10. Good bye Chico  ごきげんよう。

文字数 1,348文字

  ボクは帰り支度に入っていた。日本へ持って帰るべき荷物を順次まとめて送っていた。車を売りにださなければならないのでメンテを受けにいった。この時、ボクのプレリュードが事故車であったことが判明する。(中古で買ったのだが、そんな話は書類上にもまったくなかった)。「ヤバい」。「売りにくいではないか」。「大丈夫かな」。期限はそう長くはなかった。案の定、広告をタウンペーパーに載せてもらい数件の引合があったのだが見に来た人は、みんなこのことを知ると車への興味を失った。「どうしよう」。「今日も車は売れなかったよ」ともう一人のルームメイトであるスティーブに、ある日に零していた。「大丈夫  そのうち売れるさ」と彼は優しくボクを慰めてくれた。彼はボクより年下だったが、ずっと大人びて見える(メガネと口ひげのせいだけではない)。見えるだけではなく実際、落ち着きのある若者だった。将来は警察官になるとのことだった。彼にはガールフレンドがいて、いつもピッタリ側についていた。だからか、あまり彼とはコミュニケーションは持てなかった。しかし程なく車は売れる。買ってくれた人は、なぜか事故車であることを最初から知っていた。それでも喜んで車を買い取ってくれるとのことだった。白馬の騎士さんが現れた様な具合だった。とてもジェントルマンな人だった。これも主が送られた人のような気がした。

  ブライアンと尚子さんの家に挨拶にいった。「何か処分で手伝うことがあれば気兼ねなく言ってね」とのことだった。ありがとうを伝えた。この後、ブライアンは様子を見に京都でボクに会ってくれる。尚子さんとは最後に電話で一回話した。その時の会話で彼女は「ハルは生意気だから」とウッカり口を滑らせてしまう。いいタイミングだったと思う。「貴方はボクの命の恩人です。」「心からの感謝を送らせて頂きたく思います。」「ありがとうございました。」

ここで Chico篇は終えるのだが書かれなかったエピソードは多い。
いつか加えることがあるかも知れないが、重要なことに関わることだけに留めた。

また、ボクの状態は少しずつ少しずつ何か在るべき”座標”からズレ始めていっているのを時々感じていた。そのことに不安がつのっていっていた。なにがどうなっていっているのか分からなかったし、うまく言葉にもできないので表現は止めた。堪え難い違和感にもずっと耐えていた。なんとなく分かってもらえると思う。もうすぐ【これ】は終わってしまうのだ。

Chicoはスペイン語で小さな男の子を意味する。

               〈Chico篇 終〉




追加として一つだけ。
Re:Charles Manson
あろうことか、こちらのTV局は監獄にいる彼にカメラを向けて、その映像、音声を放送してしまった。ボクはこれを見た(見せられた?)。なんらかの意味があったのだとは思う。そこにあったバイブレーションは本当に生きながらにして地獄に堕ちている者のものだった。彼を通して送られる【呪詛、怒り、糾弾】は本物だった。圧倒的に巨大な波動だった。恐ろしくてボクには耐えられなかった。本当にだ!。「このことにより、その日は三日は近くなった」などと後日、誰かに話していた。


  
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