第142話 いつだって側にいる
文字数 1,432文字
『あーれぇ?おっかしーなぁ。どこ行っちゃったんだろ~あの子~』
結局瞬と泪はだいぶ奥まで来てしまった。
『泪、戻ろうよ。もうこれ以上行くと本当に戻れなくなっちゃうよ?』
もうすでにちゃんと戻れるか怪しい。瞬はとっくに方向感覚がない。
『戻らなくていいんだよ』
泪は瞬に振り返ると言った。
『え?戻らないの?』
『帰り道はもうすぐだからだよ』
『どーゆーこと?』
瞬は意味が分からず泪が何をしたいのか分からなかった。
『危なかったねぇ~。瞬、もうこんなとこ来ちゃダメだよ?』
『えっ?泪、何言ってるの?早く帰ろうよ』
瞬が今度は泪の手を引こうとすると逆にガシッと腕をつかまれてしまった。
『そっちじゃない。このまま真っ直ぐだよ』
『え?だって今こっちから歩いてきたでしょ?』
『いーからいーから』
そこから少し歩くと森の向こうに道路が見えてきた。
『あれ?なんであんな所に道があるの?』
『ね、ほら言ったじゃん。もう大丈夫、帰れるよ』
ドンッと背中を押され振り返ると、泪は優しく笑って手を振っていた。
『ありがと瞬。今日はすっごく楽しかったよ』
『何やってるの?早く一緒に行こうよ』
あれ?手を伸ばしても泪の方に行けない。
『その道に出ればみんなの所に帰れるから、瞬は1人で行って。あたしは後から行くからさ』
『ダメだよ!こんな所に1人で置いていける訳ないでしょ?』
泪は少し困った顔をした。
『あったしはさ、もう少し時間がかかっちゃいそうだから…でも、絶対帰るから!』
道路の方から瞬の名を呼ぶ声が聞こえる。琉花、千歌、神楽…
神楽?神楽って、誰だったっけ?
『…あれ?なんで?どういうこと?ねぇ泪、あたし多分泪に言わなきゃいけないことがあったんだけど…あれ?聞かなきゃいけないことだったかな?』
瞬は頭の中の整理がつかないらしく頭を抱えてじれったそうにしている。
『じゃあ総長殿!泪ちゃんはいつでもあなた様を見守っていますぜ!』
そう言って笑うと泪は森の中に引き返して行ってしまおうとした。
その時になってやっと全てがつながり思い出すことができた。
『ねぇ泪待って!泪が今日あたしと一緒に戦ってくれたんでしょ!?』
そうだ。自分は泪と琉花と千歌を人質に取られCRSの言いなりになり、でも今日やっと3人共解放され自分は四阿と戦っていたはずだった。
でも途中からのことはほとんど何も思い出せず、だけどずっと隣に泪がいてくれたような、自分の中に泪がいたような、そういう感覚だけがあった。
そんな気がするのだ。気がするだけだ。覚えている訳ではない。だけどそれを聞きたくてずっとつっかえていて、でも思い出せなくて今に至る。
『そうだよね?そうなんでしょ!?』
そんなことあり得る訳ないし誰かに話したら笑われてしまうかもしれないが瞬は何故か自信を持っていた。
『…は、はぁ?な、なーに言ってんのかね君は…あ、あ、頭でもぶつけたんじゃないの?』
泪は分かりやすい嘘のつき方をした。
そうだった。いきなり隠し事がバレたりするといつもそういう最もな態度になってしまうから、瞬たちはそうやって泪を見極めてきた。
『ありがとう泪。ごめんね…』
瞬がその先を言おうとすると泪はそれを止めた。
『そーゆーの、言いっこなしにしよ?今日は楽しかった。会えて嬉しかったよ、瞬』
泪がそう言って優しく笑うと瞬は涙をこぼしてしまった。
『…あたしも…会えて、嬉しかったよ』
