Just altered 05「鳴らない電話」の噺

文字数 10,445文字

え〜っと、これって面白い噺だとは思うんだけど、当座は全然面白くないよー。
皆目何の話しなのか、どんな構成で、どういった展開になるのかは分からんはず。
小分けにして公開するから…。

ですからー、現段階では、かな〜りお暇な、ご酔狂な方々のみにて
お読みいただければいいかな〜って思っております。
でもね〜完全完成したものはまともには読めねえよっ…。
しんど過ぎるー!。

語りがまた時代がかった表現もて、あれやこれやの事実を隠そうと、
誤魔化そうとするモンだから、余計分かりづらいものになっちゃってる。

一切を曖昧模糊な体裁もて、冗談話として伝えようと努力してる。
もう必死なわけなんですよ。ことは単純なこと(悲劇)でしかないものを…。
あまつさえ皆様に、ご感興までもを与えんとすっから、もう返って、
取り返しのつかない程までにーーー…。

おっと、これは老婆心としてと、
愚痴として溢れ落ちたる言葉として聞いといてやってください…。

天村崇


『 開 演!』


みなさまへ
お久しぶりにござりまする。
本編はそこそこの文字数になるものにて、
そいで小出しにして、お披露目致したくにて御座候。

さすれば、更なる内容を改稿するの気概も持たれましょふでっしゃろから。
かなり〜にわけ分からんようになってごじゃりまする…。

正直申し上げまして、是を完成するの気概ホば、やや失いかけておりまして。
その訳は、愛着ある

ならばこそなり。自嘲。
何の内容いかな中身にて斯く言ふたるかハ後に皆様に嗤われてしまいましょうが…。

兎にも角にも、公開もて、気の引き締めをしとうございまする!。

何卒、お勤め(何の?)の程ホ、よろしくお願い申し上げまするーーー。


          敬具
        名無しの権平





さて、この稿ハ最初に歌もて始まりまする…。

巻頭歌、新八犬伝における主題歌「めぐる系」の替え歌。*字余り多数あり。
https://www.youtube.com/watch?v=nd01lLmzbmU

1. めぐるめぐる めぐる窮地は、いつもいつも 走馬灯の飼葉桶。
  めぐるめぐる めぐる新天地、振り出しに至らば、また最初からのやり直し。
  今度こそは、いい職場であってくれろ~と祈るばかり。
  どこの/どんな/どんだけ~な与太者、障害者、怨憎会苦の縁者どもと出会うのだろふ?。
   (コーラス・振袖合うのも多少の縁・
    巧言令色少なし じょんじょんじょん)
  先行きは全くもって天の匙加減。それに任せるしか他、当てはなし。
  こちとら、金銭的な窮地のみが引き起こせる奮起が頼り
  意外と本音としては楽観的にでいってみよう。
  天地間、孤立の独楽、試練忍辱開悟の充満
  いざとなったらAmen/Om/Amと心の中で唸れ。
  一切が吹き飛ぶこの摩訶不思議なるこの呪文を!。

2.めぐるめぐるめぐる 月日は、いつもどうしてもまたもや堂々巡り。
  めぐるめぐるめぐる お日さま、今日もまたもやご苦労さん。
  明日は、どんな目に会うのだろうか?。
  どんなこんならどぼちてーな試練が待ち構えていることだろう?。
  (コーラス・地震、雷、火事、認知の症(痴呆の曝け)
   薬でも拘束具でもしばきでも、いるもんならさっさと使えよ・どんどんどんどん)
  自分のこれまでの一切は、すべての根底から、洗いざらいのご破産でいってみよう。
  仁義礼智忠信孝悌。なんのことやった?。
  最後の最後の奥の手ならば、我慢もこれにて限界だーとなったならー、
  我が必殺の奥義たるの遁面(とんずら)だー。
  恩欠く義理欠く恥をかく。
  浪速の生き様、その根性見せてやるー!。






