5.1 Dandy but Dirty 進められる策謀。

文字数 1,972文字

  妹が、みんなの前で、なにやら糾弾気味に喋っている。なんでも、当社は女子社員への気遣いとしての配慮がなっていないとのことだった。女子ロッカーの配置の問題だそうだ。些事なることを「さも大層なことでもあるかの如く」としかボクには聞こえなかった。とうとう自分の存在を、皆に印象付けたいという要求を我慢できなくなってきたのだろう。これまでは静かに様子を窺っていたにすぎない。不思議なのは、皆が、彼女の言葉をそれなりに耳を傾けて真摯に聞いている姿だった。天性の暗示力と言ってもいい。父譲りの才能なのかもしれない。*この力はボクにはない。ともかくも、末端肥大なることを批判的に語るそのアプローチには、悪害としか思わずにはいられなかった。これは母譲りの作法である。


  Re: 『男は五十過ぎたらみんな悪人』。 だそうだ...

  経営者にとっての悩み。それも、おいそれと他人には話せぬ○○の醜聞。ややこしいことであれば、尚更「さもチャンス」とばかり、俄然こういったものに関わる人間も出てくる。筋の通らぬ無理ごとを、「お安い御用」とばかりに引き受けては知恵を授けてくる輩もいるはいる。いや..揃っていたのだ。それは見事に...。
求人に応募してきた熟年の人間。また、どこいらの占い師達...。
母の依存心を引き出すのが目的だ。
さぞや彼らには、彼女は[いい金づる]に思えたであろう。

  組織図上からボクの存在は消えた。然りとて新たな仕事が充てがわれることもなかった。いい加減な話だ。大変な不安感の中で時を過ごす。やる事もないので、糟谷先生の所に入り浸りだった。いつもの長々と続く先生の話の相手をしてるだけ。二人だけでは時が持たないので、ある男に声をかけた。『ヨネちゃん』。彼は元総務部長だ。父の存命の時から居た。但し、途中入社組で、何処やらの証券会社からの斡旋で入社していた。ボクより二十歳近く上だ。つい最近、彼は母により解雇されていた。新規に購入したビルの改装で、内装業者と組んで怪しげなことを行っていることがバレたのだ。彼の人となりに関しては、糟谷先生の表現が的を得ている。『ダンディーにしてダーティー!』。なかなかに切れ者にして曲者。かなり才走るきらい、世に熟れ過ぎているといった人だった。彼も暇を持て余していたのだろう、時間を伝えると毎度顔を出すようになった。これで少しは気を抜いて場にいれるようになった。ヨネちゃんからは、色々と、ボクの知らない会社の裏話が聞けた。辞めていった人達においてのドラマなんかだ。中々にエグイ。怨恨が残らない訳が無い...。

  自称松下出身の顧問は、流石に色々と管理プログラムをご存知であった。その一つに組織横断的なチームを複数作り、各々にテーマを与えて検討させるというものがあった。末端製品のアイデア、歩留まりの改善、仕入れのコストダウン、営業ルートの拡大、etc。ボクは、すべての推進役としての役目が与えられた。なに、それぞれの会合に参加するだけ。地に足のついた実績が残せるものではなかった。皆にとっても、実務との兼任なので気分転換としての機能しかしてなかった。目新しさはあったが、お茶を濁す程度の中身でしかなかった。なにやら言葉だけの発表会をもって自然解散となる...。
なんのための期間だったのかは分からない。

  糟谷先生は、自分がチェックしたにも関わらず、ボクにとっては良くない人間が採用されてしまっている事態を悔やんでられた。でもこれは仕方がない。天の意思は、人間の小賢しい操作などで、どうこうできるものではない。先生を信頼してはいたが、それは更に上位が居られることを前提としての話し。すべては、運命として、受けて立つしかない。
    


追記:

ヨネちゃんからは、古参の部長連中が辞めていった時の話が聞けた。ポイントは会社の株の買取においてだった。会社の言値で手放さなければならなかったらしい。略。向日葵おじさんは、キナ臭い話をしたので特別の扱いだったらしい。

妹は、あのリケジョの星と言われ女性に、とても似ている。
また、救いようのなさは、中島○○○姐さんレベル。ボクは神に祈ったことがある。新聞に掲載された写真を見て、思わず...。感ずるところがあったのだ。

新規事業開拓で、最後まで残った研究マンは、女子の更衣中を覗いたとのことで退社させられる。信じられない話しだった。その相手を思うと好奇心であったとしか思えない。京大卒の女性だった。就職難の時節に入社された人。

自称松下出身は、会社組織が人を辞めさせるための具体的な方法論を沢山見てきたのだろう。自身がその憂き目に遭ってきたと思われる。多分、それも数度だろう。彼のアイデアに基づき、母はボクを追いやることとなる。

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