第81話 スイーツが食いたいねん

文字数 919文字

『アカツキさーん!アカツキアイハさーん!あれ?アイカやったか?アイナやったか?アカツキさ~ん!あたしや~!天王道や~!覚えてまっか~!?』

 小田原駅を1歩出たすぐのロータリーのど真ん中で眩が声を張り上げ愛羽の名前を連呼していた。

『おかしいなぁ~。ホンマ小田原で合っとんのやろか。まさかあたし名前間違うとるか?あっ!さては風矢の奴ガセネタつかませよったんか!?嘘や…あたしが何したっちゅうねん!』

 眩の中では名前を呼べばすぐに見つかると思っていたらしく、あまりの手応えのなさに頭を抱えてしまっていた。
 煌と冬は恥ずかしすぎるので少し離れた所から様子を見ていた。
 煌はそわそわしながら顔を赤らめ冬はクスクスと笑っている。

『お~い煌ぇ!そんなとこで縮こまっとらんとお前も手伝ってくれ!こんなんいつになっても見つからんて。あたし名前間違うとるか?』

 煌は更に顔を赤くさせると早足で眩の手をつかみ引っ張ってその場を離れた。

『な、な、なんやねん!今、人探しとんのやで!?』

『姉さん名前は合ってるわ。でも、やたらに名前を呼んで回っても出てこないと思うの。もう少し狙いを絞りましょうよ』

『狙いて、ほなどーすんねん』

『ほら。単車に乗ってる奴とか、それっぽいガキとかに的を絞った方がいいと思うわ。その辺の中年に声かけたって知ってる訳ないんだから』

『せやけど風矢は有名人て言うてたんやで?』

『だからそれはそういう意味じゃ』

 どうしてもここを動かせたい煌に眩も埒があかないと思ったのか数秒考えてから思い直した。

『まぁ、お前の言うことも一理あるな。よっしゃ!ほんならとりあえずおいしいスイーツの食べれそうなカフェでも行こか』

『は?…え、えぇそうね』

 その後、眩がたらふくスイーツを堪能して下校の時間になってから煌の言う通り学生に狙いを絞って聞きこみを再開すると、予想よりも早く情報を手に入れることができた。

『この先の夜明ヶ丘高校の子だよ。そういえば今日は見なかったような気がするけど』

『ホンマ!?おおきに!いや~助かったわ~』

 学生にお礼をして眩たちは夜明ヶ丘高校に向かった。

『アカツキアイハさ~ん!』

 眩が校門の前で声をあげていると、そこに招かれざる客が現れた。
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