件、鳴らない電話。
  〜もしくは妖怪に逢いたるの噺…〜。


ときは永禄(ひち)年、師走のころ。正に御用納めとならん日のことで御座る。
もうろく難儀びと、公儀介添人たるの身に落ちて、その二度目の年の暮れ。
民草が皆、長きの休暇へと入らんとす、そのとば口に立ちてのお話しにて御座候…。

某、現在、一本の電信を祈る思いでただ只管に待ち詫びておりまするー。
午前の朝の九時より控えして待てども、一向にかかってこずーーー!!!。
すでに日の高きも過ぎて、午後の後半へと入りつつありなむ。

とにもかくにも電信箱の前を離るるは、是、思ふてハみてみても、一切できず。

微動だにせずして、良き知らせの来訪を、ただ只管に念じて待ちにておれ



いざ、心待ちての、(こら)へひ〜しての、焦がれひ~しての、
(もだ)へまくられんの、ただただ切迫の様よ。

我が心中より、湧き起こり、聞こし召したるの、
悪辣にして障りある難儀なる想念思念苛立ちに苛まれて、
此れらホば、耐え忍ぶことこそが、
今の、某の、勤めと信じて、仕へしておりまする…。

この”待つの行い、待つにおける精進こそ”が、
「ことの成否を左右する鍵なるぞ」とばかりに信じて、
こころ勝手に決め込んで、思い込みにて、自らに言ひ含めて、
耐えて耐えしておりにて御座候ーーー…。

焦がれに焦れて、焦燥感は募りて積もりて、もう、今日だけで一生分は経たりかな〜?。

黒焦げの燻製の如き武士(モノノフ)が、一丁出来上がりつつありなむ…。

「実に良かったのだ。良さげに思へたのだ。
 あの新天地となるやもしれぬ、あの職場たるハ…。」

其の様に思わずにはいられない程、行ってみて、観てみての印象は良かったので御座る。

それは数日前のことでござった。其の事業所に就職面接に行ったのは…。

事後にハ、採用への期待は我が心の内において、まるで打ち上げ花火の如くに
高まっていってしもうておった。

あそここそ、我にとっての準備されたたるの多亞恣意巣(おあしいす)に違いあるまい!。

そもそもその建屋たるの所在する環境が良かった。

そして周りも中も雰囲気にハ安心感が持ててた。

同僚となるかもしれない中継ぎをしてくれたお女中の態度がまた何とも良かった。

礼儀正しく、そして大層親切。確実に育ちが良さそうに思へた。

あの糞の如き、野奇異(ヤンキ)ー、鬼婆らどもとハ訳が違ふ…。

通うに近く、そして馬を走らせるに完璧に安全なる行路である。

完全に千里新町街(ニュータウン)の圏内にある。

こないだまでの、あの千里山突き抜けて、吹田の奥の村越えてと比ぶれば。
「くねくね、豪ー豪ー(ごーごー)骸羅殻(がらがら)、つるりん、馬韻馬韻(ばいんばいん)()っさー…」
とはもう完全に異なって、違うておるらむん。

