1.  Twin Families 御心のままに。

文字数 2,270文字

  天満橋、OMMの高層階にある中華料理屋で父と食事をした。最後のお勘定の段になって、「ボクが出す」と申し出た。こういった事は初めてだ。父は喜ばしきことと、これをボクに任せた。この後、お見合い斡旋所に二人して行った。初めての訪問だった。34歳の時のことである。ボクは、あまり気の進まない中での利用ではあった。三人の女性と、そこの紹介でお会いしたがピンと来る人はいなかった。そしていつしか、こことは疎遠になっていってた。

  基本、ボクは結婚は難しいタイプの人間だ。実際、いざ見合いで相手を探してみると、感触的に「これは非常に難しい」との手応えだった。「否(いや)、ボクは結婚ができる人間ではない」との直観があった。自分という存在の「出来上がり」や「世界観」が理由である。*AT Fieldの問題だろね..。

  しかし、父の退場という事態になり、この先の準備として、結婚する事は必達の課題となってしまう。それも「急ぎ」としてだ。斡旋所のおば様に、ご無沙汰を謝罪し、改めてのご紹介をお願いする。これは大切な事....、すべては、縁結びの神さんのご機嫌次第なのだから。また別に、この時点では、ボクは初めて『主』に願うことをする。「すべてにおいて、私に相応しい人と結ばれますように」と。仕事においては、これまでに成否の願いをしたことは一度もない。あくまで人事を尽くすことは自己の限りでしかないのだから。しかし、今回の事案は毛色が違う。考慮すべきことがあまりにも多すぎて、お任せするしか手立てがなかった。その代わりと言っては何だが、ボクは女性に対するボクの『好み』と『拘り』の一切を捨てる事とした。願かけには「何かを犠牲にしなければならない」。ただ、年下で、健康であること、そして実際に会ってみて違和感がない事に拘ることだけには融通をつけた。では、この祈りは聞き届けられたのだろうか?...。

  二人とお会いしてダメで、三人目がボクの妻となる女性との出会いであった。写真の印象は「おキャン」な感じ、会って見ても健康そう。歳は6歳下。紹介所から車で移動し、天王寺公園を二人で歩いてみた。特に違和感もないので、手をつないでみる。これも特に拒絶はなかった。「結婚しましょう」と早速意思表示を行なっていた。彼女は、Noは言わなかった。

  結婚式は、父の喪中という事もあり、「人前式」となる。時を急ぐことを優先した為だ。正直、ボクは神の立会いなしの挙式となることに不安を覚えた。祝福は備えられないのか?...。寂しく感じた。兎に角も、これで社会的な体裁を構えることはできた。


追記:

”主”は、どのようなお考えでこの采配を行ったのだろうか。これは、とても興味深いものであった。いや、それは現在も未完結で、その真意の全体に関しては、まだ本当には分からない、結着がついていないとも言える...。

両家は相似形になったいる。それも非対称性の相似だ。
共に自営業、父親はタイプ8、五人家族、丙午の長女、キリスト教に関わる男子。どちらの家にも、玄関入ってすぐに二階へと続く長〜い直線の階段がある。そして同じ【業】を背負っている。【傲慢】と呼ばれるものだ。
しかし、微妙にその構成要素は違っていた。例えば:子らの順番、男女女かたや女女男。、実家は大阪の北と南、自営の形としては中小と個人、屈辱の君と栄華の君、etc。
「おっと忘れちゃいけない」あちらは両親健在、こちらは母のみの状況からだ...。
もう一つ、あちらは家としては、妻の代で終了してしまうのかもしれない...。長男さんは結婚されているが、お子さんは生まれず、望まれぬの様子がある。

穿った考えを披露しよう:
両家は、よく似た可能性を託されていたが、これが一本に統合されるのかもしれない。
もしかしたら、この目的の限りにおいて、ボクの結婚は成立できたのかもしれない。
「例外的に許されるもの」だったのだと思ってしまう。

両家の相性は、よくなかった。
こちらは母の存在、そしてあちらは父の存在の為だ。結納まで漕ぎ着けるにも、大変な確執が両家に起こってしまっていた。これも、思わぬ介入者の尽力のお陰で何とか乗り越えることができる。父の古くからの友人を仲人さんにできたことが幸いした。
また、もう一つあるがこれは後日にします...。

会社の状況は父の死後、大きく変化していく。
仕事の気苦労のみならず、このことへの心配からボクは、かなり弱っている。
結婚は、その中での、ある意味達成であった。

会社を守ること、利益体質の会社に変えることだけに、ボクの頭は凝り固まっていく。
長期借入金が大き過ぎる。これに対して、また売上高と利益率は低過ぎるものにボクには思われた。


蛇足:
紹介を受けた女性の一人に、例の落語ネタを披露してみた。
『それ売りはるのですか?』との返しだった。
笑ってくれたのなら、また違う判断だったかもしれない...。


追記2:公開後に追加する。

大変なことを忘れていた...。

『できれば、結婚はしないほうが良い』とのメッセージが事前にあったのだ。その理由は明かされはしなかった。しかし当時、この選択をすることはできなかった。

18年を経た現在になれば、あのメッセージの意味はなんとなく分かる。
でも、後悔はしたくない。
家族皆に見下げられる境遇になってしまっているが、それでもボクは結婚してよかったと思う。ボクは川底の砂の一片であれば、それで幸せだ...。
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