第55話 神楽倒れる
文字数 1,815文字
神楽は危うくパンチをもらってしまう所をただならぬ危険を感じギリギリでかわした。
目の前をかすめた瞬間ブォッと風のうなる音を感じた。
凄まじい威力なのは言うまでもなく、これはそう易々とくらえたものではない。
とても悪いニュースだ。間違いなく瞬はドーピングのステロイドを打っている。神楽は確信した。
(どうやらこのバカ、本当に操り人形みたいだねぇ。やれやれ、一体どーしたってんだか)
鷹爪を討つにはなんとか瞬を退けるしかないが、1度戦ったことがある神楽はため息をつきたくなった。
(さて、どうしたもんか。こりゃ、あたしもただじゃ済まないかもね。くそっ)
瞬の攻撃をなんとかよけながら反撃の瞬間を待つ。1発1発が致命傷になりかねない以上それしか策はない。
空気をえぐるような音速のパンチが次々に襲いかかる中、神楽は紙一重でかわしていく。
だがこれでは攻撃をよけるので精一杯だ。
瞬は続けて向かってくる。鋭い蹴りが放たれ神楽はテーブルを飛び越えてよける。
(よけるので精一杯だって?)
いや、そうではない。
東京連合総會長雪ノ瀬瞬の迫力はこんなものではなかったはずだ。おそらく本気でかかってきていない。
そうやって装っているだけでさりげなく手を抜いているのだ。やはり瞬は戦いたくないらしい。
しかしそんな様子を見て鷹爪が目を細めた。
『先生、まさかとは思いますけど手ぇ抜いたりしてませんよねぇ?いいのかな?あんたがいいってんなら今すぐにでもやらせるぜ』
瞬が怯えている。神楽を見て歯を食いしばると叫びだした。
『うわぁ~!!』
迷いを振りきるように大声をあげると突然それまでと変わって積極的にしかけてきた。
神楽はその重い攻撃を叩きつけられていく。
『そうそう。それでいいんだ。東京連合の総會長対横浜覇女の総長のタイマンだ。見てて面白くなきゃ意味がない』
神楽は一方的にやられ始めた。もちろん手も足も出ないのだが、弱みを握られ脅されながらも尚攻撃にブレーキをかけている瞬の姿を見て手を出せなくなってしまった。
(くそっ、逆にやりづらいんだよ!)
『おい!何があったんだ雪ノ瀬!説明しろ!』
言ってはいけないと知りながらも瞬は助けを求めたくなってしまった。なんとか、なんとか伝えられれば…
その様子を見て鷹爪が言った。
『先生、お助けしましょう』
振り返って瞬も神楽も凍りついた。鷹爪の手には拳銃が握られ、その銃口をこちらに向けていたからだ。
残念ながら偽物ではないのだろう。それを2人が理解するのに1秒もかからなかった。
『やめて!撃たないで!』
瞬は神楽の前に立つが鷹爪はその手をフロアの天井中央にあるシャンデリアに向けた。
『さぁ上手く撃ち落とせるかな?』
その真下には雪絵が倒れている。あんな大きなシャンデリアが落ちたらただのケガでは済まされない。
『やめろ!』
神楽は叫ぶが鷹爪は構わず引き金を引いた。
「パァァン!!」
聞いたこともない凶暴な破裂音が響くと同時に神楽は走りだし雪絵の方へ向かった。
弾はシャンデリアの端をわずかにかすめ灯りの1つが砕けた。
「パァァン!!」
2発目は本体が吊り下がっている金具に命中しシャンデリアはバランスが崩れ今にも落下しそうになった。
『雪絵!』
神楽は雪絵の所にたどり着いたが雪絵はまだ気を失っている。シャンデリアの真下から動かさなければならない。
だがそれを待たずに続けて破裂音が響くと今度は見事吊り金具を撃ち抜いた。
『やめてぇぇ!!』
「ガシャアン!!」
瞬の目の前で鉄の塊はあまりにも呆気なく落ち、あまりにも無惨に飛び散った。
神楽はシャンデリアの下敷きになり雪絵をかばうように倒れていた。
その体はピクリとも動かず、代わりにおびただしい量の鮮血が彼女の周りに流れ出している。
『神楽!!』
思わず駆け寄るとシャンデリアをなんとかどかしたが神楽は意識がなかった。
『ねぇ!しっかりして!起きて!』
ダメだ。声をかけても体を揺さぶっても目は覚めない。反応も見えない。
瞬は震えていた。
『ひどい…ここまでするなんて…あたしは聞いてない!』
『ははは、甘いな。ここまでやって当たり前だろ?大先生』
瞬は涙を浮かべ鷹爪をにらんだ。
『へっ、怖いじゃないか。そんな目で見るなよ。いいのか?あの3人がどうなっても』
やりきれない怒りと悲しみをこらえ、瞬は鷹爪たちと店を出た。
風雅が店で神楽と雪絵を見つけたのはそのすぐ後のことだった。
目の前をかすめた瞬間ブォッと風のうなる音を感じた。
凄まじい威力なのは言うまでもなく、これはそう易々とくらえたものではない。
とても悪いニュースだ。間違いなく瞬はドーピングのステロイドを打っている。神楽は確信した。
(どうやらこのバカ、本当に操り人形みたいだねぇ。やれやれ、一体どーしたってんだか)
鷹爪を討つにはなんとか瞬を退けるしかないが、1度戦ったことがある神楽はため息をつきたくなった。
(さて、どうしたもんか。こりゃ、あたしもただじゃ済まないかもね。くそっ)
瞬の攻撃をなんとかよけながら反撃の瞬間を待つ。1発1発が致命傷になりかねない以上それしか策はない。
空気をえぐるような音速のパンチが次々に襲いかかる中、神楽は紙一重でかわしていく。
だがこれでは攻撃をよけるので精一杯だ。
瞬は続けて向かってくる。鋭い蹴りが放たれ神楽はテーブルを飛び越えてよける。
(よけるので精一杯だって?)
