15. On the Bus 背後に天使の羽ばたきを聞く。

文字数 2,149文字

  京都での生活では、気分が落ちつかない、浮ついたムードが定期的に訪れていた。なにか危なげな感じなのだ...。断食にて対処をした。それは三日間が通常だった。二日目ぐらいから体内に備蓄されていたエネルギーが開放されるのが感じられる。飲料はとっていた。この三日間の長く感じられたこと。京都生活の最後の方では一回だけ、七日間においてがあった。それも、日中に体を休ませることは許されず、日曜日でさえ自転車であちこちへ遠出をして頑張った。もう二度とできまい。明けの日には、高野川の辺で”ANTICO”からテイクアウトした、焼きたてのピザを食べたが、見事にお腹をこわすのが常だった。会社での昼食はマンション一階にある喫茶店でランチを同僚と食べていたのだが、空腹で皆の食べているのを見ているのは辛かった。「今日は体調の加減で食べれないのです」と、にこやかにはしていた。[断食明け]の後は、あの危なげなムードは、きれいさっぱりなくなっていた。補記:ロヨラの「霊操」には、”慰め”と”荒み”が交互に訪れるとあったので、”荒み”が来ているのだと理解していた。慰めは、平常のことなのだろう。


  主:『子よ、誰かが、おまえについて悪意を抱き、聞きたくもないようなことを
     言ったとしても、不満に思ってはならない』。 (IMIT. OF CHRIST.28)

  その時、どうしてバスに乗っていたのかは分からない。思い出せない。[御所]の周辺でのことだったと思う。ボクが少し調子が悪かったのは確かだ。降りる際(きわ)になってから小銭がないことに気付いた。ポケットを探ったりして、お札を取り出すのにも「ももたもた」していた。それも、「もっさり」した動作で、「テキパキ」はしていなかっただろう。釣り銭を引き上げるにおいても「ドジ」をしてしまう。堪え切れずに、ボクの後ろで、降りるのを待つ年配の女性が「なにをぐずぐずしてんの!」と声を上げた。隣の男性も「とっとと、はよ行かんか!」と。更にはバスの運転手までもが、「もっと早うに用意しといてくれんとな!」と、キツい情け容赦のない物言いをしてきた。ほんの一時のあいだではあったが、矢継ぎ早に、見も知らぬ他人から容赦なく非難を浴びせられて、かなりのダメージをボクは受ける。なんとか逃げる様にしてバスを降りる。バスはすぐに発車していった。ボクは、歩きだしながら、あれはあれで何か出来過ぎの様に思ってしまう。そして...、少し妄想をした...。「あの人たちは、今頃は本当の姿に戻って、既に飛び去っているのであろうな..」と。あのバスも他の乗客もマボロシだったのではないか?...。すべては、自分の為に用意された試練の舞台でしかなかったのではないか?....。

  高校時代に、自分の進路を考えるために、「ボクの正体はなにか?」と自問をしてみた。回答は「詩人」とでた。「なんじゃそれは〜?」。なんの参考にもならなかった。確かにボクは短文が好きだ。芭蕉の俳句なんかは、大好物だった。その上で、独自のテーマとして[鋼鉄の一行詩]というコンセプトを考えた。その第一号が本エピソードのサブタイトルである。もう少し短くしてもいいかもしれない。例えば、「うしろでに羽ばたきを聞く」。...常々、分かる人だけが分かってくれれば良いとは思うのだけど、これでは余りに不親切になる。語呂はこっちのほうが良いかも知れない。....自分では、その当時はそれなりに評価していたのだが、月日は流れ、今思えばこれも[合理化機制]をファンタジックに、ただやっているだけとしか思えない。トーク本体のサブタイトルとして使えるかもと考えたのだが、それは止めた。

  今現在は、自分を取り囲む全てが作り物ではないのかとの思いが強くなっている。*いや、自分自身でさえかなりの割合はそうなのだろうと...。仮に、そうであっても絶対に、ことの馬脚を現すなんてことはあり得ない[完璧なシステム]に人間は生きている。[最後の審判]では、かって関わった人たちの全てが同時に主であったことが明かされる(悪いと思われた人でさえも主の命を受けた天使の変化でしかなかった)。あらゆる過去の自分の行いにおいて、”言い逃れ”が全く出来ない[場]に立たされるのであろうと想像している(遠山の金さん方式)。そして、ただ、主の言葉を本当に生きたかどうかだけが問われることとなる。どんな人にも親切にしておいたほうがいいかも。どんな人であっても...。どんな生き物であっても....。


追記:

この辺の発想は同じく、筒井先生の「脱走と追跡のサンバ」にもある。
また、うる星やつら 「ビューティフル・ドリーマー」にも。
主人公は気付いてしまう。裏方は辻褄合わせでドタバタする。
ボクは悲鳴を上げながらも楽しんでしまう。



一つ挑戦してみよう...。

あなたは連続している。しかし他は、すべて皆去っては又、来る存在だ。
「かれらはいつも同じだろうか?」
そして、もし自分でさえ連続してないとするならば、
「[世界]はどういった成り立ちになるのであろうか?」

どうでもいい話しだ。戯言でしかない。
どうぞ忘れてください...。  

  
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