馬もて駆けるに、危うきの少なくして、信号の間隔も長くそして遠かった。

担当官吏ハ「採否の連絡は年内に口頭もて」と、はっきり口にされて伝えてくれてた。

士官への期待は、嫌が応にも高まるばかとなっておった。
この新天地での再起にすべてを賭ける。
他の応募はすべて駄目に片付いてにて御座候。

日を追うごとに採用の叶うことへの祈願、宿願は、募ってゆきにておりにけり…。

遂にハ夕に至りにても、尚も甲斐なきままのっ「野田原提灯んぶら下げてー」にて
ござりまするーーーー。

其れは、意地悪き限り、散々気を持たせ給せひしての性悪なるのやり放題…?
さてや、若くば、やがてにハ驚天動地の展開控へしの憎いばかりの演出か?。

日々、無為にすごせども、
気ばかりハ悪戯に絶えずに騒ぎおりてのままにて、
落ち着きの得るハ如何ともし難し。

こころ千々らに乱れて惑乱錯乱が常態なりければ、
入神もて時をやり過ごすことも皆目、是、叶わざりきかな。

刻々の進み無くの止まりたるの如くに感じにて、
おりけつかるの、
ありまんのやわの、
してかるのにて
御座候…。

揚々、晩方になりにて、今日一日も、
不労の身故の稼ぎのなかりけるの事、
味わられ意識の徹底なされして、
落胆込み上げ、迫りきたりにて、
こころ大ひに震える。

今日に知らせなくば、決着は翌年となってしまう。
事の不確かなるのままに、年を越へるは、
まっこと落ち着きの仕様がなかった。

その頃、拙者、またもや無職の身分と相成り給しておじゃるられしのるらるるる〜…。
「失礼!」
いささか取り乱しておりますれば、不埒、素っ頓狂なるの今の言動、
「許しておじゃられんことをー!」。

げに、年の瀬ともなたるに、かくなる身の上と成り果つるは、
まっこと体たらくの極みにて、面目丸潰れの、恥っ晒しの、
尾張名古屋の此畜生ーと叫ばはれひ〜しても致し難しの勘十郎…。

我が今の境遇に、こころ落ち着かなくして悪戯に騒ぎまくらむ。
詠嘆の悔恨怨嗟の嘆きの思い高まりてハ鎮まるを繰り返すまで。

文無しが故の、今後の、先の稼ぎが全くあてにならない、
不確かなる身の上であるが故にてででござりまする。

焦燥の惑乱の思ひ(あふ)れきては、
乾いた涙の(こぼ)れひ~して…。
いと虚しきの限りの師走なりけれ。

知らずの内に、ところ構わず我が鼻腔より出ずるの音ハ、
痴なる響き満載たるの「むぅ~う~んんん…」
ただこの一音のみけれ。

げに焦燥の念に駆られ給いしの元凶なるは、
家族への仕送りの道断たれ給ひしの、この境遇なり…。

死活の、また家父長たるの根本的な、我が沽券に関わる資質が問われんとするならば、
(みずか)ら、敢えて、果敢に積極的に可笑しくなるも、これもまた対処の一興なりけれ。

何処(いずこ)よりか、彼方のいずれかに、食卓上にて、我が家族に鬨語りたるの、
我を攻め蔑み非難するの談話の数々、(うつつ)の如くに聞こへしてくる。
実母や義父らがそうする、そうした、そうしていることハ間違いありもうさぬ。
妻より報告として、かねがね、散々、聞かされてきておりますれば…。

まるで自分も今まさにそこに居るが如くに感じられて、居た堪れぬ思いの責め来こしめれば、
残念、屈辱、恥辱の思いに染まって身共のこころは真っ赤かー。
こころ夥しくも苛まれして、もう堪らんやん。

「やっぱ、暇ハ、人間ホ駄目にしてしまふ…」

日々、やることなきの身と落ちぶれて、無為に過ごすが当たり前となりたるとも、
気ばかりハ悪戯に騒ぎたてておりにて、落ち着きの得るの叶わずハ如何ともし難し。

こころ千々らに乱れてのままにて、これが常態となりにければ、
座禅にての入神もて、時をやり過ごすも全くの不可能となっとたなり…。

刻々の、遅々として進み無くに感じられて、まるで止まりたるの失せたるの如くにして、
けつかるの、ありまんのやわの、してかるのにて御座候…。

揚々、やっとこさ、晩方になりて、甲斐なき一日であったことに落胆覚えつつも、
来年、年明け早々にも、電信ハ来らんとの期待を胸に、気分を切り替へり。

ならば次に、近々に、年開けらば直に控へするハ、
義理の父方宅へ年始のご挨拶となりまする。

現在、某の家族の全員が身を寄せて暮らしておりまする。

無職にして年食っただけの、才覚甲斐性なし無しの男として、

訪問するだけハ避けとうござったのに…。

声なき声の彼方より責め聞こえてくらば、
居た堪れぬ思ひの込み上げ来たりて
羞恥の色に染まって身共のこころは真っ赤かー。

既に、声なき糾弾、罵声に、苛まれておるにまっこにまっこと等しからんや…。


〈暗転〉


ときの過ぎゆく様は、まっこともって、出鱈目もいいところにてでござりまして、
すっ飛び、すっ飛ばしにも似たるかなと思われてしまいよりける。
ほんま、いい加減にせいやの趨勢の如し加減の様なりけり…。

