第21話 裏切り

文字数 963文字

『あのさ、めぐ、珠凛…一緒に転校しねーか?』

『え?転校?なんで?』

『どうしたの?いきなり…』

 それは突然優子が言い出したことだった。

 旋も珠凛も思いもしなかった言葉に何故か不安になってしまった。

『…いや、この学校じゃさ、本当はもっと楽しめることも楽しめないし、ずっとあいつらと揉めてんのも疲れちまうだろ?こんなクソ溜めみてーなとこいるより他所行っちまった方がいいような気がしてさ。この道を平塚の方に向かうと田村中学ってのがある。ちょっと距離はあるけど、チャリでも行けるしバス乗っかればすぐだからそっちに行こうと思うんだ。だから2人にも来てほしい。あたしと一緒に田村に転校してくれ』

 中学校を転校するなんて本人の気持ちだけでは簡単には決められない。

 だが優子がそう言うなら是非ということで2人は親を必死に説得し、わざわざ日時も合わせてそれからすぐ3人は転校することになった。

 転校初日、2人は優子と田村中学で待ち合わせをしていた。

 だが優子は約束の時間になっても現れなかった。

 それだけではない。

 心配して電話をかけてみると信じられないことに番号が使われていなかったのだ。

『…どーなっちゃってるの?』

『何かあったのかしら…』

 2人は全く意味が分からず学校どころではなく優子を探し回った。すると意外にも優子はすぐ見つかった。

 彼女はなんと厚木南中学にいたのである。

『優子ちゃんセンパーイ!』

 2人は優子の所まで走っていった。

『どうしたの?優子ちゃん先輩。あたしたち、あっちで待ってたのに』

 優子の周りにはあの熊小路や他、厚木南の不良グループのメンバーたちが揃っていた。

 しかし険悪なムードはなく、旋も珠凛も何か違和感を感じた。

『優子さん…これどういうことなの?』

 旋も珠凛もとても不安そうな顔で優子を見たが優子は2人の方を見ようともしなかった。

 するとそこで信じられない言葉が投げ返された。

『見りゃ分かるだろ?そういうことだよ。2度とあたしの前に現れるな』

 珠凛は思わず手が出てしまい優子の顔をはたいていた。

 旋は悲しそうな、感情の抜けてしまったような表情でそれを見ていた。

『説明してよ…』

 珠凛は目に涙を浮かべて言った。

『話すことは何もない。いいか?2度とあたしの前に現れるなよ?』

 そう言って優子は周りの人間と消えてしまった。
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