第114話 障害物

文字数 583文字

『はぁっ!』『せいっ!』

 旋と珠凛は左右に別れて旋は中断突き、珠凛は上段蹴りにいった。
 しかし、どちらも目をくれずにガッガッと腕で受け払うと珠凛に向かってあご、のど、みぞおちに3連撃をくらわせ、見もせずに旋に対し蹴りを浴びせた。
 その鮮やかな技はもちろんすごいが驚いたのはそこではない。

 一見小柄な体からは思いもよらない程びくともせず、その攻撃も常識をはるかに超えて重かった。

『うん。君たちは空手だね。一応腕前の方は5、6段程度と見た』

 続けて2人は足を止めずレディの周りをステップを踏むようにして回りながら互いのタイミングを合わせた。


『でやっ!』『せい!』

 今度は旋が空中回し蹴り、珠凛は拳を交えローキックにいった。
 だがレディは旋の蹴りを首の動きだけでよけると裏拳で殴りつけ、珠凛の拳はまるで物をどかすような簡単なしぐさで受け流し、ローキックを足の裏で軽く受け止めると膝に向かってローキックを返した。

 ゴキッ!

 珠凛の体に身を切るような痛みと鈍い音が響いた。

『う"ぅ~!』

 珠凛は倒れ尻もちをついた。完全に珠凛の足が折れた。

『珠凛!』

『人の心配なんてしてる暇はないよ』

 レディは旋に的を変えて襲いかかってきた。

 攻撃が読めず早く重い。旋はガードすらさせてもらえなかった。
 この一刻を争う時に、とても勝てる相手ではないことを悟った。

(くっそ、ここまで来たのに!)
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