ときの経てのちに、

のあらましを、その顛末を振り返りみて、
ある思いが矢庭に込み上げてきたらむ。

某ハ

『 妖怪に()ひたる』のではないかと…。








「拙者、妖に逢いたりにて御座候う…」


ことのちに、

先の事件のあらまし、振り返りにて、矢庭に、やっとこさ、あないみじくも、
其は面妖なるの出来事であったことかと、突如覚え至りにて、驚きの絶えずしての…、
そうよ…、わたしがー媽〜媽〜(まーまー)よーーー♪。

其が故にこそ…我、職を失しかば。
あれは正しく祟りごとに会ホた(おおた)に他ならず。
さすれば、妖に逢うたるが由縁と思わずにはおられじ…。

初の介護番屋にての士官を早々と失ひして後は、
某ハ当用雇いの職にありついては糊口を凌ぎておれり。
其れ、便宜屋と呼ばれしの天より零れ落ちたるの天婦羅吏ー(てんぽらりー)の受けごと。
やること、なさねばならぬことハ、先の勤めと全く変わらぬ同じ内容にて御座候う。

遠の方々まで、東やら西やらへと、南に北にと馬走らせもて、不憫なる方々の介添に精を出してのまくら〜れん。併しながら、此れ動きばかり激しゅうして稼ぎたるハ目を剥くばかりのものでありなみん。まったくの甲斐なくして、その実入りたるや、最初の士官時と比ぶれば、あまりに乏しくなりもて、失望が上の絶望、これに苛まれておれりのらりり乃ありなみん。

仕送りできる嵩が余りに少なく乏しきが故にて、貯蓄の切り崩し、毎月の恒例ごととなにて、
目減りすること、悪戯に急速に進みゆくばかりとなりたる。

毎月末の日曜日、家族訪れ金銭渡すの前に、口座残高の事後の知らせに、打鳴示乃また深く響けりこと、深刻なりしこと…。毎月毎度のこととなりても、このショックに慣れるハ一切あらず。身魂震わせもて、戦慄きたるままの形相にて、ふらふらとぼとぼぎこちなく、駅地下を歩いてゆく男の姿の想像をもって察しいただきにて御座候。貧しきたるに常駐することハ、本当に怖く、また侘しく惨めな境遇に他ならず。その時節の刻印ハ、一生某に付き纏ふて、呪いの如く留まりにて残らん…。

されども。週の始めの月曜には、辛く切なに苛まれつつも、精一杯の空元気奮い起こして、
毎日を励んで過ごしておれり。北に南に、西に東に馬もて走りてハ、明るく声張り上げて、
其の屋に飛び込んでおりたる。根〜が、楽観的にして馬鹿げたる感興をとみに好みたるが、
まっこと性分にありにて…。

〈暗転〉

あるときの休日、気まぐれ憂さ晴らしの想ひにて、隣町へと馬もて向こうてみたげな。
長くご無沙汰していた隣町の市場を訪ねてみた。このことにハなんらかの天の導きが
関わっておったに違いない。その市場ハ自分が住まいする町のものと同じくして閑散の極み
と化しておった。しかしだ、なんと、そこに介護斡旋相談所の所在を確認したのでござる。
これは奇しき縁もあるものじゃと思ふて、その店の中へと勇気を出して飛び込みを敢行せり。
まあ入ってみたのでおじゃる。そこに控へしてておったのは、是いかにも”やり手”と
思われる女中頭であった。その熟年お女中頭と運良く話をすることができた。

