6. Social Insurance    砂を噛むよな1。

文字数 2,730文字

『希望とは、物事がそうであるから、持つものではなく、物事がそうであるにもかかわらず、持つ精神なのです。』(The Neverending Storyより)

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  『アタ〜』、前回に抜けた話から始めよう...。    

  新社屋においては竣工式が催された。社員の多くに召集がかけられる。しかしボクには何のお声もかからなかった。糟谷先生のとこでこの式典の話が出た。先生は『行かなあかんな〜』とボクを焚きつけた。「え〜ッ呼ばれてないのに〜?!」と内心は動揺の塊。その場に居ると想像しただけで恥ずかしかった。しかしいつもの如く返事は「分かりました」「行ってきます」と答える。

  玄関入ってすぐのだだっ広い円形ロビー。そこに式典は準備されていた。居並ぶパイプ椅子はかなりの数だ。席は最前列に誘導されてしまう。やがて当然の面子が差し向かい近くに居並んだ...。式典の直後、母に呼び寄せられた。こっぴどく詰問される。『あんたは呼んでないでしょ?!』『なんで来てんの?』と。かなりの数の社員がまだ周りを片付け等でうろうろしている。よほどボクの参加は不快なるものだったのだろう。説明はせずにただ謝るばかりだった。その場を逃げるように去ってから、糟谷先生にすぐ携帯で電話をかけた。「やっぱりダメでしたわ〜」と伝えた。先生は『そうか!ほなもう少し様子を見よか〜』と答え労をねぎらってくださった。

  居心地の悪い思いをするであろう場であればあるほど、そこへとボクが臨むことを、先生は仕向けられてた。この時の後には期間をおいて、さらに株主総会と父親の十七回忌が控えている。この十七回忌の法要なんぞは大舞台である。亡き父への回向として、母はこの時を特別なものにすべく準備を行う。場所は比叡山の麓の小ぶりなれど由緒ある正院。本社は元より、各地工場、東京支店からも社員の殆どが集められる。会社始まって以来のスケールでの催しであった。事実上この時が、この場にて、妹の跡取りとしての襲名、そしてボクの立場の完全な剥奪が皆にとってのコンセンサスと化す。これらが全社員に向けてのお披露目としてある。誰図らずもそうなっていた。ある意味クライマックス。
けれどこれはまた別のお話、いつか違う機会にね。


  Re: 社会保険労務士。

  『アタ〜』、やっと前回の続きです...。

  なにやら書状めいたものを社長から受け取ったんだったけかな?。それも師走に。あまりよく憶えてない...。とにかく『もう会社には出てこなくていい』との辞令があった。その代わりに[社労士]の資格を来年中に取るようにとのことだった。延長は一切なしの一回こっきり。試験日は翌年の八月だった。「なによそれ?」の話でしかなかった。

「これは体のいい放逐ではないか...」。

  この[社労士]のアイデアが何処からでてきたのかはすぐに分かった。自称松下出身の顧問以外にはありえなかった。彼は、自身がこの資格の保有者であることを履歴書でアピールしていた。*なんでも彼の資格は、”なんちゃって資格” であることを後に糟谷先生は説明して下さる。いや〜中々取るのが難しい資格ですわ〜。内容は社会保険の全般、すべて。試験では、健康、年金、介護、雇用、労災における[法令]+常識の専門的な理解が問われる。こういった内容は正直個人的には一番興味のない部類にはいる。総務なんかの実務経験者でなければ(慣れていなければ)、頭の拒絶反応はボクだけの話ではないと思うんだけど(博士)。「これを8ヶ月でマスターせよとッ?!」...。土台無理な話であることを先刻承知で言い渡してきているに等しい。

「これでは死刑宣告ではないカ〜ン!」。

母は、自身がどんだけ残酷なことしているのかがまったく分かっていなかった。
分からない存在に、成り果ててしまっていることがまた悲しい。
さらに、やがての訪問において、二人の別たれは決定的なものになる。
けれどこれはまた別のお話、いつか違う機会に...。

ショックに浸ってばかりもおられず、夢遊病者の如き足取りで年明けすぐ、その手の専門学校の門をくぐっていた..。

「勉強は苦手であることは、昔から知ってるじゃないか...」。
  

〈続く〉


ED:
Limahl - The Never Ending Story - (2003)

改)
そんなわきゃ〜ない。『鉄のララバイ』by 柳ジョージ。
もしくはGo Live Paris の『Crossing The Line』by ツトム・ヤマシタ。


追記:

アターはサンスクリット語で、अथ [atha]。これで始めるということは、権威ある書の始まりを示すこととなる(w)。書き手が主題において精通していることが含意される。つまりは著者はこうした記述ができるステイトにあるということになる(W)。
注)”現代人のためのヨーガ・スートラ”、著者:グレゴール・メーレより抜粋。

お分かりかと思うが、例の”Embarrassing”[恐怖、動揺、恥辱]がキーだ。
すべて「ラーサー」と答えてた。当然に*[ペガス]調である。

今だからこそ冗談でも語れるが、当時のダメージは半端でない。それも精魂傾けての十七年の活動モメンタムが一挙にその土台を失ったのだ。さらには未来がまったく不明瞭なものになってしまっている。怒涛をあげて内部のバランス崩壊が起こっても仕方あるまい。そして目標を逸したタイプ4が、どんだけダメになってしまうことか...。
けれどこれはまた別のお話、いつか違う機会に。


蛇足:

But this is a different story, someday, I will talk at another time this, maybe....
けれどこれはまた別のお話、いつか違う機会にね..たぶん。
Common phrase in ”The Neverending Story”。
『はてしない物語』における常套句。

*テッカマンは幼い日のボクの心に強い印象を残す。眠れるプログラムをアクティベイトさせるに十分だった。GRもそうだが、共に最終回が、その為のショックの役目を果たしている。何度もリフレインするとある[Vision]で流す涙がカタルシス。
けれどこれはまた別のお話、いつか違う機会に...たぶん。

『城二』のあげるラスト数分の雄叫びは、あまりに悲愴的にすぎる...。


しかしピラト役がいないんだよな〜...?。
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