第108話 &1
文字数 2,154文字
『蓮華。これからもしかしたらまた1人でケンカしたりしなきゃいけない時があるかもしれないけど、例えばこれは勝てないとかなんとか切り抜けなきゃいけないって時には覚えておいてほしいことがある』
『うん。何?』
『蓮華がもし相手の顔殴るとしたらまずどこを狙う?』
『ん~。頬かなぁ』
『そう。これはもうほとんどの人のイメージで人の顔殴ると言えばまず頬の辺りを狙う。だけど頬の骨ってのは意外と頑丈で顔の中でも殴られても1番痛くないとこなんだよ』
『…そうなの?…そうかな?』
『まぁ、殴られりゃ痛いってのは変わんねぇけどな。でも頬なら殴られてもすぐ反撃して打ち返すことができる。自分で軽く頬殴ってみな』
『うん…』
言われて蓮華は自分の拳で自分の頬を叩いた。
『じゃあ次はそれと同じ位の強さで自分の鼻殴ってみな』
『えっ!?鼻!?』
言われて蓮華は鼻を叩いた。
『っ…痛い』
『ははは。じゃあ次は目だ』
渋々蓮華はまた叩く。
『痛いよ!』
『そう。目や鼻は意外と痛い。いきなり殴られると思わず距離を取ってしまう位な。だから是非覚えといてくれ。どんな場面で役に立つか分からないけど、いきがってるだけの不良は意外と知らない。いつか役に立ったって聞かせてくれよ』
蓮華は麗桜とのそんなやり取りを思い出していた。
(先手あるのみ。勝負は一瞬。鼻の頭にぶちこんでやる!)
蓮華はインターホンを押すと出てくるのを待った。心臓がバクバクするのを感じながら呼吸を整える。
するとカギが開きドアが一気に開け放たれた。
『なんだ、もう交代か~?』
やはり相手は完全に油断していた。
ドアが開き十分腕が入る程にもなった時、顔が見えた瞬間。まだ熊小路が「はっ?」と言葉を出すか出さないかという所で、その隙間からおもいきりのいいパンチをねじこんだ。
『ぶっ!』
見事鼻にクリーンヒットすると熊小路は思わず鼻を押さえて後ろずさった。
(いける!)
蓮華はその好機を見逃さなかった。
『でぁ~!!』
一気に飛びかかると馬乗りになって顔をボコボコに殴りつけた。
熊小路がやがて抵抗しなくなりぐったりすると辺りを見回しながら呼吸を整えた。
『はぁっ、はぁっ、どうだ!』
すると琉花たちが唖然として自分を見ていた。
『蓮華、ちゃん?』
『琉花ちゃん!千歌さん!助けに来たよ!』
琉花たちもまさか味方の助けが来ると思っていなかったのでいきなり争う物音が聞こえて何事かと様子を見に来たが驚きを隠せなかった。
『はぁ~、ビックリした。何かと思ったよ。まさか蓮華ちゃんが来るなんて』
『みんなで来てくれたのか?』
『ううん。あたしと蘭菜の2人だよ』
『あら、ちょっとあたしたち申し訳ない2人じゃん』
『何言ってんの!無事で良かった。早く逃げよ!今大変なんだから。とりあえずみんなの手錠外さなきゃ。カギどこにあるの?』
後は脱出するだけ。そう思っていた時、冬が叫んだ。
『危ない!』
『え?』
蓮華が気づいた時には熊小路が後ろから腕を振り下ろしていた。
蓮華は床に打ちのめされ転がってしまった。
『てめぇ、くそ…不意討ちとはよくもやってくれやがったなぁ。ガキぃ…』
形成が悪いと見て熊小路は気絶したフリをしていたらしい。
『てめぇは人質なんかにゃしねぇぞ。ぶっ殺して山に捨ててやる。くそがぁ…』
蓮華はガラス製の灰皿で頭をひっぱたかれた。激痛に身をよじりまだ立ち上がれない。
熊小路は続けて踏みつけ蹴りを入れた。
『うぅ!』