すると、そのお女中に、なにやら気に入られとみえて、これはまったくの彼女の勘違いで
あったに違いないのだが、女はえらい力説、説得をもって、某に、新設の老人介護抑留屋敷
にて就労せんことを求めてきたのだ。其は、極少人数に限って、絞っての檻であるとのこと
だった。そこに抑留されしご高齢の方々の世話焼き兼監視の役目でありぬんと…。

そして某は、ひょんなことから、新設の抑留小屋の勤め人としての職を得ることとなれり。
それは愚留符保牟(ぐるーぷほーむ)と公儀にては呼ばれる類の施設にて候ふ。


本稿の、本筋たるは、そこの勤めを首になりもうしたるの噺にて御座候…。



へまをしたのでござる…。
安生に、機嫌よく、(いびき)をかいて寝ており有り申したので!。
翌日の朝一番にでも医者ん処に連れて行くのが是レ最善と決め付け致しておりますれば…。
たとへ傷口より血が溢れ来らっとても、其れ拭いて、乾かして、唾つけて、絆創膏貼って
放っておけば、その内に、かってに、治るもの、良くなるものと、鷹を踏んでおったのが、
是レ完璧なる間違いでござったーーー!。

よく、未だ、この仕事の本当の、
出入刑賭(でいりけいと)なるの肝要たるを、
その禁忌たるの、恐怖たるの精髄を、真の正体を、
この仕事におけるその恐ろしくも悍ましい展開の可能性たるを、
誰方を、本当には、意識して、配慮考慮して、恐怖して、
その前提にて、行為の選択たるものハ初めて叶うべきものであるかを、
よっく、理解できていなかった、していなかった頃の噺でござる。

本質的な噺としては拙者、祟られもうした。怪しの(たぐい)に…。
もうそれは正しく意識の外からふらりと顕れして、
あれというまに、もうすべての事柄が終わっている。済んでおる…。

ことの忌まわしきに気づくのは大分あとになってからのこと。
その事件の全容たるの掌握には時間がいりましたれば。
某にとって、逢魔がときは深夜にありにてでござそうろふ…

それまでには、我が御母堂に、その気性本質に、鬼夜叉たるを認めたことはあれども、
まっこと他人の内に、

の存在を認めたることはまったくなけれ。
あれは違う。もっと正体不明で、虚にして、全く掴み処のない怪しの代物…。

あの様な奇怪なるものが、まさか仕事場に潜んで、うろついておろうとは、
居ようとは、ついぞ思ふても、意識しても気づいてもおらなんだ…。
まっこと、かのものどもとの関わりにおいては碌なことになりもうさぬ。

〈暗転〉

新設であるが故に、まずは介護人が集められていた。
某を含めて総勢八名。男五に女三。
年齢ともにみなてんでバラバラ。
そのかっての来歴も。そしてなにやら曲者揃いであった。
これらは現場担当で、その上役として年配の女性が三人。

開設当時は入居者は誰もおらなんだ。
日がな一日中やることはほとんどなにもなかったのだ。
実習訓練と称しての真似事と床掃除に明け暮れておった。

洋々、一人男性が入居してきた。なにやら得体のしれない車椅子の老人が。
くしゃくしゃの顔でしゃあしゃあと歪んだ笑みを浮かべたるの。
こやつ並の神経の持ち主ではあらなんだ…。略。

しばらくの間は、こやつ一人に八人が、皆して、全員で世話焼きに励むこととなって
しまふ。楽は楽と言えたが、余りに不自然で、また甲斐もなく、つまらない毎日ばかりで
日々が暮れていった。そうそう、この男は、誰も、もう入所してこなければいいな~などと
口にするを憚らなんだ。自分ひとりが、みなからちやほやされることが、えろう御気に召して
もう堪らんんとの思いからだった。

あるときより「どどど…」と入居者が増えることとなる。これは城内に依拠する最上位管理者
らが、部屋を埋めることを最優先にせよとのお触れを宣ったが故のことによる。
いかな利用者であるかに関してハ一切考慮するを要せず。とにかく空いた部屋をなくせ。
介護人共を遊ばしておくなーーーの号令を発したからである。

