第147話 杉山の思い

文字数 792文字

 白桐。君はおそらく私の知らない所で何かとてつもない闇を背負っているのだろうね。私が無知なせいか、君が私に見せまい知られまいとしてくれているからなのか、私には分からないし君を助けてあげることは難しいのかもしれない。

 ただ、君を訪ねてきた少女たちや君の親友と出会ってはっきりと分かったことがある。

 白桐、君はおそらく自分の意に反してここに留まっているのだね。それはもしかしたら君の思う友人たちの為なのだろう。

 今になって分かる。君はいつも私との間を人に見られるのを警戒していたね。私はてっきり君が総長としての威厳が失われてしまうからそれを気にしているのだとばかり思っていたが、君は私のことを守る為にそうしてくれたのだね。

 私はこの3年間とても貴重な経験をした。君と過ごす毎日は新鮮でとても楽しかった。学校は何も教師が生徒に教える為の場所なのではなく、教師も生徒に学び、学ばせてもらう場所なのだと深く感じさせられました。

 白桐、本当にありがとう。

 そんな他でもない君が、今とても危険な状態に陥っているのではないかということを、私も君が隠していた物を偶然見てしまい悟りました。

 君の為にどうすればいいのか、私のような者に何ができるのか考えたけど、君はきっと私のことなどはぐらかして何もさせてはくれないだろうね。

 この選択は決して正しいとは思わない。だけど万が一何かあるとしたら私は君を助けられない。

 だからその答えを置いておきます。

 私は君のことを教師でありながら友人のように、そして娘のように思っていた。

 君はこんなことを言ったら笑って気持ち悪がるかもしれないね。でもどうか生きてほしい。

 そして君の本当の居場所に戻って幸せに生きてほしい。

 君はとても素敵な人だよ。そのことをどうか忘れないでほしい。

 君は私の自慢の生徒だ。





 杉山の手紙の横に紙袋があり、その中には防弾ベストが入っていた。
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