『この野郎舐めやがって。このまま内臓飛び出るまで踏み潰してやる!』
熊小路は容赦なく踏みつける足に力を入れた。
『あ"ぁ…』
『やめて!』
苦しそうな蓮華を見ていられず琉花が体だけで立ち向かうが蹴り飛ばされ転がった。
足に手錠されていては体当たりさえさせてもらえない。
『邪魔すんじゃねぇ!もうキレたぞ!あたしの独断だ!都河泪には事故にあってもらう!てめぇらのせいだからな!』
なんてことだ。自分の詰めが甘いせいで最悪なことになってしまう。
蓮華は頭がまだボーッとする中で無事救出できなかったことを悔やんだ。
豹那がこれはやりたいかやりたくないかじゃなくてできるかできないかだと言った言葉が頭の奥で繰り返された。
だがその時、蓮華の内臓を全て飛び出させようとしていた熊小路の足が急に軽くなった。
ズダン!という音と共に熊小路が蹴り倒された。真っ逆さまに頭から床に叩きつけられると今度はもう演技ではなく本当に起き上がらなかった。
だが蘭菜じゃない。
そこに立っていたのは霞ヶ﨑燎だった。
『相変わらず趣味がワリー奴だよ。前からコイツ気に入らなかったんだ。ザマーミロ…』
ボコボコの顔で霞ヶ﨑は笑った。
『あんた…燎、何やってんの?』
『えっ!?あったまきたからやめてきてやりましたよ。ついでに届けもんしに来ました』
『届けもん?』
そう言って霞ヶ﨑はカギを取り出した。
『だってこれがないと七条さんたち逃げられないから』
『あんた…』
まだ何がどうなっているのか分からない琉花に燎は笑いかけた。
『あれぇ?都河さん点滴替えてないじゃないすか。ったくもー、オレがいねーとなんもできねーんだから』
燎は手際よく点滴を取り替えると言った。
『車あるから行きましょう。都河さん連れて人質は無事だって、雪ノ瀬さんに教えてあげましょう!』
『うん。何?』
『蓮華がもし相手の顔殴るとしたらまずどこを狙う?』
『ん~。頬かなぁ』
『そう。これはもうほとんどの人のイメージで人の顔殴ると言えばまず頬の辺りを狙う。だけど頬の骨ってのは意外と頑丈で顔の中でも殴られても1番痛くないとこなんだよ』
『…そうなの?…そうかな?』
『まぁ、殴られりゃ痛いってのは変わんねぇけどな。でも頬なら殴られてもすぐ反撃して打ち返すことができる。自分で軽く頬殴ってみな』
『うん…』
言われて蓮華は自分の拳で自分の頬を叩いた。
『じゃあ次はそれと同じ位の強さで自分の鼻殴ってみな』
『えっ!?鼻!?』
言われて蓮華は鼻を叩いた。
『っ…痛い』
『ははは。じゃあ次は目だ』
渋々蓮華はまた叩く。
『痛いよ!』
『そう。目や鼻は意外と痛い。いきなり殴られると思わず距離を取ってしまう位な。だから是非覚えといてくれ。どんな場面で役に立つか分からないけど、いきがってるだけの不良は意外と知らない。いつか役に立ったって聞かせてくれよ』
蓮華は麗桜とのそんなやり取りを思い出していた。
(先手あるのみ。勝負は一瞬。鼻の頭にぶちこんでやる!)
蓮華はインターホンを押すと出てくるのを待った。心臓がバクバクするのを感じながら呼吸を整える。
するとカギが開きドアが一気に開け放たれた。
『なんだ、もう交代か~?』
やはり相手は完全に油断していた。
ドアが開き十分腕が入る程にもなった時、顔が見えた瞬間。まだ熊小路が「はっ?」と言葉を出すか出さないかという所で、その隙間からおもいきりのいいパンチをねじこんだ。
『ぶっ!』
見事鼻にクリーンヒットすると熊小路は思わず鼻を押さえて後ろずさった。
(いける!)
