★. Null & Void  厄事の芽。

文字数 2,154文字

  ボクがアメリカへ行っている間に家に入り込んだ人間がいた。(すぐ下の)妹の彼氏である。同じ高校で同学年だそうだ。彼を一瞥してすぐに思うことがあった。「お前は何をしているのか分かっているのか?」との思いを(妹に)持つ。かなりに質の悪いコピーではないか...。かなりに女性的で、身支度に凝っていた。二人はいつも一緒だ。いつも家に来ているそうだ。二人の会話は、二人だけのロールプレイの様相で、意味不明なものだった。お互いの呼び名でさえ、どこから来ているのか皆目見当が付かないもの出であった。ほとんど妹の部屋に閉じこもっていた。たまに二人して現れれば、彼の作り付けの気取った礼儀がボクはいつも鼻につていた。何のつもりか、彼は相当にボクを意識していた。「お前も分かっているのか?お前は、あれに取り込まれているのだぞ...」。二人の関係を遠目に見て、特徴に思ったことがあった。決定的に[エロス]が不在である。ボクには分からないこと、興味のないことなので、知らぬそぶり、できるだけ関わりにならないようにしていた。

  すぐ下の妹、長女は丙午の生まれである。このことの意味に重きは置きたくないのだがデータ的には気になる(後述)。彼女は高校生ぐらいからか、ボクには理解できない存在となった。コード:妖精存在。”(欠如) Null にして Void (空白 )” が、ボクの印象だった。人間としての生々しい現実感がない。何か人間存在としての核を持ち越せぬまま生まれてきてしまったような...。長女と言うことから父を多く写しているはずだ。事実、ボクには備わっていない頭の回線を持っていた。しかし、『Airy』 なのだ...。嘘が多い、多過ぎる...。隠してはいるが、気位と自己顕示欲は尋常ではないことが窺い知れた。彼女は、ボクの真似が多かった。そして、母に対しては圧倒的な暗示力の持ち主であった。そこにはボクには理解できない強固なマッチングがあった。相性が良かったと言うべきかも知れない。少しニュアンスが違うと思うが...。様々なイザコザにおいて、ボクの言い分は正しくても否され、彼女の言い分が嘘でも母には通っていた。母は長女を庇護していた。何処をどう巡ってか、前世での自分の身内かも知れないなどとも言っていた。「?...」。

  母は占いに凝っていた。専門家の意見を踏まえた上で、母はこの長女の行く末を大いに心配していた。「晩年運が悪い」と。詳しくはボクは知らない。兎に角、長女は猫可愛がりで、彼氏含めて関係を持っていた。ボクと一番下の妹は、母との相性がよくなかったことをここで述べておこう。(ボクはサッサと距離をおいてはいたが...)。母は、妹の彼氏を気遣ってか、よくボクとの比較で煽(おだ)ての言葉を送っていた。例えば「あなたの淹れてくれるコーヒーは息子のものより美味しいわ」とか。心ない比較対象の言葉を言う女性は多い。これは愛を破壊する行為なのでやめたほうがいい。彼氏との関係を含めて大層な気遣い、庇護を行っていた。*これはあくまで妹が主で彼は従でしかなかった。後日、三人での生活時になると彼の排斥を母は行う。

  妹二人は、母のかっての結婚のパターンを(無意識に)倣ってか、サッサと相手を決めて家を出て行った。長女の相手は当然に彼である。父は、娘が二人とも貧しい家へ嫁いでいったと嘆いていた。長女の結婚に際して、自宅での食事会の席で、父が行うべき祝辞、これをボクに任せてきた(彼は逃げたのだ)。困惑しつつも、精一杯、お二人の前途が明るく幸せであることを贈る言葉とさせて頂いている。事後の展開を思えば、なんたる皮肉な演出であったことか...。


追記:

  母は、自分がコーヒーを飲みたくなると、(ボクに)「コーヒー飲みたくない?」と尋ねてくる。ボクは「コーヒー淹れてちょうだい」と、ストレートに頼みなさいと怒る。こういう持って回った人を操るような行為がボクは大嫌いだった。

  家は妹たちにとっても地獄であった。ボクはアメリカに逃げることができたが、彼女らはそういう訳にも行かなかった。ボクの知らない苦しみを散々あそこでは味わっていたのだと思う。妬みの念も、そりゃ沸くわけだ。矛先は当然に妻にも向く。

  妻の姉も丙午の生まれなのだが同じく問題があるそうだ。こちらは実父との関係における確執だ。大変に矜羯羅(こんがら)がってている。非対称性からは、彼方は実家から遠方に所在は定まり、此方はマトモに居座る展開と後日なる。

  タイプ2には、(もしかしたら多くの女性の傾向としてなのかも知れないが)、憐れむべき傾向がある。『愛を求めつつ、愛を破壊する』がある。これはボクの観察だ。妻にも認められる。これでは幸せになれる訳が無い。

  今回のエピでは、サロメと、実母である妃ヘロディアの話も混ぜ込みたかったのだが、あまりに格が違うので保留としました。後日、工夫してみたいと思います。
ヨハネの斬首にまつわるドラマです。

  意識的に自分のつく嘘に、自ら信じ込んでいってしまう。これは母譲りでもあった。救いようが無い。女優さんでは、大○しの○さんと山○ 智○さんがそうだ。演技も一つ間違えば危ない世界だ。
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