第133話 眩の作戦

文字数 1,011文字

『玲璃!あいつの効き目はあとどれ位だい?』

『聞かない方がいいぜ!ついさっき打ったばっかだ』

 豹那はわずかな望みに託したが確かに聞かない方がよかった。
 あの化物とたっぷり2時間鬼ごっこでもして逃げ回ってみるか?

 いや、不可能だ。

 それどころか2本打ってるということは2時間で済むのかも分からない。

 もはやタイマン勝負にこだわってなどいられないがすでに眩は指を折られている。
 状況は最低最悪と言える。

『…豹。あいつの片腕…できれば利き手の右腕、くい止めてくれんか?』

『はぁ?腕がなんだって?』

『しっ、声がでかいねん。このままあいつに遊ばれとったらあかんことはお前かてもう分かったやろ。そうと言うても、おそらくあたしもお前も1人では勝たれへん。どころか、2人でもこのザマや。まともにやり合うてあいつに勝つ方法はあたしには分からん』

 どうやら感じていることは2人とも同じようだ。

『それで、なんであたしがあいつの腕をくい止めるんだい?』

『分からんか?あの化物を落としたんねん。見て分かるやろ?奴は今ボブ・サップや。それやなかったらヒクソングレイシーや。せやけどな、奴の首をロックすることができれば落とすことができる。なんぼサップやヒクソンゆーても首絞められて苦しまん奴はおらん。でもそれはそれができる状況あってのことや。奴が両手フリーやったらあたしなんぞ軽々と投げつけられるやろな。だがせめて腕1本の自由を奪ってやることができたらそうは簡単にいかん。なんせ首をおもいっきしロックされんねんからな。苦しむはずや。後はもう根性勝負や。放して負けるか勝つまで気張るか、これがダメやったらあいつに勝つ方法はあたしにはもう分からん』

 それが上手くいくかは分からなかったが確かに豹那も目の前の凶悪な猛獣に勝てる手段など思いつかなかった。

 アジラナは玲璃と掠をまるでオモチャにしながら、すでに立てずに転がる心愛を更に蹴りつけた。
 このままでは先に3人が殺される。

『…言ったからには責任持ってくれるんだろうね?このあたしを足止めに使おうってんだからさ』

『足止めなんかとちゃう。これは最後まで2人が踏ん張れな意味がない作戦や。あたしとお前で、あいつを倒すんや』

 それを聞いて豹那は立ち上がった。

『いいだろう。あたしの力の全てをあいつの腕1本押さえることに賭けてやろうじゃないか』

『話が早くて助かるわ。すまんが頼む。あたしはもう奴を止めることはできん』
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