじっと見つめ、豹那の言葉を聞き終えると覚悟を決めた。

『分かった。あたし行ってくる』

『…頼んだよ』

 愛羽はうなずくと走りだした。

『愛羽…』

 蓮華は愛羽の走っていく後ろ姿を不安な気持ちで見ていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み