簡単に紹介をしておこう…。

まだ壮年といっていい男性。「ここの出口はどこですか?」を誰彼構わず尋ねくる。
それも延々と毎日毎日、その途絶えることもなく。
某はハッキリと「ここの出口はあそこだけです」と指差し教えてあげた。
ただし、「鍵がなくば開きませんが」と云い添えて。
某の顔を驚きを持って見つめつつ、
その男は「あゝ、このひとは本との言われてる」と呟かれておれり。
この壮年の男は後に脱走に成功する。
すぐに捕まったらしいがもっと警護の厳しい処へと移ったとな。

なにやらお淑やかな佇まいにての、気弱さことの滲み出たる老女。
先の独りでの住まい時には近所のご婦人より苛めを散々受けしとな。
やがてに、ひとの揃うたるの時節には、同じく爪弾きの憂き目とあってれり。
虐められるが宿縁の方とみたり。

お籠もりの男。
無理矢理に連れて来られ入口近くにて籠城としての陣を張りたるの方。
そこで布団を体に巻いて梃子でも動かざりしかば。
凶暴性剥き出しにてあらば、しばらくは触れること叶わなかった。
後に少しづつ我ら介添人の世話になるようになる。
空腹には誰も勝てない。




喋りたおしの老婆。
小柄にして細身。されど痛く活発。よく動いていた。
ただし…「おつむの螺~子が、こりゃまたばっちり緩んでる」(ピュンピュン丸)が
間違いなしのご婦人。よく喋るのだが、何を言っているのかさっぱり分かり申ふさなんだ。
やけに元気がよくて、いっつも我ら介添人達にまとわりついてきて離れない。
なにやらしきりに、必死こいて求めてきよる。
その多くは「かいて~なかいて~な」「なあ~頼むて、かいてて、かいて」。
これらの連呼、連続。その訴えの意味は、背中が痒いとか体の問題ではまったく
なさそうであった。長らくその意味は誰にも分からなかった。
とにかく、その必死に哀願する様子がまたいたく滑稽で、
そうである故に返っておもしろく感じられていた

ただの頭のいかれた元気な老女とみなし、誰もまともには、相手にしてはいなかった。
とにかく、なんの話しやらさっぱり分からんかったので…、
彼女んの、話をまともに聞くことが、とにかくみんな面倒くさかった…。



〈続く〉



続きは来月、三月末までに…。


「かいて〜な」は、後に家に電話とかけてくれ〜の意味であることが判明する。
 次回に明かされる予定。


突如の再開!


皆のさま様、ごきげんよう……

まずは、長きに渡る語りの不在において、お詫びを申しあげ、候ふ、致しまする…。

その故たるの訳たるのは…実は、単に、佳境において、それについての中身が、核心が、それについてを語るのが、みどもにおいて、いと、恥ずかしかった、恥ずかしくして、またみっともなかった。そう思えての覚えられていたまでの、話なのでござりまする〜。筆がたいそう重く感じられて覚えられてしまってた。

さて、では、先のまずのその後のまずワ〜としての話としてなのでございますが、一つ告白しておかなければならない、いけないことがござりまする。それは一体何なのか〜?!。何でござりますのか〜と云いますと、拙者は、某は、夜間にはしっかりと睡眠を取らねばならない、ならぬ、その質なのでござりまする〜!。(ここが一番重要!)

