第44話 瞬と神楽
文字数 1,316文字
『そういえばさ、あなたのやりたいことってなんだったの?』
少し前に神楽と2人になった時、瞬はおもいきって聞いてみた。
初日の体験入店の時からずっと気になっていたのだ。
『あ?別になんだっていいだろ。大したことじゃないよ』
『え?だって、あの社長さんの秘書を断ったりする位だから、それなりのことだと思ったんだけど』
『バカだね。あれは口実に決まってるだろ?
あたしが秘書だって?舐めんじゃないよ。あの人は金があれば何でもできると思ってる人だ。秘書という名の愛人を雇いたいんだよ。あたしを愛人にしたいなら会社ごと貰う位じゃないと受け付けないんだよ。安く見やがって。それにそもそもあたしが「秘書」なーんて、できると思うのかい?』
『あ、それは確かに』
『この野郎。言わせておけば…クビにするよ!?』
『大丈夫。あなたはそういうことする人じゃないから』
『おぉおぉ、大した信頼だねぇ。人間いざという時は分からないんだからね』
『ねぇ、それで何がやりたいの?』
瞬は何故かそれがどーしても気になるらしく、逆に神楽はどーしてもそれを言いたくないらしい。
『ちっ…保育士だよ』
『へぇ~…えぇっ!?』
驚いた。何を聞いても動じないつもりだったがさすがに声が出てしまった。
『うるさいねぇ!そんなでかい声で驚いてんじゃないよ!』
神楽は抑えめの声で怒鳴りつけ、瞬も慌てて声のトーンを落とした。
『ご、ごめんごめん。いや、でも意外だったから…』
だから言いたくなかったんだという顔をされ、瞬は申し訳なくなってしまった。
『ごめんね。子供好きなの?』
『好きそうに見えるか?あたしだってそんなこと思わないよ』
『え?でもじゃあ、なんで保育士になりたいの?』
『…死んだ兄貴の遺言って言うかさ、あたしに保育士やらせたがってたみたいなんだ。あたしは聞いたことなかったんだけどね。愛羽のクソ兄貴がこの前それ教えてくれてさ…あたしに保育士なんて務まるか、その前になれるのかも分からないけど。もしなれたら…もしできたら、ちっとは恩返しになんのかなって思ったら、やってみようかなって思ってさ…』
瞬は神楽の兄が亡くなっていることなど初耳だったし愛羽の兄が関係していることも知らなかった。
『じゃあ、今勉強とかしてるの?』
『ん、まぁそうだね。ちょっとずつね』
『へぇ~、すごいじゃん。応援するから頑張ってね』
『ふふ、何が応援だよ。どうせ冷やかすんだから放っといてくれよ』
『ううん。やりたいことがあって、その為に頑張るってすごくいいことだと思う。どうせあなたは誰にも言わないんだろうから、あたしはちゃんと応援する』
ほんの少し前まで敵だったのに、共に戦い、神楽の店で働き彼女の一面を知り、瞬はその中で神楽を信頼するようになっていった。
自分はまだこの先どうするか、何がやりたいかなんて何一つ決まっていない中、神楽の立派に働く姿はとても刺激になり尊敬もしていた。
だから彼女が暴走族でもキャバクラでもない新しい道を見つけて歩きだしているのは瞬にとっても嬉しく思えることだった。
そして瞬のそんな気持ちが嬉しいのは彼女も一緒だった。
『あぁそうですかい。そいつはどうも』
神楽は珍しく少し嬉しそうな顔をしていた。
少し前に神楽と2人になった時、瞬はおもいきって聞いてみた。
初日の体験入店の時からずっと気になっていたのだ。
『あ?別になんだっていいだろ。大したことじゃないよ』
『え?だって、あの社長さんの秘書を断ったりする位だから、それなりのことだと思ったんだけど』
『バカだね。あれは口実に決まってるだろ?
あたしが秘書だって?舐めんじゃないよ。あの人は金があれば何でもできると思ってる人だ。秘書という名の愛人を雇いたいんだよ。あたしを愛人にしたいなら会社ごと貰う位じゃないと受け付けないんだよ。安く見やがって。それにそもそもあたしが「秘書」なーんて、できると思うのかい?』
『あ、それは確かに』
『この野郎。言わせておけば…クビにするよ!?』
『大丈夫。あなたはそういうことする人じゃないから』
『おぉおぉ、大した信頼だねぇ。人間いざという時は分からないんだからね』
『ねぇ、それで何がやりたいの?』
瞬は何故かそれがどーしても気になるらしく、逆に神楽はどーしてもそれを言いたくないらしい。
『ちっ…保育士だよ』
『へぇ~…えぇっ!?』
驚いた。何を聞いても動じないつもりだったがさすがに声が出てしまった。
『うるさいねぇ!そんなでかい声で驚いてんじゃないよ!』
神楽は抑えめの声で怒鳴りつけ、瞬も慌てて声のトーンを落とした。
『ご、ごめんごめん。いや、でも意外だったから…』
だから言いたくなかったんだという顔をされ、瞬は申し訳なくなってしまった。
『ごめんね。子供好きなの?』
『好きそうに見えるか?あたしだってそんなこと思わないよ』
『え?でもじゃあ、なんで保育士になりたいの?』
『…死んだ兄貴の遺言って言うかさ、あたしに保育士やらせたがってたみたいなんだ。あたしは聞いたことなかったんだけどね。愛羽のクソ兄貴がこの前それ教えてくれてさ…あたしに保育士なんて務まるか、その前になれるのかも分からないけど。もしなれたら…もしできたら、ちっとは恩返しになんのかなって思ったら、やってみようかなって思ってさ…』
瞬は神楽の兄が亡くなっていることなど初耳だったし愛羽の兄が関係していることも知らなかった。
『じゃあ、今勉強とかしてるの?』
『ん、まぁそうだね。ちょっとずつね』
『へぇ~、すごいじゃん。応援するから頑張ってね』
『ふふ、何が応援だよ。どうせ冷やかすんだから放っといてくれよ』
『ううん。やりたいことがあって、その為に頑張るってすごくいいことだと思う。どうせあなたは誰にも言わないんだろうから、あたしはちゃんと応援する』
ほんの少し前まで敵だったのに、共に戦い、神楽の店で働き彼女の一面を知り、瞬はその中で神楽を信頼するようになっていった。
自分はまだこの先どうするか、何がやりたいかなんて何一つ決まっていない中、神楽の立派に働く姿はとても刺激になり尊敬もしていた。
だから彼女が暴走族でもキャバクラでもない新しい道を見つけて歩きだしているのは瞬にとっても嬉しく思えることだった。
そして瞬のそんな気持ちが嬉しいのは彼女も一緒だった。
『あぁそうですかい。そいつはどうも』
神楽は珍しく少し嬉しそうな顔をしていた。