第37話 溜め息が出る
文字数 2,025文字
『おー痛てててて。あのアメリカ女、バカ力で殴りやがってチクショウ』
とりあえず移動した公園に着くなり綺夜羅はベンチの1つに横になってしまった。まだ痛むらしく元気がない。
『何よ綺夜羅、大丈夫?そんなに痛かったの?』
掠がそれを見て綺夜羅の顔を覗きこむ。半分冷やかしのつもりだったのだが直接見て驚いた。
『…え?ねぇ、あんたこれ大丈夫?』
『いや、まぁ痛ぇけど大丈夫だよ』
綺夜羅の顔はそこだけ不気味に腫れ上がっている。その腫れ方はひどく、特殊メイクでもしたかのように見える。
『こんな腫れてたの!?色もなんか赤黒いし本当に大丈夫?骨でも折れてんじゃないの?』
「ケンカで顔の骨折れる」は、そうそう聞かない。いや、それが女同士なら尚更まず聞かない。
『あ~?ちょっと放っといてくれよ。だんだん痛くなってきた』
そのやり取りを見て今度は蘭菜が綺夜羅のケガを見た。
『…病院に行った方がいいわ』
『な、なんだよ急に』
蘭菜は綺夜羅の顔の腫れた所を触った。その瞬間綺夜羅が叫び飛び上がった。
『いいいっってぇぇぇぇ~!!なっ!何すんだよ、痛ぇじゃねぇか!』
『…私、今軽く触っただけよ?…やっぱり病院に行った方がいい。それ、骨までいってるのよ、きっと』
『い、いーよ病院なんて。触わんねーで放っときゃすぐ治るよ』
『ダメよ。とりあえず診るだけ診てもらった方がいいわよ。連れてってあげるから行きましょう』
『いや、マジでいいって』
『ダーメ。ほら、行くわよ』
『おい愛羽、コイツなんとかしてくれよ』
綺夜羅は愛羽に助けを求めたが言うことは一緒だ。
『綺夜羅ちゃん、行った方がいいと思うよ』
『あんた行きなって。その顔妖怪みたいよ?』
『お、それならせっかくだから頭も見てもらえよ』
愛羽に続いて掠と数が言うと綺夜羅は当然怒った。
『てめぇらぁ!はぁうっ、痛ぇ~…』
もはや少し大きな声を出すのも痛いらしい。これはいよいよ本当に病院に行った方がよさそうだ。
『ほら、行くわよ。私の後ろ乗せてあげるから』
結局蘭菜から綺夜羅は逃れられず、掠が近くの病院を案内する為ついていった。
『あいつ、そんなに顔やられてたか?』
言いながら数は思い返したがそんなことはなかったような気がした。
『2発だったと思うよ。あの優子さんって人と後から来た外人の人から1発ずつ。それ以外は見てないよ』
燃の言うとおり綺夜羅がくらったのは2発だけだ。
『たった2発であいつが病院かよ。今までそんなことあったか?あいつぁ今年厄年だな』
もちろん燃も旋も珠凛もそんな記憶はなかった。綺夜羅と言えば頑丈なイメージしかない。
『ねぇねぇ、ところでみんなは何であんなとこにいたの?』
愛羽はそもそもの話をした。
『あぁ…あのリーゼントの人ね、あたしと珠凛の先輩なんだ』
旋は自分が話さなければと前に出た。
『へぇ~…えっ!?それってあの優子さんって人?』
『う、うん。そういえば愛羽ちゃんたちこそ、どうして厚央に?』
『いや~それがあたしたち、その優子さんって人を探してたんだよ』
愛羽たちと旋たちは互いに樹のことや、旋と珠凛と優子のこと、今日あったことを話し合った。
この巡り合わせが偶然やマグレとは決して思えない話だった。
『まさか2人の先輩が樹さんの親友で同じ日に訪ねに来たなんてね。こんな偶然、あんのね』
大阪の時といい、この神がかった偶然に蓮華はもはや恐ろしくなった。
『でもよ、来てみりゃこれか。聞くのと見るのとこうも違うとはな。本当にあれが本物だったのか?』
玲璃はタバコを吹かしながらぼやいた。
『本人に間違いはないけど…はぁ…俺、樹さんになんて言えばいいんだよ。なんも言えねぇよ…』
麗桜は肩を落とすばかりだった。
『もういいじゃねぇかよ。別に頼まれた訳じゃねーんだし放っときゃーよ』
『もう、玲ちゃん聞いてたでしょ?このままだとあの人たちCRSが夜叉猫も悪修羅嬢も覇女も、それに綺夜羅ちゃんたちだって狙われることになっちゃうんだよ?』
『分かってるよ。ジョーダンだよ!だけどよ、そりゃどう考えても無謀だぜ。神奈川4大暴走族といや東京連合に勝ったチームだ。いくらなんでも調子乗りすぎだろ。負けるはずがねーよ。返り討ちに合って終わりだろ』
『だからぁ、そうなるのもダメでしょって。めぐちゃんと珠凛ちゃんの先輩で樹さんの親友なんだよ?なんとかしなきゃダメでしょ?』
『…どーやってだよ』
『だからそれを…考えなきゃ行けないんじゃん』
とは言うものの、すぐに思いつきそうなこともなかった。
『あのさ、樹先輩に会えないかな?あたし話してみたいんだけど。どうすればいいか、優子ちゃんのこと1番知ってる人に聞いてみたい』
そう言い出したのは旋だった。麗桜は決して気は進まなかったが確かにこの2人と引き合わせてあげることは双方に意味のあることかもしれない。
ただその際にはとても申し訳ない報告をしなければならない。