いや、そうではない。
東京連合総會長雪ノ瀬瞬の迫力はこんなものではなかったはずだ。おそらく本気でかかってきていない。
そうやって装っているだけでさりげなく手を抜いているのだ。やはり瞬は戦いたくないらしい。
しかしそんな様子を見て鷹爪が目を細めた。
『先生、まさかとは思いますけど手ぇ抜いたりしてませんよねぇ?いいのかな?あんたがいいってんなら今すぐにでもやらせるぜ』
瞬が怯えている。神楽を見て歯を食いしばると叫びだした。
『うわぁ~!!』
迷いを振りきるように大声をあげると突然それまでと変わって積極的にしかけてきた。
神楽はその重い攻撃を叩きつけられていく。
『そうそう。それでいいんだ。東京連合の総會長対横浜覇女の総長のタイマンだ。見てて面白くなきゃ意味がない』
神楽は一方的にやられ始めた。もちろん手も足も出ないのだが、弱みを握られ脅されながらも尚攻撃にブレーキをかけている瞬の姿を見て手を出せなくなってしまった。
(くそっ、逆にやりづらいんだよ!)
『おい!何があったんだ雪ノ瀬!説明しろ!』
言ってはいけないと知りながらも瞬は助けを求めたくなってしまった。なんとか、なんとか伝えられれば…
その様子を見て鷹爪が言った。
『先生、お助けしましょう』
振り返って瞬も神楽も凍りついた。鷹爪の手には拳銃が握られ、その銃口をこちらに向けていたからだ。
残念ながら偽物ではないのだろう。それを2人が理解するのに1秒もかからなかった。
『やめて!撃たないで!』
瞬は神楽の前に立つが鷹爪はその手をフロアの天井中央にあるシャンデリアに向けた。
『さぁ上手く撃ち落とせるかな?』
その真下には雪絵が倒れている。あんな大きなシャンデリアが落ちたらただのケガでは済まされない。
『やめろ!』
神楽は叫ぶが鷹爪は構わず引き金を引いた。
「パァァン!!」
聞いたこともない凶暴な破裂音が響くと同時に神楽は走りだし雪絵の方へ向かった。
弾はシャンデリアの端をわずかにかすめ灯りの1つが砕けた。
「パァァン!!」
2発目は本体が吊り下がっている金具に命中しシャンデリアはバランスが崩れ今にも落下しそうになった。
『雪絵!』
神楽は雪絵の所にたどり着いたが雪絵はまだ気を失っている。シャンデリアの真下から動かさなければならない。
だがそれを待たずに続けて破裂音が響くと今度は見事吊り金具を撃ち抜いた。
『やめてぇぇ!!』
「ガシャアン!!」
瞬の目の前で鉄の塊はあまりにも呆気なく落ち、あまりにも無惨に飛び散った。
神楽はシャンデリアの下敷きになり雪絵をかばうように倒れていた。
その体はピクリとも動かず、代わりにおびただしい量の鮮血が彼女の周りに流れ出している。
『神楽!!』
思わず駆け寄るとシャンデリアをなんとかどかしたが神楽は意識がなかった。
『ねぇ!しっかりして!起きて!』
ダメだ。声をかけても体を揺さぶっても目は覚めない。反応も見えない。
瞬は震えていた。
『ひどい…ここまでするなんて…あたしは聞いてない!』
『ははは、甘いな。ここまでやって当たり前だろ?大先生』
瞬は涙を浮かべ鷹爪をにらんだ。
『へっ、怖いじゃないか。そんな目で見るなよ。いいのか?あの3人がどうなっても』
やりきれない怒りと悲しみをこらえ、瞬は鷹爪たちと店を出た。
風雅が店で神楽と雪絵を見つけたのはそのすぐ後のことだった。