第7章 変化 -  3(3)

文字数 734文字

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「もう、二ヶ月くらいにはなるかしら……」

 ――なに言ってるんだ、このおばさん。
  
「今度はずいぶん厳しい状態らしくてねえ……奥さんなんて、もうほとんど病
 院に行きっぱなしなのよ、大変よねえ……」
 
 ――病院じゃねえよ! 直美はな、今、沖縄にいるんだぜ! 

「緑地のそばにあるじゃない? 昔からある大きな国立病院。やっぱりまた、
 直美ちゃんそこに入院してるのよ」
 
 ――緑地のそば……大きな国立病院……。

 まるで、遠くの方から聞こえてくるようだった。

 ――直美ちゃんが……入院している。

 頭の中で、そんな言葉がぐるぐる回った。

 ついさっき、門から中を覗き込んでいた幸一に、

「あら、直美ちゃんのお友達?」

 そう声を掛けてきた婦人は、向かいの家に住んでいると言った。

「直美ちゃん、どんな具合なの? 最近お家の方、いつも誰もいらっしゃらな
 いから、あなた、何かご存知ない?」

 さらにそう告げてから、幸一の顔をまじまじと見つめる。

 そんな問い掛けに、幸一もちゃんと返事をしたのだ。

 沖縄で静養している。

 そんな感じを声にして、

 目の前にいる中年女性へしっかり笑顔まで向けた。

 しかし次に返される言葉によって、
 
 声にならない思念だけが、彼の脳裏を駆け巡る。

「え? 知らないの? 沖縄? ぜんぜん違うわよ。直美ちゃん、ずっと入院
 してるんだから。もう、二ヶ月くらいにはなるかしら……」
 
 そしてそれは、昔っからある国立の病院……。

 と、なれば、

 それは幸一も知っているあの病院のことなのか?

 ――嘘だ! そんなの嘘に決まってる! 
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