泪はそれを聞いて恥ずかしそうに、でも満足そうに、少しずつ遠くなっていった。
結局瞬と泪はだいぶ奥まで来てしまった。
『泪、戻ろうよ。もうこれ以上行くと本当に戻れなくなっちゃうよ?』
もうすでにちゃんと戻れるか怪しい。瞬はとっくに方向感覚がない。
『戻らなくていいんだよ』
泪は瞬に振り返ると言った。
『え?戻らないの?』
『帰り道はもうすぐだからだよ』
『どーゆーこと?』
瞬は意味が分からず泪が何をしたいのか分からなかった。
『危なかったねぇ~。瞬、もうこんなとこ来ちゃダメだよ?』
『えっ?泪、何言ってるの?早く帰ろうよ』
瞬が今度は泪の手を引こうとすると逆にガシッと腕をつかまれてしまった。
『そっちじゃない。このまま真っ直ぐだよ』
『え?だって今こっちから歩いてきたでしょ?』
『いーからいーから』
そこから少し歩くと森の向こうに道路が見えてきた。
『あれ?なんであんな所に道があるの?』
『ね、ほら言ったじゃん。もう大丈夫、帰れるよ』
ドンッと背中を押され振り返ると、泪は優しく笑って手を振っていた。
『ありがと瞬。今日はすっごく楽しかったよ』
『何やってるの?早く一緒に行こうよ』
あれ?手を伸ばしても泪の方に行けない。
『その道に出ればみんなの所に帰れるから、瞬は1人で行って。あたしは後から行くからさ』
『ダメだよ!こんな所に1人で置いていける訳ないでしょ?』
泪は少し困った顔をした。
『あったしはさ、もう少し時間がかかっちゃいそうだから…でも、絶対帰るから!』
道路の方から瞬の名を呼ぶ声が聞こえる。琉花、千歌、神楽…
神楽?神楽って、誰だったっけ?
『…あれ?なんで?どういうこと?ねぇ泪、あたし多分泪に言わなきゃいけないことがあったんだけど…あれ?聞かなきゃいけないことだったかな?』
瞬は頭の中の整理がつかないらしく頭を抱えてじれったそうにしている。
『じゃあ総長殿!泪ちゃんはいつでもあなた様を見守っていますぜ!』
そう言って笑うと泪は森の中に引き返して行ってしまおうとした。
その時になってやっと全てがつながり思い出すことができた。
『ねぇ泪待って!泪が今日あたしと一緒に戦ってくれたんでしょ!?』
そうだ。自分は泪と琉花と千歌を人質に取られCRSの言いなりになり、でも今日やっと3人共解放され自分は四阿と戦っていたはずだった。
でも途中からのことはほとんど何も思い出せず、だけどずっと隣に泪がいてくれたような、自分の中に泪がいたような、そういう感覚だけがあった。
そんな気がするのだ。気がするだけだ。覚えている訳ではない。だけどそれを聞きたくてずっとつっかえていて、でも思い出せなくて今に至る。
『そうだよね?そうなんでしょ!?』
そんなことあり得る訳ないし誰かに話したら笑われてしまうかもしれないが瞬は何故か自信を持っていた。
『…は、はぁ?な、なーに言ってんのかね君は…あ、あ、頭でもぶつけたんじゃないの?』
泪は分かりやすい嘘のつき方をした。
そうだった。いきなり隠し事がバレたりするといつもそういう最もな態度になってしまうから、瞬たちはそうやって泪を見極めてきた。
『ありがとう泪。ごめんね…』
瞬がその先を言おうとすると泪はそれを止めた。
『そーゆーの、言いっこなしにしよ?今日は楽しかった。会えて嬉しかったよ、瞬』
泪がそう言って優しく笑うと瞬は涙をこぼしてしまった。
『…あたしも…会えて、嬉しかったよ』
泪はそれを聞いて恥ずかしそうに、でも満足そうに、少しずつ遠くなっていった。