この自分の幼き頃の、その年端も行かぬ頃の、赤子のときの話しなのでございますが、
これは、我が母君が、いたく印象として持たれてしまひして、その記憶に、鮮明なるもて、刻まれてしまったこと、事実なのでございますが〜、「寝ときなさい」と一言語られたならば、云われたならば、すぐに、即座に、すやすやと眠りに入る、入ってまう、斯様なるの、其の様な、餅毘(べいび)だったそうなのでござりまする〜!。

拙者、眠るが、眠りに入るが、大の大大、大好きにて御座候…。
夜はもう確実に寝る。寝てしまう。斯様なる人間にて御座候…。

閑話休題、話しは本筋へと戻しまして〜の、御座いましての〜

これまでの粗筋といたしましてワ〜、日々、馬を飛ばして〜、あちらの、こちらの村々、そこの屋敷、長屋へと〜、詮無い用事ばかりの、その助けにおいて〜、心空しきばかりにして、ありながらも〜、日銭稼ぎせねばとのその思いのみもてで〜、それのみを使命責務動機として〜、駆け回っておった、訳なんですが〜!。

これは、このことは、活発なる様子、活動であったが為に、ある種、気晴らしとしての効能はあり申した。あれやこれやの気煩いとしての思いを、一時は確実に忘れることができた。このことは大いなる救いにてであり申した。されど、されども、そうではあったとても!忙しくしてあるばかりで、その職務としての実態は、

あったのでございます。私が活動してあった豊中郡は、全体としては、たいそう広域としてのものになっておりまして〜、それの端から端ともなりますれば〜、馬もて駆けもってでも、ゆうに片道数時間としての行程になってしまう、もんだったんです。忙しくありて、また活発なるがままに、それにありたりとても、そうしてばかりなりもてでも、その実入としての現実ワ!余りにも少なく、情けない程までに乏しく、また給与明細見れば愕然となってしまう程までに、無残なるものであったのでございます。

この現実を月末に確認するにおいて、毎度しばらくは、その鳴りを潜めていた、家族を思っての気患いとしての憂慮が、この今現在自分が直面している人生においての対しての絶望が、この自分が余りにも無力にして不甲斐ない事の事実が、実感が、それに直面するをもって、湧起ってきてしまう…。この足元が絶えず、時をおいてまたもや崩れていってしまう、気力がみるみると萎え果てていってしまう、こころが虚ろなるままになる、なってしまう、これらとしての感慨が、その実感が、日々常々に某を定期的に然るべきときを狙っての襲来であった訳なのでござりまする〜…。

更にもう一つ杞憂なる心配すべきこととして、馬もて駆け回ってあることの、その危険性においてがあり申した。街道を走るにおて、いたくたいへんとっても危なかった。身に危険をいくつも覚へてあった。危ない目に幾度も、もう何度も何度も会った…。某が精神的に余裕がなかったことも、そういったことの原因には、なっていたのかもしれませんが…。

よって、この訪問としての仕事を、一年を待たずして、その仕事においての効率を、そして何よりも安全を優先して求める、このことを必要だと、考えだしてしまってたのです。ことの解決策は一つしかありもうせなんだ。それらこれらの彼らとしての者たちを、一同に集めしの、寄せ集めたるの施設!それへの、そこへの、士官を求めんとすること。それを果たするにおいて、祈願、また尽力してあること〜!。このことは先に既にお話しました流れにおいて、沿ってで、適うこととなったのですが〜…。

さて、某が務めることと相成りましたの、求めして願い適ったるの〜、その施設ワー、新設としてのものであったのでした…。側と職員のみ、とりあえず、揃えましたの集めましたのものだったのです。なので〜、しばらくは〜、やることワ〜、床掃除しか、なかったのでござりまする〜!。毎日毎日こればっか。延々と、ことにおいての意味もなく、各部屋のフロアーを、そのの床を、廊下を、モップがけしてたまで、だけ。これはこれでまた気概を削ぐにおいては、いと有効なるのものではあり申した。砂を噛むよな‥、まさしくそれとしての務めでありまた営為努力であった訳なんです…。


〈続く〉


続きは再来年の八月末までに…。

こんどこそ初夜勤としての、それにおいての悪夢としての展開が!

語られることとなるでしょう…


草々


前回は嘘ついたね!









二段落ち

最終的なやつがこれ…



       痒いね〜んんん…
       急に、突然、とにかくあそこが、メッチャ、
       痒いね〜んんん…

      「だれか〜! 助けて!!!」



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