5.2 Idiotical but Granted 神頼み。

文字数 2,971文字

状況の移り変わりの中、ボクは虚脱感、不安感、そして絶望感に囚われる。何より社長である
母に、『妹を会社の跡取りとする』と宣言されたことが致命的だった。激しい敵愾心も露わに
宣われるこの言葉を、ボクは黙って聞いていた。無茶苦茶な話だった。

妹とボクが並び立つことはあり得なかった。よって自分の将来の基盤が失われたことにも
等しかった。『ならば、サッサと辞めて他の道を選べば良いではないか?』との言葉も
聞こえてくるがそうはできなかった。今までもトボトボ歩く帰宅の途上「何か..他の仕事を」
と何度も考えたことはある。しかし、やりたいことは何も浮かんではこなかったのだ。
また、会社に対する使命感もあった。今の展開は、あまりに「道理に合わない」としか
思えなかった。このことは会社の浮沈にもやがて関わるであろう。また、逆境を『試練』と
捕まえる思考パターンは健在にして強固ある。そして何よりも養うべき家族の存在であった。
この時には、娘も生まれており家族四人の生活である。子供らは小一と小三。
可愛い盛りである。そして...ボクも...軽挙妄動たる行いを始めてしまう。
いや、なに、『神頼み』というやつだ...。

基本、神社仏閣巡りは、ボクには只の観光でしかない。うちの○さんは大変妬み深く、
ご自身以外の何人(ナンピト)たりと拝んではならないし、愛を預けてもいけない。
『唯一絶対にして無二』の対象たることを激烈に求められる。『至極当然』でしか
ないのだが、煉獄にさえ入れるかどうか分からない(その折には)最後尾でピョンピョン
飛び跳ねて先の様子を必死でうかがっているであろう、か弱き自称信者の端くれなれば、
時には便宜をつけさせてもらうことはある。それ程までに、この時は気弱で不安一杯だった
のだ。とはいえ行ったのは二箇所のみ。
石清水八幡宮とそして...。

  Re: 高野山

小学校の林間学校が最初の訪問だ。大切な思い出の場所。奥之院参道の印象が根深い。
父母は比叡山に祀られているが、ボクならば断然こっちがいい(あっちはシンドイ)。
あの時からは初めてだ。大阪からは車で、優に二時間を越える道程になる。
余程、思い切らないと行く事は叶わない。目的地は、お大師様の御廟だった。
家族に有無を言わせずに連れ出した。


可哀想なボクの家族


奥の院では、お大師様に、会社でのボクの立場が整うことを願った。以前の如く、新規の
開発営業をとの思いだった。そして、土産物屋を家族でまわっていると、空に虹がかかって
いるのを発見する。これは瑞兆だと大いにボクは喜んだ。

帰りの行程で紀の川(きのかわ)を渡ると、河川敷でなにやら夜店が出ていた。
かなりの数の出店だった。大きな祭りの開催だったのかも知れない。
急遽、車を停めて家族で見に行った。子供達にとっては、やっと楽しむことができる
内容の到来だったのだと思う。これも本当に偶然だった。
エリアは二分割で、片や香具師による昔ながらの夜店、片や地域住民主催のものだった。
あちら側の金額は桁も数字も大きく違ってた。
だがボクは散財を惜しまなかった。*紀の川は、奈良県から和歌山県へと流れる一級河川。

瑞兆は正しかった。なんと、新規開発の役目を言い渡されたからだ。ただし、所在は
新本社ビルにて、部下を技術から一人つけるので彼と頑張るようにとのことだった。
これを伝える母の様子には、不承不承な感じがあった。彼女の本意としてではないことが
察せられた。詳しくは分からない。只、この展開が起こることは奇跡に近く『彼の方』の
介入があったとしか思えなかった。









追記:  

「何も浮かんではこなかったのだ...」は、座り過ぎの弊害なのかも知れない。

(ありがたく)「顔面でいただくんだよ!」by 希○ あ○の。

石清水八幡宮は、お色直しをしましたので、どうぞご参拝下さいとの広告を見たからだけ..。
山上の境内で、神主さんが子供にオモチャを渡しているのに驚き、声を上げてしまう。
ご機嫌取りに思えたからだ。彼の神経を逆撫でしに行っただけ。
お初参りの対応だったのだろうな..。
  
高野山の山上に至るには、道371号線、通称「高野龍神スカイライン」と呼ばれる山岳道路
が最後の行程となる。奥深い山の中を延々と尾根伝いに続く延長片道42km。
アップダウンの多いワインディングが、ただただ続く。一度経験すれば、以後は車で行く
気には二度となれない。改めて、家族でお礼参りに行くことを提案したが、妻からは
「あなた一人で行ってきたら」との返事だった。なかなか行けてない。
八年が経ってしまているが、ちゃんと行こうと思う。

追記:2018.10.31 本日お参りを果たす。御廟から出てくると、天から日が差してきた。
お喜びいただけたのかも知れない

この頃、ボクは時間を持て余していた。それを見兼ねてだろう、糟谷先生はボクに住居を
移ることを提案された。とんでもない話なのだが、いつもの如く、即座に素直に実行する。
まずは物件を探して回る。予算は、持ち家を売った場合の金額とした。これも大変だった。
「これでいいや」と思われた場合は 、先生に卦をたてて観てもらった。タダでいいと
言われたが、そうはいかず、毎度、数千円が飛んで行く。
最終、茨木市にある南春日丘なる場所に、80坪の中古の物件を見つけ、とりあえずの合格を
いただく。ただし、『かなり寂しいところやで』とのお言葉が付いてきたが。
この計画は、実行には移されることは結局なかった。
『そんな場合やないで〜』の事態が起こってきたからだった。

この転居するといったアイデアは、ヨネちゃんからの提案であったらしい。なんでも母から
離れることが一手になると思ったらしい。いろんな人の思惑が交錯し、ボクはもて遊ばれる
にも等しいのだが、すべては試練として受け入れられていた。しかし側で、この行動を見つめる妻は、ボクへの不信感を募らせていく。まともな会社員の生活とは思えない日常だったからだ。乙女座のタイプ2なれば、いい加減な有様にしか見えなかったとしてもしょうがない。
批判の矢がボクに向かうのも極自然な流れだ。

会社から家に帰れば、にわかマジシャンやってた。まだ子供が小さいので、今が生涯最初で
最後のチャンスだと思った。種は、ダイエーで@105円で買って帰る。種類は豊富だった。
遠巻きに見ててくれればいいのだが、最後は掴みかかってきて、モノを奪われる。
種が分かれば冷めたものだった。一時の余興と教育をかねているつもりだった。

○○山には権力闘争の空気を感じる。これも、妻などはこっちを好むのだろう。
組織でしっかり立場を固めた、頼りになる人のサポーターが適格なのだから...。
ボカ〜「御免こうむる」 (あいな調で)。

a pie...




  
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