蓮華はその好機を見逃さなかった。
『でぁ~!!』
一気に飛びかかると馬乗りになって顔をボコボコに殴りつけた。
熊小路がやがて抵抗しなくなりぐったりすると辺りを見回しながら呼吸を整えた。
『はぁっ、はぁっ、どうだ!』
すると琉花たちが唖然として自分を見ていた。
『蓮華、ちゃん?』
『琉花ちゃん!千歌さん!助けに来たよ!』
琉花たちもまさか味方の助けが来ると思っていなかったのでいきなり争う物音が聞こえて何事かと様子を見に来たが驚きを隠せなかった。
『はぁ~、ビックリした。何かと思ったよ。まさか蓮華ちゃんが来るなんて』
『みんなで来てくれたのか?』
『ううん。あたしと蘭菜の2人だよ』
『あら、ちょっとあたしたち申し訳ない2人じゃん』
『何言ってんの!無事で良かった。早く逃げよ!今大変なんだから。とりあえずみんなの手錠外さなきゃ。カギどこにあるの?』
後は脱出するだけ。そう思っていた時、冬が叫んだ。
『危ない!』
『え?』
蓮華が気づいた時には熊小路が後ろから腕を振り下ろしていた。
蓮華は床に打ちのめされ転がってしまった。
『てめぇ、くそ…不意討ちとはよくもやってくれやがったなぁ。ガキぃ…』
形成が悪いと見て熊小路は気絶したフリをしていたらしい。
『てめぇは人質なんかにゃしねぇぞ。ぶっ殺して山に捨ててやる。くそがぁ…』
蓮華はガラス製の灰皿で頭をひっぱたかれた。激痛に身をよじりまだ立ち上がれない。
熊小路は続けて踏みつけ蹴りを入れた。
『うぅ!』
『この野郎舐めやがって。このまま内臓飛び出るまで踏み潰してやる!』
熊小路は容赦なく踏みつける足に力を入れた。
『あ"ぁ…』
『やめて!』
苦しそうな蓮華を見ていられず琉花が体だけで立ち向かうが蹴り飛ばされ転がった。
足に手錠されていては体当たりさえさせてもらえない。
『邪魔すんじゃねぇ!もうキレたぞ!あたしの独断だ!都河泪には事故にあってもらう!てめぇらのせいだからな!』
なんてことだ。自分の詰めが甘いせいで最悪なことになってしまう。
蓮華は頭がまだボーッとする中で無事救出できなかったことを悔やんだ。
豹那がこれはやりたいかやりたくないかじゃなくてできるかできないかだと言った言葉が頭の奥で繰り返された。
だがその時、蓮華の内臓を全て飛び出させようとしていた熊小路の足が急に軽くなった。
ズダン!という音と共に熊小路が蹴り倒された。真っ逆さまに頭から床に叩きつけられると今度はもう演技ではなく本当に起き上がらなかった。
だが蘭菜じゃない。
そこに立っていたのは霞ヶ﨑燎だった。
『相変わらず趣味がワリー奴だよ。前からコイツ気に入らなかったんだ。ザマーミロ…』
ボコボコの顔で霞ヶ﨑は笑った。
『あんた…燎、何やってんの?』
『えっ!?あったまきたからやめてきてやりましたよ。ついでに届けもんしに来ました』
『届けもん?』
そう言って霞ヶ﨑はカギを取り出した。
『だってこれがないと七条さんたち逃げられないから』
『あんた…』
まだ何がどうなっているのか分からない琉花に燎は笑いかけた。
『あれぇ?都河さん点滴替えてないじゃないすか。ったくもー、オレがいねーとなんもできねーんだから』
燎は手際よく点滴を取り替えると言った。
『車あるから行きましょう。都河さん連れて人質は無事だって、雪ノ瀬さんに教えてあげましょう!』