第10章 十月十九日(土) -  5(7)

文字数 674文字

                5(7)


「それじゃあ彼は、由子が一学年上にいるってこと、ずっと知らないままだっ
 たの?」

「それは、どうなんだろう。もしかしたら気付いてたかも知れないわ。でも結
 局、一度掛け違えたボタンはさ、二度と元には戻らないってことよね」

 気持ち、酔いから醒めた印象で、

 そう言って由子は寂しそうに笑った。

 ところが美津子の方はそこそこハイになっていて、

「そんなら由子! 一回ぜんぶボタン外しちゃいなさい! それでね、まった
 く新しい服に着替えちゃう! どう? これで決まりしょ?」

 さらにそんな勢いのまま、

 村上久子が言っていた意味を必死になって語り始めた。

 ――彼ならそんなことをきっと、今でもしっかり胸に刻み込んでいる。
 
 サンタクロースが現れるのを、今の今まで待っている? 

 実際に、そんなことがあり得るか? 

 それから二人は、そんな可能性についてけんけんがくがく論じ始める。

 そうしていよいよベロンベロンになって、

 由子の口から決意の言葉が飛び出した。

「本当にそうならよ? そんなことで好きになってくれるなら、わたしぜんぜ
 んオッケーだわ! いいのよ、結婚なんかしなくても、それだって、ぜんぜ
 んいいって言ってんの! わかる? ずっとなのよ……小学校四年生の頃か
 ら、わたしはずっと、あいつのこと好きなんだから……」

 ――だから、あなたはどうするの!? 
 
 そんな顔をして見つめる美津子へ、さらに由子は続けて言った。

「そんなことでいいんなら、いくらでもなってあげるわよ! サンタにでもな
 んでも、なってやろうじゃない!」
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