麗桜はまた溜め息をついた。
『じゃあ、行ってみるかい?』
とりあえず移動した公園に着くなり綺夜羅はベンチの1つに横になってしまった。まだ痛むらしく元気がない。
『何よ綺夜羅、大丈夫?そんなに痛かったの?』
掠がそれを見て綺夜羅の顔を覗きこむ。半分冷やかしのつもりだったのだが直接見て驚いた。
『…え?ねぇ、あんたこれ大丈夫?』
『いや、まぁ痛ぇけど大丈夫だよ』
綺夜羅の顔はそこだけ不気味に腫れ上がっている。その腫れ方はひどく、特殊メイクでもしたかのように見える。
『こんな腫れてたの!?色もなんか赤黒いし本当に大丈夫?骨でも折れてんじゃないの?』
「ケンカで顔の骨折れる」は、そうそう聞かない。いや、それが女同士なら尚更まず聞かない。
『あ~?ちょっと放っといてくれよ。だんだん痛くなってきた』
そのやり取りを見て今度は蘭菜が綺夜羅のケガを見た。
『…病院に行った方がいいわ』
『な、なんだよ急に』
蘭菜は綺夜羅の顔の腫れた所を触った。その瞬間綺夜羅が叫び飛び上がった。
『いいいっってぇぇぇぇ~!!なっ!何すんだよ、痛ぇじゃねぇか!』
『…私、今軽く触っただけよ?…やっぱり病院に行った方がいい。それ、骨までいってるのよ、きっと』
『い、いーよ病院なんて。触わんねーで放っときゃすぐ治るよ』
『ダメよ。とりあえず診るだけ診てもらった方がいいわよ。連れてってあげるから行きましょう』
『いや、マジでいいって』
『ダーメ。ほら、行くわよ』
『おい愛羽、コイツなんとかしてくれよ』
綺夜羅は愛羽に助けを求めたが言うことは一緒だ。
『綺夜羅ちゃん、行った方がいいと思うよ』
『あんた行きなって。その顔妖怪みたいよ?』
『お、それならせっかくだから頭も見てもらえよ』
愛羽に続いて掠と数が言うと綺夜羅は当然怒った。
『てめぇらぁ!はぁうっ、痛ぇ~…』
もはや少し大きな声を出すのも痛いらしい。これはいよいよ本当に病院に行った方がよさそうだ。
『ほら、行くわよ。私の後ろ乗せてあげるから』
結局蘭菜から綺夜羅は逃れられず、掠が近くの病院を案内する為ついていった。
『あいつ、そんなに顔やられてたか?』
言いながら数は思い返したがそんなことはなかったような気がした。
『2発だったと思うよ。あの優子さんって人と後から来た外人の人から1発ずつ。それ以外は見てないよ』
燃の言うとおり綺夜羅がくらったのは2発だけだ。
『たった2発であいつが病院かよ。今までそんなことあったか?あいつぁ今年厄年だな』
もちろん燃も旋も珠凛もそんな記憶はなかった。綺夜羅と言えば頑丈なイメージしかない。
『ねぇねぇ、ところでみんなは何であんなとこにいたの?』
愛羽はそもそもの話をした。
『あぁ…あのリーゼントの人ね、あたしと珠凛の先輩なんだ』
旋は自分が話さなければと前に出た。
『へぇ~…えっ!?それってあの優子さんって人?』
『う、うん。そういえば愛羽ちゃんたちこそ、どうして厚央に?』
『いや~それがあたしたち、その優子さんって人を探してたんだよ』
愛羽たちと旋たちは互いに樹のことや、旋と珠凛と優子のこと、今日あったことを話し合った。
この巡り合わせが偶然やマグレとは決して思えない話だった。
『まさか2人の先輩が樹さんの親友で同じ日に訪ねに来たなんてね。こんな偶然、あんのね』
大阪の時といい、この神がかった偶然に蓮華はもはや恐ろしくなった。
『でもよ、来てみりゃこれか。聞くのと見るのとこうも違うとはな。本当にあれが本物だったのか?』
玲璃はタバコを吹かしながらぼやいた。
『本人に間違いはないけど…はぁ…俺、樹さんになんて言えばいいんだよ。なんも言えねぇよ…』
麗桜は肩を落とすばかりだった。
『もういいじゃねぇかよ。別に頼まれた訳じゃねーんだし放っときゃーよ』
『もう、玲ちゃん聞いてたでしょ?このままだとあの人たちCRSが夜叉猫も悪修羅嬢も覇女も、それに綺夜羅ちゃんたちだって狙われることになっちゃうんだよ?』
『分かってるよ。ジョーダンだよ!だけどよ、そりゃどう考えても無謀だぜ。神奈川4大暴走族といや東京連合に勝ったチームだ。いくらなんでも調子乗りすぎだろ。負けるはずがねーよ。返り討ちに合って終わりだろ』
『だからぁ、そうなるのもダメでしょって。めぐちゃんと珠凛ちゃんの先輩で樹さんの親友なんだよ?なんとかしなきゃダメでしょ?』
『…どーやってだよ』
『だからそれを…考えなきゃ行けないんじゃん』
とは言うものの、すぐに思いつきそうなこともなかった。
『あのさ、樹先輩に会えないかな?あたし話してみたいんだけど。どうすればいいか、優子ちゃんのこと1番知ってる人に聞いてみたい』
そう言い出したのは旋だった。麗桜は決して気は進まなかったが確かにこの2人と引き合わせてあげることは双方に意味のあることかもしれない。
ただその際にはとても申し訳ない報告をしなければならない。
麗桜はまた溜め息をついた。
『じゃあ、行ってみるかい?』